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【書評】ミン・スーが犯した幾千もの罪/トム・リン

大陸横断鉄道完成間近のアメリカ西部。妻エイダを奪われ、不当な罪を着せられた中国系の殺し屋ミン・スーは、予知能力を持つ老人の言葉に導かれ、奇術ショーの一座と共に西を目指して疾駆する。妻を取り戻すため、自分を陥れた連中に復讐を果たすための苛酷な旅路。終着地カリフォルニアで彼を待ち受ける未来は、救いか、それとも──。アンドリュー・カーネギー・メダル受賞、驚異的なデビュー作。

Amazon商品ページより引用

五郎です。ええ本を読んだ。

主人公、ミン・スーは中国系アメリカ人。現代を舞台にするのならともかく、西部劇では珍しい配役。
彼は奪われた妻を取り返すべく、復讐の旅をしている。そんな中、彼は奇術ショーの一座に用心棒として雇われる。そして彼はカリフォルニアを目指す……。という内容です。

硬派な内容ながら、スピリチュアルな要素がふんだんに含まれている一冊です。主人公を導く預言者、奇術ショーの団員たちといった、西部劇ではあまり見かけない登場人物たちが魅力的。それでいて内容はシンプルな復讐劇で、非常に読みやすい。淡々とした文体も読んでいて心地よく、なおかつ描写が丁寧なので、旅情や戦闘の緊張感も味わえる。

一読して、「記憶」や「過去/未来」が重要な役割を果たしていると感じました。

ミンの目的は復讐と妻の奪還、つまり過去を取り戻すこと。
一方で彼を導く預言者は、過去を記憶できず、代わりに未来を予言する。
自分の過去にすがるミン、未来を見つめる預言者。彼らが辿る結末とは。


感想。
もともと西部劇が好きだったのもあり、終始楽しんで読むことができました。
あらすじだけ書くとシンプルで古典的ですが、実際に読んでみると、ミンの人間臭い部分や葛藤もよく描かれていて、彼が辿り着く未来に興味を惹かれます。話の展開が早く、また道中の描写も丁寧なので中だるみせず読めました。結末も個人的には好み。


今回は以上です。
五郎でした。それでは。


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