日本の自動操縦の話

昔、日本に関して書いている本(新書か文庫)を立ち読みしたことがあります。
平積みしていたので目に付いて読んでしまったのです。
本の題も著者も忘れましたが、日本に住んでいる外国人のかたが書いたもののようでした。

その中のエピソードにあった、
日米貿易摩擦の時期に、何かの集まりかパーティーで同席したアメリカの立場ある人と著者との会話が印象的でした。

当時は、日米貿易摩擦の最中で、日本製品が売れ、今と比べると日本が輝いていて時代でした。
同時に日本との競争で苦戦していたアメリカは、日本を苦々しく思っていた時代でもありました。
「ジャパンバッシング」という言葉があった時代でした。

それで、先ほどの、何かの集まりかパーティーだかの話となるのですが、
著者とそのアメリカ人の要人?との会話というか議論の中で、相手が、
「このような状況は、何かのたくらみなり計画が背後にあるはずだ。私はそれが自動操縦などと言われたって信じない」と怒って言ったときに、著者が
「それは良い例えだ。たしかに日本は自動操縦だ」と返答したそうで、
本には、「それで相手は黙ってしまった。そのとき何かに気が付いたようだ」と書かれていたんですね(内容は記憶で書いています)。

読んでいて、これはとても面白いと思いました。

人は、相手に自分の影を見るものなんですよ。

例えば、嫌韓の話を読んでいると、「コウモリ外交」だとか「告げ口外向」だとか、それを見ると、日本自身を語っているようで、自分の弱点をさらしているようで、読んでいて恥ずかしくなることがあります(私から言わせると韓国と日本の性格タイプは違っています。ですから当然、行動の原動力も違ったものになります)。

相手を見るときに、自分の影を投影することはよくある話です。

これは何も、そうする人が愚かというわけでもなく、頭の良い人でもよくする行動です。ここでも例を出すと、オバマ大統領のときに、民主党の鳩山政権が誕生しました。このとき何かで「オバマ大統領が鳩山首相と会うのを避けている」と読んだ覚えがあります。これは私の記憶違いかも知れません。ただ、相手は、「長年続いた自民政治を終わらせた人物」「曾祖父からの政治家の家系」「母親はブリヂストン創業者・石橋正二郎の長女」「豊富な資金、人脈、名門出身の毛並みの良さ」「東京大学工学部卒業、スタンフォード大学大学院博士課程修了」「東京工業大学助手から、専修大学の経営学部助教授を経て政治家へ」「戦後の首相としては、初の理系学部出身」。そこまでの人物が「年次改革要望書(※ ウィキペディアの説明)を廃止」して「普天間飛行場移設」を口にしたわけです。そうなると「相手はとても優秀でできる人物だ。政党も今までの自民党とは違う。相手のことをもっと詳しく調べた上でないと、安易に会ってしまうのは危険だ」とオバマ大統領は、相手もかなり優秀で自分のような戦略性があると、自分を投影して思ったことでしょう。(2022/01/20追記 「Change」(変革)と「Yes, we can.」(私たちはできる、やればできる)の2つを選挙戦でのキャッチコピーとして多用して当選したオバマ大統領です。ですから、鳩山新政権も自分と同じように「Change」と「Yes, we can.」で自分に向かってくると自分を投影した可能性もあります) 11月に来日して鳩山首相と会う時に、オバマ大統領は自分の影を鳩山首相に見い出して気を引き締めて会談に臨んだものと想像します。それでタフな話し合いになると思って会ってみたら鳩山由紀夫首相から出た言葉が「トラストミー(僕を信じて)」だったわけです。その拍子抜けはすぐに失望や怒りにも似た気持ちに変わったことでしょう。それで翌年の10分間の意見交換の後に、アメリカのワシントン・ポストのコラムニストから「ルーピー(loopy: 間抜けな)」だなんて書かれることになってしまうわけです(後にイギリスでもこの言葉が使われています)。その表現にはオバマ政権の評価も影響を与えていると見ます。タフな政治の話し合いの場においての鳩山首相の態度は愚かな振る舞いだと言いたかったのだと思います。

私は、鳩山首相への「ルーピー」を含めた評価は、事前評価が高かったからこその低評価だと思っているわけです。そしてなぜ、事前評価が高かったのかと言えば、すでに書いた通りで、その背景には、オバマ大統領が相手に自分の影を見ていたからではないかと思っているわけです。

ここで少し蛇足を書かせてください。

オバマ大統領の印象で言えば、安倍政権への塩対応というのが私にはあったのですが、ウィキペディアに以下のようにあって、日本に対する一貫した対応だったようです。

2009年2月(ちなみに鳩山政権誕生は、この年の9月)、日本から麻生太郎首相(当時)がアメリカを訪問し、オバマにとってはホワイトハウスで開催される初の外国首脳との会談となった。オバマとの首脳会談に際し、麻生ら日本側は外務省を通じて共同記者会見の開催を懇願したが、ホワイトハウスが拒否したため、共同記者会見は開催できなかった。日米首脳会談後に共同記者会見が開催されないのは極めて異例である。この麻生の訪米の以前に、アメリカはヒラリーを日本に派遣しているが、日本側は皇后とのお茶会を用意するなど、ヒラリーを閣僚クラスとしては破格のもてなしをしている(ヒラリー側の強い希望によるもので、宮内庁は外交儀礼上現職閣僚では無く元大統領夫人として招待)。そのため両国の対応の違いを比較して「アメリカは麻生政権を重視していないことの表れではないか」(江田憲司)という批判的な解釈をする論者もあった。

上記のような対応をとっていたら、政権が変わって、その政権が強硬なことをやり始めようとしたら、そりゃ用心するかも知れません。

そもそもアメリカというものが政権が変わると、政策もガラッと変わる国ですから相手の国も当然同様な動きになると思うのが普通です。例えばアメリカのオバマ政権の時期にはTPPの話を進めましたが、トランプ政権に変わってTPPを離脱した話などは、政権が変わっても一貫性を保とうとする日本とはまるで違った動きとなります。日本は日本で相手も同様だと思っているので、アメリカがTPPを離脱すると不満を持つわけです。

話を戻します。

元の話で面白いと思ったのは、相手が日本の態度の裏に何か計画や意図が潜んでいると語ったということです。それは自分自身のことを語っているということなので面白いと思ったわけです。日本を語っているようで自国のことを自白しているわけです。

それと同時に著者が、相手の発した「自動操縦」という言葉に対して「正しい見解だ」と答えたことに驚きました。

私はタイプ6日本において、「日本は止められない」と何度も書いてきていますが、日本人自身ですら自覚していない動きを、この著者のかたは正確に見抜いています。

さらに読んでいて恐ろしいと思ったのは、「相手が何か理解した」という部分です。

それが貿易摩擦の頃ということは、
今のアメリカは日本の仕組みをかなり理解しているということになります。

だから、今のアメリカは日本の仕組みと、その突破方法を見つけ出していて、それで自国のサービスや企業が日本に進出しているのだと私は理解しています(先ほどの年次改革要望書も絡んでくる話です)。

今のアメリカは、日本人以上に日本人を理解していると私は見ます。
私の書くタイプ6日本以上に日本を理解している可能性すらあります。
そこが恐ろしいと思いました。

日本は昔から「自動操縦」だったのですよ。止められない変われない。
ただ、現在の、「責任者の所在も分からない」「誰も責任を取ろうとしない」「どこに問題があるのかもはっきりしない」「でも走っている」「表面的には一貫性を保って走っている」「たとえ誰かが問題に気付いても知らないふり、無関心」「大事な状況でも不断の態度」「皆、当事者になろうとせず、運転席は無人のまま」な状況は、とても危険で末期の状態です。

「人は相手の中に自分自身を見る」と書きましたが、過去の嫌中本の中に、「中国は自滅する」というものがあって、中身は読んでいないのですが、「あれは、日本自身のフラグだったのかな」なんて今、思っています。

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