フランス人学者に言われた「日本人のナルシシズム」の話を読んでの感想

『「日本人のナルシシズム」とは何か?E・トッドの言葉から考える(大野 舞) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)』

を読んでの感想です。

今年7月、人口学者のエマニュエル・トッド氏のインタビューを行った。その合間に雑談をしていたときのことだ。話題がナショナリズムに向いた際に彼は何気なくこう言った。

「日本はナショナリズムというよりも、ナルシシズムだろう」

(略)現在の日本には、国家を強大なものにしたいという意志を感じないからだ、と。

これを読んで「ああ、そういう考え方・見方もあるんだね」という感想を持ちましたが、
私から言わせると、「これは、『芸術家(ドン・リチャード・リソ)』『夢想家(ヘレン・パーマー/レニー・バロン&エリザベス・ウエイゲル)』とも言われるエニアグラムのタイプ4の国であるフランスから見た日本であり、タイプ4フィルターを通した日本だ」ということになります。

フランスと日本は、不平等や格差を表す指標である「ジニ係数」の水準が同程度だが、フランスでは所得格差が「大きすぎる」、または「どちらかといえばそう思う」人の割合が90%を越えるのに対し、日本は78%に留まっている。

また、この日本の数字は1998年からさほど変化がないという結果も出ている。2000年から2009年を比較しても日本ではジニ係数が0.056上昇し、これはOECD加盟国の中でも上昇が目立つ方である。

もちろんこれを「格差に対する日仏での感度の違い」と説明することもできるだろう。しかし一方で、「現実の深刻な問題を見ないようにする(無)意識」が日本に漂っている感覚もぬぐいがたい。

「『現実の深刻な問題を見ないようにする(無)意識』が日本に漂っている」という部分は著者に同意します。
ですが、これを著者はナルシズムと見ています。
その部分にだけは異論があります。

私は、日本をエニアグラムのタイプ6という観点から見ているので、
深刻な事態を見ない態度は、(タイプ6が求める安心・安全・安定が崩れた状態の)混沌を怖がるが故に それから目をそらず態度、
混沌と向き合えないが故に楽観主義となる態度、
と受け取ります。

先の大戦中、状況が悪化する中で、「日本は神風が吹くから大丈夫」と言っていたのと同じ態度です。
「現実の深刻な問題を見ないようにする(無)意識」ではありますが、
これはナルシズムなどでは無く、
怖がりが故に怖いものを見ないようにする態度です。もちろん無意識な態度です。

日本に帰国して見かける原発報道の少なさには、やはり驚いてしまう。

これも同様に、ナルシズムなどでは無く、
安心・安全・安定が崩れた状態から目を背けているのです。
311のときに、菅首相が「原発周辺は20年住めない」と言ったという話が出て、騒ぎが起きたのを、この著者のかたは、お忘れでしょうか?
安心・安全・安定が大切なタイプ6日本人は、それが否定される状況を直視できないんですよ。
だから今も見たくは無いんですよ。聞きたくも無いんですよ。
蛇足を書けば、あのときから本当の情報を出さない方向で全ての利害が一致してしまったんです。政治家・官僚・東電・国民、マスコミもそれらに従って・・・。

※ 『ネガティブ、ポジティブ、日米の違い


立命館大学産業社会学部の富永京子准教授のゼミ生の調査結果によると、「2000年から2015年の間で(…)特に増加が目立った番組が「日本礼讃番組」であり、1980年代から2000年代にかけては殆ど見られなかったにもかかわらず、2015年には一週間に5つも見られる」という。

これも同様です。
日本から安心・安全・安定が無くなりつつある恐怖から、一生懸命「大丈夫」「大丈夫」と言っているんすよ。

※ 『日本で上野千鶴子や内田樹が嫌われる理由があるとしたら


こうした「日本すごい」という意識の拡大は、日本人の意識調査にも現れている。NHK放送文化研究所の調査結果によれば、1998年からの2018年の20年で、「日本人は、他の国民に比べて、きわめてすぐれた素質を持っている」と考える人の割合は51%から65%に上昇。「日本は一流国だ」と考える人は38%から52%に上昇している。2018年の数字はいずれも、日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた1980年代初頭の数値に迫るものだ。

と同時に、「「今でも日本は、外国から見習うべきことが多い」と思わない」という人は、13%から18%に上昇している。つまり、「外国から学ぶことはもうない」と思う人が増加しているのである。

なおこの間、日本の「一人当たりGDP」の世界ランキングは、6位から26位まで下がっていることを付け加えておきたい。

唖然とするのですが、これは本当ですか?
失われた30年の中で、何をもってここまで楽観的でいられるのか。
なるほど、これを見ると、ナルシズムと言いたくもなりますね。
ただ、私からすると、「ここまで楽観的に自分を欺(あざむ)けるのか?」といった感想になります。

(略)ネット上で「出羽守」(海外「では」とすぐに、海外の事情を持ち出して日本を批判する人を揶揄するジャーゴン)が批判されているたくさんのケースを見かける(略)「海外目線」で苦言を呈されることを嫌い、「日本は問題のない社会」という認識へとゆるやかに集約されていく。

安心・安全・安定を求めるタイプ6日本人は、基本的には変化を嫌うんです。
ただ、「『海外目線』で苦言を呈されることを嫌い」は実は正しくありません。
何目線であろうが、今ある安心・安全・安定を揺るがされたり否定されることを嫌っているのです。
ただし、そうは言っても、それが世界的な動きであれば横並び(隣り百姓)意識で海外の動きに合わせようとしますし、それが権威ある者の発言であれば吟味せずにありがたがります。
「ガラパゴス」なんて自ら卑下することもあります。

「『海外目線』で苦言を呈されることを嫌い」となるのは、それが権威でも無いと、自分(達)にとって、安心・安全・安定につながるか分らないからです。
「これが世界の流れだ」「これからのトレンドだ」「権威者の言葉だ」であれば、「ではのかみ(虎の威を借る狐)」は今でも有効に機能します。

タイプ6は安心・安全・安定の毀損を嫌がりますし、多数派に付くことで安心・安全・安定であろうともします。
ですから世界の中で、安心・安全・安定な立ち位置に居たがる日本人にとって、「ではのかみ」は実は今でも有効に機能するのです。

フランスに関して言えば、私のタイプ4の国とする見方が正しければ、ある種の美学や理想に基づいて動いているはずです。
ただし、フランスもレベル6社会の影響を受けているはずなので、
タイプ4のしょうもない面が出ているはずなんですけど、日本からは遠すぎてよく分かりませんね。

※ 『【エニアグラム用語】レベルとは?
タイプ4の国、タイプ1の国 ー フランスとドイツ、「統合と分裂」の関係


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