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絶対音感のつけ方、はずし方

今月は、音楽にまつわるエッセイを書いていきます。

今回は、少し前のnoteで触れた絶対音感の話。そういえば、音程感についての悩みを書いた別のnoteもありました。


さて、私は小さい頃から絶対音感があります。ひとくちに「絶対音感」といっても実際のところは幅が広く、どのぐらい正確かはひとそれぞれですが、私の場合はけっこう繊細でした。例えば、小学校から帰ってきたらピアノの調律が440ヘルツ基準から442ヘルツ基準に変更されていて、調律師さんが来たことを知らなかった私はピアノを触るなり「ピアノが壊れた」と母に報告したというエピソードが残っているぐらい。ちなみに母が「もとのに戻してもらう?」と聞いたら「音楽教室のピアノと同じになっただけだから大丈夫」とこたえたらしく、色んな「ラ」の音のピアノがあるけれどそういうものだよね、とずっと認識していたようです。

きょうは、絶対音感のつけ方(子ども編、大人編)、そして、絶対音感のはずし方(これは大人編のみ)を私なりにまとめてみます。

絶対音感の付け方(子ども編)

※子どもはこのnoteを読まないと思うので、絶対音感をつけたい保護者向けです。

【ざっくりとでいい場合】
今まで何人かの子どもに絶対音感をつけてきましたが、5歳のうちに大まかにつかないとその後はつかないかな〜という印象があります。4〜5歳の多くの子どもは、毎日ドレミで歌っていると、ざっくりとした絶対音感か相対音感のどちらかが自然に身につきます。とはいえ個人差も大きいので、どんなに練習しても逆上がりができない子どもがいるように(私です)、いっぱい歌っても何もつかない子どももいます。そういう子どもには、音楽以外の適性を探してあげてもいいかもしれません。

【細かくつけたい場合】
もしもっと細かくつけたい場合は(例えば、440ヘルツと442ヘルツの違いを自分で歌い分けられるなど)、ピアノなどの音程が固定された楽器と、ヴァイオリンなどの自分で音程を作る楽器の両方を習わせると身につきやすいでしょう。
参考までに、私はピアノは3歳から、ヴァイオリンは5歳から習っていて、歌が大好きな子どもだったようです。ちなみに私には弟がいるのですが、弟は幼少期の私がドレミで歌うのをきいていたため、自分でピアノを習う前から自然にざっくりとした絶対音感がついていたそうです。もしかして、絶対音感は4歳になる前から徐々につきはじめるのかもしれません。

絶対音感のつけ方(大人編)

厳密な絶対音感をつけることはほぼ不可能ですが、ある程度の相対音感があれば絶対音感に近いところを目指せます。
例えば、何度もきいたことのある大好きな曲の冒頭って、自然にその音程で歌い出せますよね?あるいは、オーケストラをやっている人なら、チューニングのオーボエの「ラ」が少しでもずれていたらすぐに変だと気がつくはずです(コンサート会場も一瞬ザワッとしますよね)。そういう自分の基準になる音をひとつ決めて、そこから相対音感を使ってドレミを並べていけば、絶対音感に近い何かができあがります。

同じように絶対リズム感も、時報のBPM=60をなんとなくイメージできれば、そこを基準に倍にしたり割ったりすることで、大体のテンポはイメージできるようになります。

これらのやり方は、計算が入ってくるというところで「感覚」とは異なりますが、使えると便利です。

絶対音感以前に、相対音感がないという場合は、好きな曲を数曲しっかり歌えるようにするところからはじめます。ボイスメモでいいので録音して、必ずその場で聴き返しながら歌っていきます。最初は恥ずかしさもあるかもしれないけれど、それ以上に自分の伸びが嬉しくなってきます。
並行して、その曲を分析してみます。その曲が何調なのか、コードが終わった感じがするポイントがどこにあるのかなど、和声感を感じていきます。次に、その曲の中で出てくる1オクターブや5度(歌だとあまり1オクターブは出てこないけれど)、その次は3度と音程を細かく捉えて、これが5度の響きだな〜というのを味わいます。

絶対音感のはずし方(大人編)

さて、幼少期知らぬ間に身についてしまった絶対音感も、民族音楽をやるときには邪魔になることが多いです。なぜなら、先生がそもそも毎度違うピッチの「ラ」を基準にレッスンしてきたり、音楽の中で微分音が登場したりするようになるからです。こういった音楽をただの平均律や純正律で弾くと、なんとも味わいのないコンピューターのような仕上がりになります。また、アンサンブルの場合はみんなで基準のピッチを合わせる必要があるけれど、ソロで演奏するのに楽器がその日に一番気持ちよく鳴るピッチではなく440ヘルツ基準で演奏するいうのも、かなりもったいないところです。

絶対音感の外し方ですが、私の場合は、少しずつ低めあるいは高めのドレミで歌って、その間隔をどんどん広げていくことで、色んなピッチで歌えるようになってきました。もともとヴァイオリンを440ヘルツ基準で弾いたり442ヘルツ基準で弾いたりしていたので、その差を少しずつ広げるだけだから意外と簡単です。

最近は相対音感にも慣れて自分がもともと持っていた体内チューナーも便利だなとまた思いはじめたので、時と場合によって絶対音感を使ったりはずしたり、自分でコントロールしています。

絶対音感に対する私のスタンス

「絶対音感」ってパワーワードなので、音楽を子どもに習わせたい親御さんに未だに色々きかれることがあるのですが、私の考えは「子どもの時に自然につくならつければいい。はずしたくなったら子どもが自分ではずすだろうから」というのが答えです。それより、自然な音楽の流れを作れるか、たくさんの音色を聴き分けられるかといった方向に耳を広げてあげるのが大切です。

そのために大事なのは、子どもの耳を爆音から守ってあげて、日常のなかで色んな音楽や自然の音を聴いて、それを歌や楽器で表現したい子どもの気持ちを応援してあげることです。子どもって、一人ひとりが独特な音程感やリズム感を持って生まれてきます。その個性を伸ばしてあげることが、大人になってもその子がアーティストであり続けることに繋がると思っています。


【宣伝】私、実は子どもたちに音楽を10代の頃から教えているので、指導歴10年以上です。音楽の導入に関しての指導は謎に極めているので、もしお子様のレッスンのご希望があればご連絡ください。

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