あかねちゃん2
前回のあらすじ
絶対的マドンナ・あかねちゃん。
彼女はいつも男子と距離が近くて、それでいて自信に満ち溢れていた。
好きでもないのにヤキモチを妬かされるような振る舞いで(本当にタイプではなかったが)、上手く言葉にできないがいつも負けている感覚にさせられていた。
だから僕は、あかねちゃんが嫌いだった。
しかしあかねちゃんとは反対に、僕は中学生のうちに1人すら付き合う青春をおくることができなかった。
卒業間際、その事実に焦った僕の頭に一つの考えがよぎった。
『あかねちゃんとなら付き合えるんじゃないか』とー
直様あかねちゃんと数日にかけてメールでやり取りをして、メールで告白をした。
付き合うことになった僕らは、初デートでプールに行くことになったのだったー
期待外れの興奮、その先にあるもの…
「ダメ…だよ…」
プールの水中で、水着の上から彼女の体を触りに触った。
今までにない彼女に勝っている感覚は、とても僕を満足させた。
更なる刺激を求めた僕は、彼女の体を水着の内側からも触り始めた。が…
それからはあまり興奮しなかった。
胸があまり大きくなかったから?
顔があまりタイプじゃなかったから?
緊張していたから?
好きじゃなかったから……?
様々な理由を考えてみたが、答えは出なかった。
もうやめにしようとも思ったが、それももったいないと思った。
僕は異なる刺激を求めて、彼女にとあるお願いをした。
「僕の体を…踏んでくれないかな」
明らかに彼女は戸惑っていた。
しかし直様、彼女は僕を受け入れるような笑顔を見せた。
それは『やっぱり君って面白いね』とでも言わんばかりの表情だった。
息を吸って水中に潜り、浮かばないように仰向けの状態を保つ僕。
恐る恐る、ゆっくりと僕のお腹を踏むあかねちゃん。
彼女の顔を水中から見ることは出来なかったが、それでも水中から眺めるアングルは最高の景色だった。
3年ぶりの興奮、屈辱を受けたあの日から…
僕は中学生活を、それなり普通に過ごすことができていた。
所属していた部活もそれなりに充実していたし、仲のいい友達もそれなりにできた。学力もかなり身につけることができたし、順調だった。
それが故、忘れていた。このアブノーマルな興奮を。
小学生の頃から封印していた、女の子から屈辱を受けるということ。
無意識だったが、この正体不明な胸のざわめきを、僕は間違いなく遠ざけていた。
分からないから怖かった。自分がおかしいのではないかとも思っていた。
だから封印していたのだけれども、あかねちゃんに体を踏まれた瞬間、『あぁ、これだ』と思ってしまった。
僕は3年ぶりに、このアブノーマルな興奮を認識した。
僕の敗北
僕が水中に潜り、息が持つまで彼女に体を踏まれた。
これを数回繰り返した。
そして遂に、ずっと胸に秘めていた欲望を僕は口にした。
「顔を踏んでほしい」
彼女は更に驚いた表情を見せた。
彼女からすれば、僕がこんなお願いをしてくるとは微塵も思わなかっただろう。
というのも、僕はそれなりに彼女に抗っていたからだ。
『きっと君も私のことが好きなんでしょ』というような彼女の振る舞いに対し、僕は『君のことなんてどうでもいいよ』というような態度で示してきた。
そんな思い通りにならなかった僕が『顔を踏んでほしい』などと、懇願しているのだ。
これは間違いなく僕の敗北と言えた。
彼女は驚きはしたものの、直様その気になっていた。
「沈んで」
言われるがまま、僕は息を吸い水中に潜り仰向けになった。
彼女が僕の体を踏み乗った。
そして僕の体の上でバランスを取り、僕の顔を目掛けて歩いてくる。
踏まれる僕の体は、まるで彼女の道であり、地面だった。
一歩、二歩と、ゆっくり足が顔に近づいてくる。
そして僕の目の前は、彼女の足裏でいっぱいになった。
あと1秒も経たないうちに顔を踏まれてしまう…
踏まれる前からかなりの屈辱を感じた。
(今なら逃げようと思えれば逃げれる…!)
だけど僕は逃げれなかった。
逃げようとしなかった。
…逃げたくなかった。
(ふみ…っ!)
あれだけ嫌いだったあかねちゃんに、僕は顔を踏まれた。
彼女は何の罪に問われることなく、人の尊厳である顔を踏んだんだ。
僕はあの瞬間、完全に彼女に負けてしまった。
(あかねちゃん3に続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?