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愛は勝つ

「どんなに困難でくじけそうでも
 信じることを消してやめないで」
マーちゃんが好きだったKANさんの訃報を聞いたのは先週のことだった。
希少がんがんでまだ61歳だと言う。
KANさんの「愛は勝つ」にどれだけマーちゃんは
励まされたことだろう?
18歳で血液の癌を患ったマーちゃんが、希少癌ので亡くなられたKANさんと重なる。

同級生たちは大学生活を楽しんでいるのを横目にしながら、先の見えない戦いをするのはマーちゃんはどんな気持ちだっただろうか。
そんなマーちゃんを思いながら、絵が好きで油絵を描く彼女の憧れたフランスに行った。
凱旋門からのシャンゼリゼ通りの何もかもがオシャレに見えた。高音のアコーディオンの音楽が頭の中に流れるようだった。
クリスマスにライトアップされる街路樹も、歩道を歩く人もすべてオシャレに見えた。通りに並ぶブランド店も、ありがちなキーホルダーや絵皿の置物、スノードーム等々売る土産物店でさえ私は目を見張った。
パリでマーちゃんが行きたそうな場所は全部行こうと、ルーブル美術館をはじめとするオルセー、オランジュリー、ロダン、ダリなどの美術館、絵描きが多いモンマルトル、哲学者サルトルが仲間と集ったサンジェルマンのカフェ、シテ島のノートルダム寺院、オペラ座、マーマレード寺院、ベルサイユ宮殿、ゴッホの終焉の地まで旅をした。
中でもマーちゃんを想ったのは、オーヴェルシュワオワーズ(以下、オーヴェル)と言う小さな村にゴッホの終焉の地を訪れた時だった。そこはパリから北西に、フランスの新幹線と言われるTGVで二時間ほどの場所だった。
その駅はパリのTGVの人の波に揉まれた乗り場とは対照的に、人影もまばらな無人駅だった。駅の改札を出ると、雑踏に紛れるパリと異なり、私達のお喋りが目立つほど物静かに感じた。
オーヴェルにはゴッホの教会の絵のモデルと、自ら命を絶った部屋、ゴッホのお墓がある。
ゴッホの部屋は、一歩足を踏み入れると、床が軋みそうなくらい貧しい感じがした。畳二畳くらいの想像以上に狭いその部屋は、ゴッホの晩年の寂しさを表しているかのようだった。
生前は一枚も絵が売れなかったゴッホ。何もない殺風景なその部屋は、ゴッホの保存団体によって今でもゴッホが現れそうに、今も現状を維持している。
その建物の目と鼻の先に、簡素な決して大きくはない教会が佇んでいる。
その教会前の墓地にひっそりとゴッホのお墓はある。ゴッホのお墓があると知らなければ通り過ぎてしまうほど、ゴッホのお墓は周りと一体化している。そして、驚いたことには、ゴッホのお墓の隣は弟のテオのお墓なのだ。生前の売れない画家ゴッホを支えたテオ。ゴッホが亡くなった一年後に、まるであとを追うように人生を終えたテオ。兄を心から愛していたのだろうか?兄を心から想っていたのだろうか?
ゴッホとテオを想いながら、私は自分に置き換えてみた。
私はマーちゃんを心から愛せていただろうか?私はマーちゃんを心から想っていただろうか?そう問答する機会を与えてくれたフランス旅行からはや27年。既にマーちゃんが生きていた22年の倍以上私は生きている。
しかも、今度は私が難病になりながらも生きている。 
KANさんの「愛は勝つ」を聞きながら、マーちゃんの想い感じようとして過ごしている。
天国にいるマーちゃんに問いながら。
マーちゃん、最後に愛は勝つ?と。

#わたしの旅行記

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