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「その人に寄り添うことから、社会起業は始まり、発展していく」ー広石コラムVol.44

最近身近で、周りの同世代よりも少しハンディキャップの部分があるお子さんのいる人から、子供の小学校入学に備えて、その部分のフォロー体制が整っている公立の小学校が近くにあることがわかり、直接区役所に小学校の申請書を提出に行き、窓口で優先的に対応してもらうことは出来ないかと相談に行ったとの話を聞きました。窓口での返事は「皆平等なので、抽選になります」という返答だったそう。この話を聞いて思ったこと。「平等」って難しい。「公平」って時として不便。その子にとってはフォロー体制が整っている小学校に入れることが周りの同世代と平等に生活を送れるということなのではないのか?そんなことを言い出したらキリがないという人も沢山いるかもしれないけど、少数の弱い立場の人達を皆でフォローしていけるような世の中であるべきと考えさせられました。そういう日常的な問題って他でもたくさんあるなと思い、こちらのコラムを思い出したので、ご紹介します。(事務局新村)
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「このiPhoneには、音楽、ニュース、計算機といった多様な機能が入っている。それをみんなが使っている時代なのに、未だに政府は縦割りの発想から抜け出せない」

イギリスの代表的な社会的企業ブロムリ・バイ・ボウ・センターに3月下旬、訪問しました。社会起業プランニングの講座などでも、社会起業の事例としてもお伝えしてきています。今回は2日間にわたり、創業者のアンドリュー・モーソンさんだけでなく、現在の経営陣、立ち上げ当初からのメンバー、現場スタッフなど、多数の方に2日間、お話を伺えました。冒頭の言葉は、モーソンさんが「なぜセンターを社会起業でつくらないか?」と説明してくださっている時の言葉です。

「住む場所を探している人がセンターの住宅相談窓口に来る。すると横に診療所がある。健康的な食事ができるカフェがあり、その横の相談所で生活相談にものってくれることがわかる。ある人はアートに興味があってきて、そこで起業家について知る。施策ごと、分野ごとに分けて施設をつくることに、いったい何の意味があるのだろう?」
医療や福祉を語る時、公平や平等を論じたがる。しかし、それは住民それぞれの多様性を無視してしまう危険性がある。ここにいる全ての人たちは、誰も“同じ”ではない。それぞれが人生経験を積み、違う人生を生き、違うニーズがあるからこそ素晴らしい。多様性を受け容れ、一人ひとりを見る。そして、その人に必要なことを、政府から民間まであらゆる制度やサービスを調べ、その人が使えるように有機的に結び付けて提供する。それがこのセンターだ」

モーソンさんも、現在の経営者であるロブさんも、相談窓口のスタッフも、会った人全員が「地域やコミュニティではなく、一人ひとりを見る」ことを強調していました。疎外された中で死んだジーンさんに必要なのは、友達として寄り添うことだった。それは、センターの立ち上げ時も、450万ポンド(約8億)の事業となった現在もまったく変わらない運営の軸になっています。それが、このセンターのある意味だと。一人ひとりを見て、その人のコンテクストを理解し、その人のなるべき姿を共に考え、実現のために必要な社会資源をコーディネートすること。それは、最初から、いまも、これからも、社会起業の本質なのだと改めて深く考えました。

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コラムに書かれている「医療や福祉を語る時、公平や平等を論じたがる。しかし、それは住民それぞれの多様性を無視してしまう危険性がある。」という部分ついてすごく考えさせられました。「平等なので」ってすごく壁のある一言だと思う。そんな事わかっていて、それでもという思いでいる人の気持ちに気付き、寄り添い、自分事として考える世の中にしていきたいですね。(新村)
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empublic Studioでは、コラムにも書かれていた英国ブロムリ・バイ・ボウ・センターに関連するイベントが11月26日に開催されます。
「健康を街のつながりで守るには、 どのような場が必要なのだろう? ~英国ブロムリ・バイ・ボウ・センターをヒントにコロナ後の日本の地域を考えよう」
詳細・参加のお申し込みはPeatixから


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