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持続可能性キー・コンピテンシーとは?

書籍「SDGs人材からソーシャル・プロジェクトの担い手へ」の核となっているのが、持続可能性キー・コンピテンシーです。持続可能性キー・コンピテンシーとは何か? 詳細は本を読んでいただくとして、それが大切だと考えた背景を紹介します。

持続可能な世界で生きる人の”普通”って?

経済社会のあり方が変われば、そこで働き、生活する人のあり方も変わります。
人のあり方は、何をどう学んできたか、学校だけでなく日常の中で何をどう学んできたかに大きく影響されます。私も地域づくりや事業開発で重視するのは「学び」です。持続可能な世界をつくるには、それに必要な考え方や動き方、コミュニケーションのスタイルが必要であり、それを人々が学び、共有していくことがとても大切です。
持続可能性を考えるにしても、環境、経済、社会の議論はどうしても制度や仕組みの話が中心になってしまいがちです。統合的に考えないといけないとわかっていても、専門性や既存の構造に縛られる部分が多くなってしまいます。しかし、新しい世界の姿から逆算して、新しい世界の中で生きていく人のあり方を考えていくと、必然的に統合的な考え方が体現されてくるでしょう。

目の前にあることの奥にある・この先にあることを思う力

例えば、これまでは経済学にしても物理学にしても、色々な具体的な状況や思惑を排除し、抽象化した単体として人や物を扱ってきました。一人一人には色々な事情や思いがあっても、データやシンプルなモデルに還元されて思考されます。環境に良い活動をする事業を応援したくて買った500円も、事業者の環境負荷を考慮せずに便利だからと買った500円も、経済データでは同じ500円という数字で処理してきました。
しかし、購買行動を、どのような文脈で、どのような状況で行われたのか考え、購買がどのようなつながりを生み、社会や購入者にとってどんな意味があるのかを考えることによって、同じ500円にも多様な意味が見えてきます。同じ500円でも、それが3年後、10年後にどのような意味が生まれ、どのような変化につながるのか、そこまでを視野に入れ、多様な要素を統合的に考えることが、とても大切になってきています。目に見える結果も大切ですが、目の前の数字を合わせることだけに注力していては、持続可能な世界もビジネスも生まれてこないでしょう。

サステナビリティについて学んだことを社会で実践し、成果を出すために必要なことは?

では、持続可能な世界を創る人には、何が求められているのか。それをユネスコが「持続可能な開発のための教育(ESD)」の成果を基にまとめたのが、持続可能性キー・コンピテンシーです。
ユネスコの議論に参加されてきた、佐藤真久さんによると、2011年のWiekらの研究が大きなカギになったということです。
彼らの問題意識は、高校、大学でサステナビリティの考え方を学んだ学生が社会に出ても、社会や経済では中長期にわたって直面する持続可能性の課題を十分に認識せずに活動しているため、変化を起こしづらいことにありました。サステナビリティ学の卒業生が複雑な持続可能性の問題に対処するための適切なスキルを持っていても、社会と経済はまだそれらを活かす準備ができていないのです。
従来の学習目標では、サステナビリティに資する個別の能力を強調しているが、サステナビリティの研究と問題解決における包括的な能力は、その個別能力の合計以上のものであり、個別の能力を有意義かつ効果的な方法で組み合わせる能力も必要です。
そこで、論文等で言及されている持続可能性に資する行動や資質などの特性を抽出し、その資質が何かを明確にすると同時に、現実社会で活かすには何が必要かを考察しました。その結果、システム思考コンピテンス、予測コンピテンス、規範コンピテンス、戦略コンピテンス、対人関係コンピテンスという5つの能力を抽出すると同時に、この5つを統合的に使いこなすことの重要性を示し、それを「持続可能性キー・コンピテンシー」として提唱したのです。

持続可能性キー・コンピテンシー

その議論も含め、多様なサステナビリティの取り組みの実践経験を基にユネスコが2017年に「Education for Sustainable Development Goals, Learning Objectives」において8つのコンピテンシーとしてまとめたのが、持続可能性キーコンピテンシーです。

• システム思考コンピテンシー :多面的に考え、知識を統合する
• 予測コンピテンシー :ありうる未来を考え、先を見越して動ける
• 規範コンピテンシー :物事に内在する規範や価値観を理解し、調整する
• 戦略コンピテンシー :変化を実現する道筋をつくる
• 協働コンピテンシー :他者と共に計画し、行動する
• 批判的思考コンピテンシー :規範、実践、意見を省み、問う
• 自己認識コンピテンシー :自分の役割、行動、感情や願望を省みる
• 統合的問題解決コンピテンシー :統合的な問題解決を実現する

「実践につなげる知恵」を伝えたい!

このような話を佐藤さんとしていて、「実践につなげるために担い手に必要なこと」が、ソーシャル・プロジェクトを進める上で大きな鍵だと改めて明確になりました。私自身が、社会課題解決の現場でファシリテーションやコンサルティングをしている際に行っていたことは、このキー・コンピテンシーで整理できます。それは、SDGsへの取り組みや共創、社会課題解決に取り組んでいる方にも共感してもらえるし、この8つを言語化して伝えたら、色々なソーシャル・プロジェクトが効果的に動き出す!と思ったのです。

前著「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ」は、ソーシャル・プロジェクトの進め方(Do)に焦点を当てていました。当然そこには担い手のあり方(Be)も扱っていましたが、このBe自体が大きなパラダイム転換だし、人が変わるには、背景・文脈を共有し、意味を理解し、かつ具体的な転換のポイントを指摘する必要があります。このBeを伝える一冊が大切だ!と、佐藤さんと意気投合して作り始めたのが、この本なのです。

出版記念イベントでは、この本の背景や活用法も佐藤真久さんと話します!


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