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深く潜る

わたしたちの仕事は、深く潜り、見つけて持ち帰ること。
それはさながら、海女のしぐさに似ている。
潜るのは海ではなく、ことばの渦の中ではあるが。

ことばは本質を表すことはない。
いつもその周辺をなぞって回転するだけ。
だがその回転の中心には”まこと”があるはずなのだ。

その仮説に基づいて、わたしたちはあえてことばを連ね、回転させる。
それによって発生した渦に乗って、奥へ奥へと向かっていく。
その奥底に、何かを見出し、手を伸ばす。
しかし、自分から発した大量のことばが邪魔をして、それを掴むのは非常に困難なのだ。
目を眩ませながらやっとのことで手に触れたものを握りしめ、ことばの渦に翻弄されながら浮かび上がる。

そんな苦労をしても、手のひらには何も残っていないこともよくある。
残っていたとしても、よくわからないかけらのようなものが精々。

そのかけらを、空に向かって捧げる。

そうしていればいつか、このどれかが星となって、どこかの誰かに届くと信じているから。
この試みが成功する保証はない。
そもそも、この方法が正しいのかもわからない。

それでも、ことばを連ねることをやめられないのはなぜなのだろう。

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