見出し画像

10年ぶりの酒甕

ある日のこと。
ラーメンを食っていた。
美味しくすすっていると、
きっと小学校の高学年だろうか、
一人で入店してきた。

そろそろ食べ終わって帰ろう。としたとき、
少年も食べ終わったようで同じくレジへ向かった。
だが、お金が足りないようだ。
よく見ると、お金は持っている。

常連の僕は今年からの値上げを知っていたけども、
お年玉から拠出して一人で大人ぶって
ラーメンを珍しく食べに来た子どもにはわからないだろうな。

金額を提示されてどうしようと涙ぐみそうな少年。
あとたったの数十円。届かなくて悔しい。
食い逃げなんて思ってのほかだし、
親にも秘密の一瞬の逃避行なのだろう。

「君、これ何回もやってないよな?」

「やってないよ。昔お父さんと食べたから、
 お年玉で食べに行きたいと思っただけだよ。」

呼吸の感じから、嘘と決めつけられて
ふざけるなって思っている感じ。
すごいわかるな。
本当に値上げ知らなかったのだろう。

「嘘偽りはない。って、約束できるか?」

「うん。」

「わかった。ここは払っといてやる。
 でも、同じ姿どっかでみたら、
 げんこつ一発。俺と約束できるか。」

「できる。」

その場の自分がまとめて払って事を納めた。

店を一緒に出てありがとう。
としっかりを頭を下げる子だ。
これにしめて、悪巧みすることはないだろう。


ーあれからも、自分は普段を普遍に生きている。

「あ、あのときの・・」

誰だろう。自分ぐらいの大きい青年。
あぁ、そうか。
どうやら約束守ってるみてーじゃねーか。
どうりでまっすぐだ。

10年越しの上手い酒甕が開くかもな。

この記事が参加している募集

今日の振り返り

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?