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セットアップ講座の前に Part③

こんばんは、Emperor-Dです。皆さん、トップ絵のような事故が起こらないようにシートベルトは締めましょう。(なんのこっちゃ)

さて、前回と前々回で、車両が曲がる原理とタイヤの基礎知識を書いてきましたが、今回は車両運動の基礎に進みたいと思います。
前回の講座を読まれていない方はこちらからどうぞ。

今日の内容は、加減速で発生する荷重移動について学んでいきましょう。

では内容に移ります。


1.前後方向の荷重移動

先ず、荷重移動は加速度が与えられたときに起きる物理現象です。
自動車が加速や減速をする時に、体が前後に引っ張られる感覚を感じたことがあると思いますが、これは上述した加速度によるもので、この時に荷重移動が起きています。
ここでは問題を簡単にするために、前後方向の2輪モデルを用いて説明します。

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先ず、上図のように速度が一定の時は加速度は発生せず、荷重移動もありません。前輪と後輪の荷重は、車両を地面に下した静的な状態(1Gと呼んだりします)と同じままです。この状態からブレーキを使って一定の加速度で減速をした場合、次のような状態になります。

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物体は現在の動きを続けようとする性質(慣性の法則)がありますので、ドライバーがブレーキを踏んで発生させた加速度(減速方向)とは逆向きの方向に減速させまいとする力 "慣性力"が重心点に働きます。

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F:慣性力[N] / m:車両質量[kg] / a:加速度[G] / g:重力加速度[m/s^2]

この慣性力は、地面からhだけ離れた位置に発生しており、制動力を発生させるタイヤと違う位置にあるため、モーメントとして作用します。

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Mpitch:ピッチモーメント[N・m] / h:重心高[m]

この状態は、力学的に釣り合っていると仮定して解けるため、モーメントの釣り合い式から荷重移動の計算を行います。これを記事にするにあたり、再度手計算してみましたが、皆さまの大〜好きな三角関数が出てきてしまったので、最終的に導き出される荷重移動と動的荷重の計算式を召喚します。きちんと理解したい方はご自身で解いてみてください。必要であれば答え合わせしたいと思います。

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WΔ:荷重移動[kg] / Wf0:前輪静的荷重 / Wr0 : 後輪静的荷重
Wf : 前輪動的荷重 / Wr : 後輪動的荷重
 L:ホイールベース

ということで、上式が荷重移動の計算式です。この式から、荷重移動の大きさは、車両の質量・加速度・重心高の3要素が大きいほど、またホイールベースが短いほど荷重移動が大きくなると言えます。レーシングカーが軽量化や重心高を下げるのに力を入れているのはそのためです。

また、この式にスプリングレートが入っていないことを忘れないでください。よく聞く間違いが、「スプリングレートを上げたら荷重移動が減って乗りやすくなった」という人が言いますが、スプリングレートを変えても荷重移動には影響がありません。影響するのはストロークだけです。ちなみにアンチダイブ・アンチリフト・アンチスクォートという動きを抑制するサスペンションジオメトリーもありますが、これも同じで、荷重移動には影響していませんので覚えておきましょう。


2.まとめ

今回は前後の荷重移動がどのように発生し、どんな要素が関与しているかを2輪モデルを使ってお伝えして参りました。今回は減速で計算しましたが、加速でも同様に計算出来ますし、横方向も正確ではありませんが、これで凡そ計算できます。本当は横方向もまとめてと思っていましたが、思いのほか長くなってしまったので、次回に持ち越させていただきます。

ああ、書けば書くほど、伝えておくべきことが思いついてしまってなかなかセットアップ講座に入れません...
タイヤや車両運動の詳しい内容も書きたいのに、どうしたものか。
すみません。首を長~くして続編をお待ち下さい。なるべく早く到達させられるように頑張ります。

続きはこちらから


もし内容が参考になったらサポートして貰えると嬉しいです。 継続的に活動を続けるモチベーションになります🥺