セットアップ講座の前に Part②
こんばんは、Emperor-Dです。
今日も可愛い絵からお届け致します。セットアップ講座の前に Part②です。
この内容は前回の内容の続きになりますので、まだPart①を読まれていない方は先にそちらを読んで頂けると良いかと思います。
さて、前回は自動車が旋回する概念をお伝えしましたが、今回はタイヤに焦点を当てて見ていきましょう。
では内容に入ります。
1.タイヤが力を発生する原理
前回、『自動車はタイヤのコーナーリングフォースによって旋回できる』と書きましたが、タイヤが力を発生させる原理は何でしょうか。
簡単な図を用いて説明していきます。
この図は机の上にある消しゴムを、ヒモで引っ張ろうとしている様子を再現しています。
この消しゴムがまだ動いていないとすれば、力の釣り合い式で解けますので、次のように表すことができます。
F1 - F2 = 0
F1:消ゴムを引っ張る力 / F2:消しゴムが発生させている力
この消しゴムが発生させている力は “摩擦力“と言われるもので、タイヤが発生させる力と同じです。そしてこの摩擦力は物理学では以下のように定義されてます。
F = μ x N
F:摩擦力 / μ:摩擦係数 / N:垂直抗力
摩擦力は摩擦係数と垂直抗力の積で表され、垂直抗力の大きさによって変化するんだなと理解しておいてください。
では、次はタイヤが力を発生させる状況を詳しく見ていきましょう。
2.タイヤの横力発生図
上図はタイヤにスリップアングル(車両進行方向とタイヤ転がり方向に差がある状態)がついており、横力を発生している状態を表しています。
ここから難しくなっていきますが、ついてきてくださいね。
タイヤは転がり方向対して垂直方向に横力を発生します。その横力の進行方向に垂直な成分がコーナーリングフォースです。(Fy × cosβ)
また、横力の進行方向に逆向きな成分が抵抗になっている事も覚えておかなければいけませんね。(Fy × sinβ)
皆さん、きっとこんな経験があると思います。
『ステアリングを切ったら(≒スリップアングルをつけたら)車両が減速した or 加速が遅くなった。』
これは横力の一部が抵抗として作用した一例です。
さて、ここまでくるとタイヤがどのように横力を発生しているのか理解できたことでしょう。ここからはタイヤが発生する横力の特性について見ていきましょう。
3.横力とスリップアングルの関係性について
昨日の箸休めでサラッと投稿してしまいましたが、横力とスリップアングルの関係は下図のようになります。
変な形をしていますね。笑
この曲線には2つの特徴があります。※図中①・②
①小さいスリップアングルでは線の傾きが直線に近い
②横力はあるスリップアングルで最大値を迎え、その後は低下すること
特徴①は、スリップアングルが小さい領域において、スリップアングルと横力が比例関係にあるということで、この傾きをコーナーリングパワー[N/deg]と呼びます。この値が高いほど、小さいスリップアングルで大きな横力を発生できるので、フロントタイヤであればレスポンスが向上し、リアタイヤならコーナー進入の安定性が上がったりします。
②に関しては上の説明の通りですが、横力が最大となるスリップアングルを超えた領域では、横力が低下する傾向にあります。これを知っていれば、「ステアリングを切っても曲がり切れなさそうな時に、ステアリングを切り足す」ことが得策ではないとわかると思います。もしかしたら、横力の一部が抵抗となり速度を下げ、曲がり切れるなんていう可能性もありますが…
次に、タイヤ講座で一番大事な”横力と荷重の関係“について見ていきましょう。
4.横力の荷重特性について
上図の左側は既に説明したスリップアングルと横力の関係ですが、垂直荷重を2000Nから8000Nまで2000N刻みで4種類を再現したもので、右側は横力の最大値を荷重別でプロットしたものになります。縦軸のスケールは分かりやすいように垂直荷重2000Nにおける最大横力を100%としたパーセンテージ表記になっています。
この図から読み取れることは高い荷重になるにつれて横力の増加が緩やかになっているということです。
どういうことかというと、左図で垂直荷重を2000Nから4000Nに増やした時、横力は20%増加しているのに対し、6000Nから8000Nに増やした時は横力の増加が10%に留まっています。
つまり、タイヤの横力(コーナーリングフォース)は垂直荷重に"比例"して増えているわけではないと言えます。
このことをタイヤの非線形特性と呼んだりします。
5.まとめ
さて、如何だったでしょうか。タイヤが横力を発生させる原理と、スリップアングルと横力の関係、及び横力と垂直荷重の関係について理解して頂けましたか?
仮に全然わからないという方がいても心配はいりません。私の説明が下手なだけで、もっとわかりやすいサイトや書籍は沢山ありますので、そちらで解決してください。(他力本願)
次は荷重移動について書く予定です。残念ながら(?)今回よりも難しくなりそうです。そして、今回のタイヤの非線形特性も出てくるかもしれません。各自で理解を深めておいてください。
※今回は横力とスリップアングルの関係のみ説明をしましたが、前後力とスリップレシオの関係も本内容に近い関係性であると思っていて頂いて差支えありません。(曲線形状などは異なりますが…)
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