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セットアップ講座の前に Part④

こんばんは。Emperor-Dです。

前回に続き、荷重移動について考えていきましょう。今回は横方向の荷重移動についての簡単な説明と、タイヤの非線形特性を合わせて、ステアバランスが変化する現象までをお伝えしていきます。

荷重移動の計算に関する説明は前回の講座でやりましたので、詳しくはそちらをご覧ください。


では内容に入ります。

1.横方向の荷重移動(Level1)

横方向の荷重移動はまず、簡略化して計算するために車両を前から見た2輪モデルで考えましょう。ここまでは復習に当たるのでサラっと流します。

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図の車両は、画面手前側に進行し、左へ旋回している所を表しています。
旋回方向の外側に向かって遠心力Fが働いており、モーメントが釣り合うように荷重移動が発生します。
計算式にすると次のようになります。

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上記の計算式は前後方向とほぼ同じですが、荷重移動には車両質量と重心高に加速度、あとはトレッドしか関わっていないことがわかりますね。

簡単に横方向の荷重移動を説明しましたが、実際にはこの式だと正確ではありません。(すみません>_<)
これはあくまで2輪モデルであり、簡略化された状態なので、次にもう少しレベルアップした計算をしていきます。

2.横方向の荷重移動(Level2)

図が下手で申し訳ないのですが、4輪モデルにしてみました。

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この図は一応車を表していて、画面手前方向に等速円運動をしており、遠心力は重心点に作用しています。
この時の荷重移動は、次の4つの式から解くことが出来ます。計算条件は、⑴車両は剛体とし一様なロール角を持つ、⑵ロールセンターは車両中心を通っていると仮定します。

①タイヤが発生させる横力=遠心力(力の釣り合い)
②遠心力によるモーメント=ロール剛性/ロール角 (モーメントの釣り合い)
③遠心力=コーナーリングフォース(フロント端でのモーメントの釣り合い)
④遠心力=コーナリンングフォース(リア端でのモーメントの釣り合い)

ここから前輪、後輪の荷重移動の計算式にすると次の式となります。

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ΔWf : 前輪荷重移動 / ΔWr : 後輪荷重移動
Kf : 前輪ロール剛性 / Kr : 後輪ロール剛性
mf : 前輪荷重 / mr : 後輪荷重
a : 横加速度 / g : 重力加速度
h : 重心高 / hf : 前輪ロールセンター高 / hr : 後輪ロールセンター高
hc : 重心位置ロールセンター高
Tf : 前輪トレッド / Tr : 後輪トレッド

計算式が複雑で難しいかもしれませんので…次の説明だけ覚えてください。
ここで重要なのは、荷重移動の計算にロール剛性のバランスKf/(Kf+Kr)が含まれていることです。例えば、ロール剛性のバランスがフロント寄りになるとフロント側の荷重移動は増加し、リア側は減るといった、前後への荷重の移動が行われることになります。
※1 ロール剛性「N・m/deg]とは、車両を1度ロールさせるのに必要なモーメント。この値が大きいほどロールしにくくなります。ロール剛性はスプリング・アンチロールバー・タイヤのばね定数とトレッドから求められます。
※2  ロール剛性バランス[%]は前後のロール剛性の比です。

ついてこれてますか?横方向では、荷重移動がロール剛性配分によって変化するという内容でした。これが、まさかあんなことに影響するとは…

3.タイヤ横力の非線形特性によるステアバランス変化

では、荷重移動がロール剛性で変化するとどういうことが起こるのか?タイヤの最大グリップと垂直荷重の関係から分析してみましょう。

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これは前々回の講座で出てきた横力(コーナーリングフォース)と垂直荷重のグラフです。ストレートを走っているときは横方向の荷重移動はありませんので、1輪のタイヤが出せる最大横力は①になります。そこから旋回に入ると荷重移動が起こりますが、外輪側は垂直荷重が増えるのでグラフ右側へ、内輪側は減りますのでグラフ左側へと移動します。この平均が1輪当たりの最大横力となりますので②になります。この②はタイヤの横力が荷重に対して非線形特性を持っている影響で①より低くなります。
そして更に、2で説明したロール剛性バランスを変えて、より荷重移動をするようにした場合、更に最大横力は低下し③のようになります。つまり、セットアップを変えることでタイヤが発揮できる力が②から③へ移行したことになります。これがセットアップでステアバランスが変わる理由です。
例えばステアバランスがオーバーステアの車に対して、フロントのロール剛性を上げる、またはリアのロール剛性を下げることで、フロントの横力が下がり、リアは上がるためオーバーステアの改善が見込めるということになります。


3.まとめ

いかがだったでしょうか。今回は横方向の荷重移動とタイヤ横力の荷重に対する非線形特性を用いたステアバランス変化までお伝えしました。ステアバランスを整えたいということであれば、この考えで大雑把には合わせられるかなと思います。
今回は駆け足で進めてしまったので、今後セットアップ講座をやる上で必要になるロール剛性の計算等は、適宜お伝えしていこうと思います。

では、次は “セットアップ講座の前に“ の最終章、ドライバーがセットアップする際に考えるべきことをまとめてお届けしていく予定ですので、しばらくお待ちください。

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