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顧客体験マネジメント(CXM)のこれまでとこれから

この記事は、エモーションテック2022アドベントカレンダーの25日目の記事です。

こんにちは、Experience Solution Teamでコンサルタントをしている武下です。
Experience Solution Teamはお客さまが顧客体験マネジメント(以下、CXM)を円滑に推進できるよう伴走支援しているチームで、顧客ロイヤルティや顧客体験に関する調査設計~調査実施~分析~レポート報告までの一連のご支援をベースに、調査分析の範囲を超えたCXM戦略の策定やCXM戦略の実現に向けた体制づくりなどのご支援も担当しています。

今年のアドベンドカレンダーの最後ということで、企業様やエモーションテックがこれまでにどのようにしてCXMに取り組んできたのかを長めの時間軸で振り返りつつ、これからのCXMについて私が思い描いていることをお伝えできればと思います。

CXMのこれまでとこれからについて、大きく過去(~2019年)、現在(2020年~2022年)、未来(2023年~)の3段階に分けて整理しています。もちろん企業によってCXMの取組状況は千差万別ですので、「この時期はこういう企業が多かったんだな」と緩やかに捉えていただければと思います。

(なお私がエモーションテックに入社したのは2021年10月のため、それ以前の話は偉大な先人の方々にお伺いしたことをもとに記載しています。)

CXM(顧客体験マネジメント)とは

CXMとはCustomer Experience Managementを略したもので、日本語で表すと「顧客体験マネジメント」になります。顧客体験とは顧客が企業との接点を通じて経験するあらゆる体験のことで、この「一連の体験の価値を高めていく活動」のことをCXMと言います。

私がお客さまにお伝えする時は少し固めに、「組織として顧客と向き合い続け、より良い顧客体験を提供し続ける(顧客体験価値を高め続ける)企業活動」と表現することもあります。

CXMに取り組んで顧客体験による競合優位性を高めることで、顧客ロイヤルティを向上させ、企業の持続的成長を実現させようとする考え方です。

過去(~2019年)のCXM ~顧客ロイヤルティを見える化する~

<企業の取り組み>

顧客ロイヤルティを測定する指標として広く利用されているNPS®(Net Promoter Score/ネット・プロモーター・スコア、以下「NPS」)ですが、開発された時期は古く、2006年にベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏を中心として書かれた書籍「The Ultimate Question」で初めて紹介されています。

日本でいつ頃からNPSが広がっていったのかは定かではありませんが、エモーションテックがNPSを測定できる顧客体験マネジメントツール「wizpra NPS」をリリースしたのが2014年で、当時はお客さまにNPSや顧客ロイヤルティとは何かを説明するのにとても苦労したそうなので、NPSが開発されてから10年ほど遅れて日本でも徐々に浸透が始まったのではないかと思います。

NPS自体が新しい考え方だったため、企業のCXMも「まずは顧客ロイヤルティを見える化する(NPSを測ってみる)」ことから始まりました。そして一部の企業は粘り強くNPSの定点観測や分析を続け、「顧客ロイヤルティと企業収益の関係性」や「顧客ロイヤルティの源泉となる顧客体験」を明らかにする方法を模索しはじめました。

<エモーションテックの取り組み>

当時はNPSの測定が行えるツールはほとんどありませんでした。エモーションテックが2014年に顧客体験マネジメントツール「wizpra NPS(現EmotionTech CX)」の提供を開始したことで、顧客ロイヤルティを手軽に見える化することができるようになりました。

また、ツールの提供だけではなく、コンサルタント・データサイエンティスト・データアナリストが「顧客ロイヤルティの構造を捉える方法」「顧客体験の評価(顧客の感情)を正しく取得する調査方法」「顧客ロイヤルティの源泉となる顧客体験を明らかにする分析方法」などを開発しながら、顧客ロイヤルティに関する調査・分析支援の水準を高めていきました。

これは現在でも変わりませんが、開発した手法は随時ツールに搭載し、顧客ロイヤルティの調査だけでなく、その後の分析や現場フィードバックまで一貫して行えるようサービスのアップデートを続けています。

現在(2020~2022年)のCXM ~顧客体験を改善する~

<企業の取り組み>

現在を3年間で捉えるのは長すぎるかもしれませんが、これまでの先進的な企業の取り組みが蓄積されてきたことで、現在ではNPSという言葉やCXMという考え方が日本でもかなり浸透してきたのではないかと思います。
それに伴い企業のCXMの取り組みも、単なるNPSの見える化からもう一歩踏み込んで、「顧客ロイヤルティの向上が企業成長に与えるインパクトの把握」や「顧客ロイヤルティに影響を与えている顧客体験の把握」など、「顧客体験の改善」を目的とした活動へと変化してきました。

また、上記の取り組みの結果、ロイヤルティの高い顧客を自社の重要な経営資源とみなした企業では、顧客ロイヤルティや顧客体験を自社の競争力の源泉と捉え、NPSをKPI(経営指標)に位置づける動きも始まっています。

(参考)NPSを経営指標として位置づけている国内企業
楽天グループ株式会社、ANAホールディングス株式会社、大和証券株式会社など

<エモーションテックの取り組み>

書籍「実践的CXM」を出版しました(正確には2019年10月刊行なので本記事の区分だと「過去」になってしまうのですが・・・)。サービス提供を開始してからの400社以上(現在では500社を超えています!)の支援経験をもとに、本のタイトルにあるとおりCXMの実践的なノウハウや代表事例を多数掲載しており、CXMの入門書として多くの方にお読みいただいています。

また、コンサルティングの領域では、調査・分析のノウハウが蓄積され社内体制が整ってきたことでより多くのお客さまをご支援できるようになりました。加えて直近1年では「CXM戦略の策定」や「CXM推進体制の構築」などのより全社的な企業活動に関するテーマでのご相談増えてきており、調査・分析にとどまらない領域でご支援を実施しています。

将来(2023年~)のCXM ~顧客体験を競争力の源泉にする~

<企業の取り組み>

ここからは将来の話ですので私の想像になりますが、大きく2つの取り組みが加速していくのではないかと考えています。

1つめの取り組みは「CXMによる競合との積極的差別化」です。
「現在のCXM」の項目でお伝えした「顧客ロイヤルティや顧客体験を自社の競争力の源泉と捉える動き」が広がり、より多くの企業が他社への競争優位性を築くためにCXMを活用していくのではないかと思います。またCXMが活用される業界も、現在はBtoC向けサービス業が多いですが、今後はメーカーやBtoBなど幅広い業界で受け入れられていくのではないかと思います。

2つめの取り組みは「パーパスとの結びつき」です。
従来は収益の先行指標として注目されていたNPSですが、アカウントエンゲージメントチームの佐野がアドベントカレンダー18日目「顧客愛って何だ?」でご紹介したように、最近ではNPSをパーパスの達成度合いを示す指標として活用しようとする考え方が提唱されています。この考え方が広がってくると、顧客志向の企業は自社の活動が実際に顧客に受け入れられているのかどうか(パーパスが実現に向かっているかどうか)を、NPSを通じて把握することができるようになります。

そしてこれら2つの取り組みは一部署や一担当で成し遂げられるものでは到底なく、社内・社外の多くのステークホルダーを巻き込みながら進める必要があるものです。そこで企業はステークホルダーに自社の進む方向性を示すために「CXM戦略」を掲げ、顧客志向の経営を目指していくのではないかと考えています。

(参考)CXM戦略を掲げている国内企業
第一生命保険株式会社など

<エモーションテックの取り組み>

CXMにより競争優位性を築いていくためには、業界内での自社の顧客ロイヤルティの水準や、他社よりもより良い顧客体験が提供できているかを把握する必要がありますこれまでもお客さまからのご依頼で競合比較調査を実施してきましたが、今後はより多くの企業のCXMの取り組みを後押しできるよう、エモーションテック自らが業界調査を実施して結果を公表していこうとしています。(現時点で公表しているのは製薬業界)のみですが、既に調査完了している業界が複数あり調査レポートを現在鋭意製作中ですので、今後のリリースにご期待ください!)

また、より良い顧客体験を提供し続けるためには、顧客の評価を自社従業員が正しく理解している必要があります。そこで、顧客体験の評価を顧客と自社従業員で比較することで認識のギャップを把握する「評価ギャップマトリクス™」など、CXMをサポートする新しい調査手法や分析手法の研究開発にも積極的に取り組んでいます。

最後に

今回改めてCXMに関する企業やエモーションテックの取り組みを振り返る中で、CXMの在り方や実現方法がどんどん進化していっていることに気付かされました。

「常に自分自身をアップデートしていこう!」と気が引き締まるとともに、お客さまと一緒に答えのない領域でチャレンジできることにワクワクしています。

ご覧いただいた方が、少しでも「CXMって面白そうだな!」と感じていただければ幸いです。

ネット・プロモーター® 、ネット・プロモーター・システム® 、ネット・プロモーター・スコア®及び、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標です。

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