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パワハラ上司に「認識論的質問」を実践してみた

頑固な人の考え方を変えるのに有効だとされる「認識論的質問」を、色々な場面で試しています。研修講師を生業としているため、自分の備忘録的に記録していきたいと思います。さて、どの程度効果があるのか?

認識論的質問を簡単に言うと

初めてに「認識論的質問」を簡単にだけ説明しておきますね。
どんな人も「経験」や「常識」などいくつかの思考プロセスを経て、信じている「真実(信条のようなもの)」が形成されます。これを真っ向から否定すると、より頑なになり自分の意見を曲げない。こんな頑な考え方を、軟化させて、変えていくのに有効だとされているのが、認識論的質問です。

認識論的質問の図

具体的なやり方は、その「真実」を形成したプロセスについて対話していくことで、自分自身で「あれ?矛盾があるな?」と気付いてもらうことです。

離職者も出ているパワハラ上司

昔から仲良くしている人事の友人から、「次回の研修参加者の中にパワハラで困った部長がいる」と相談がありました。詳しく聞いてみると、以下のような特徴でした。

・毎朝行うミーティングで全体に対して厳し言葉でハッパをかける
・失注した案件については、その経緯をなぜなぜで追求
・とにかく厳しい言葉で部下を叱責
・アドバイスは精神論

要するに、とにかく「言葉」が厳しいとのことでした。既に昨年の新卒も数名退職していて、人事からは何度も「それパワハラです。改善してください」と指摘していましたが、一向に変わる様子はないとのこと。
#僕の周りにも同じような人います・・・

パワハラ上司の印象

研修初日、パワハラ上司といよいよ対面。予想通り「豪快な体育会系の営業マン」といった第一印象を受ける方でした。

しかし、研修中のディスカッションで話している内容を聞いていると、「強い言葉」は多めでしたが、決して相手に対してリスペクトがない人ではなく、部下育成についても情熱をお持ちの方でした。業務に対する考え方も、確かに精神論は多めではあるモノの、事実も重要視していて、何でもかんでも精神論で片付けるタイプではありませんでした。

以前から程度の差はあれ、こういったパワハラに近い行動で困っている人事からご相談を受ける機会は多かったのですが、初めてお会いすると言われているより酷くない印象の方が多いです。研修の場と、普段のオフィスでの行動・発言はもちろん違うとは思います。

「厳しい言葉」を作ったプロセスを探る

よくよく話を聞いてみると、大学時代に所属していた体育会部活でも、「厳しい」言葉での指導が当たり前で、そういった指導のおかげでレギュラーをとれた成功体験をお持ちでした。入社してからも厳しい上司に育てられてきて、結果的に成果を上げて部長になれた。やはり、自分自身の「経験」が現在の「真実」を作っていました。
#昔はこんな上司の方、多かったですよね

認識論的質問をぶつけてみる

この場合のアプローチは「経験」にフォーカスして、対話を進めて行くこと。「厳しい言葉」での指導の良し悪しで議論をしないということです。以下のような質問をしながら対話を進めて行きました。

「厳しい言葉による指導がなくても、高い成果を出した同僚は?」
「部下の中で、成果を出せた人・出せなかった人の違いは?」

こんな質問をしてみると、徐々にご自身の経験を改めて思い出して話すことが増えてきて、自分の指導で伸びた人は、何が良かったのだろうと悩まれるようになりました。

理想は、「厳しい言葉による指導のおかげで部下が成長した」から、「厳しい言葉による指導をしたにも関らず、部下が成長した」と気付いて頂くことでしたが、そこまで一気に変わるには至らなかったです。
#私の実力不足もかなり影響していると思います

研修中の変化は、「厳しい言葉による指導」と「部下の成長・成果」の因果関係に矛盾を感じて、では何が部下の成長・成果に繋がったのか、この仮説がいくつか出来上がったところまででした。

今でも対話を続けていますが、仮説検証を繰り返して、部下育成の新たな「真実(信条)」が見つかるよう、少し長い目でお付き合いしていきたいと思っています。

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