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ざっくり源氏物語 #7 夕顔①

今回からざっくり源氏、夕顔に入ります。
夕顔はまあ、名作よね。さて、「品定め」で”中の品”推しをされた源氏が”中の品”女探しをしているわけですね。
あるひ、六条のあたりを忍び歩いていた源氏。そういえばこのあたり大弐の乳母と言われる源氏の乳母(惟光のお母さん)が尼になって住んでいるというので、見舞いに行こうと思い立つ。(このあたり、お坊ちゃまのいいやつだよねえ)惟光を使いに立てて牛車を入れるところを開けてもらうのを待っていたところ、隣の家に大勢女房がいて、こちらを見ている気配がした。どうやら新しく引っ越してきたらしい。忍び歩き中でどうせ身分もわかんないんだからいいや、と覗いてみるととても粗末な住まいであった。そまつな板塀に青い葛が勢いよく生えて、そこに白い花が咲いていました。
「遠方人に物申す」と源氏が言うと「それは夕顔と申します」と随身が膝をついて言いました。

「遠方人に物申す」というのは
「うちわたす遠方人にもの申すわれ そのそこに白く咲けるは何の花そも」
という古今集にも載っている歌を引用したかたちのセリフです。この歌は巻十九、旋頭歌の中に入っていますね。この歌の場合の答えは梅なんですけれどもね。
そんなこんなで一輪手折ってきてよ。というもので舎人が入っていって(勝手に)一輪手折ってくると、その粗末な家の遣戸口に童女が現われて、香をたきしめた扇を差し出しました。「風情のない花なので、これに乗せてどうぞ」というわけですね。
そこに惟光が戻ってきたので、惟光経由でその扇は渡されることになった。「不調法ですみません。行き届かず」と源氏を招き入れると、惟光の兄やら婿やら娘などが集まって源氏が来てくれたことをありがたがりました。乳母は出家して病が癒えたので、いつお迎えが来てもいいこの命だけれど、源氏が来てくれたからいっそすがすがしくお迎えを待てる、的なことを言います。とにかく出家する、ってのは当時の治癒アイテムの一つでした。出家っていうのはものすごく功徳のある行動なので、それによって病がちょっと癒えたり、すこし寿命が伸びたりすると思われていたのですね。
源氏は生みの親(桐壺の更衣)が早くなくなっていますからね、「縁のある人が早くなくなってしまったから、すごく頼りにしていた」とこまごま涙ながらに話すと涙をぬぐう手元から漂う高貴な香の香りが部屋に満ちて、ただただありがたい、と皆涙をぬぐうのでした。
祈祷の手配(僧のありがたい祈祷も病の治癒につながると思われていました)をして部屋をでると、先ほどの扇を改めて拝見!です。
すると、使い慣れたような香の香りが深くたきしめられ、案外風情のある書で
「心あてにそれかとぞ見る白露の
光そへたる夕顔の花」
あの方かしらと思っています、あなたの輝き(白露)でよりいっそう美しく見える夕顔の花ですことよ、という歌。古今集、大河内躬恒「心あてに折らばや折らん初霜の置きまどわせる白菊の花」というのがありますが、それをちょっと意識した作りで源氏からすると、教養的にも「おっ!」という感じですね。
ということで、となりんちの人はどんな人?と惟光に聞く。「またかよ!」と惟光は「例のうるさきお心」とか思い、「看病しかしてねえから誰とかわかんないっす!」と不機嫌に。だよね。
まあまあ、この扇は調査しないと!(なんの?)って源氏。すると、夫は受領階級の男だそうで、本人所用でおらず、妻は若くて風流人、だとかわかった。(ご近所の噂話こわい)そっか、興ざめするくらい身分の低い女じゃないか、と思うも、源氏だとピンと来て歌を送ってくる胆力やべえ、と見過ごせない我らが源氏。女性のことになると軽々しいやつなのです。
「寄りてこそそれかとも見めたそかれに
ほのぼの見つる花の夕顔」
と懐紙に書いて送りました。字も自分だとわからない様に(すごくきれいに書かないで)して。
近寄ってみてみたらどうですかね?
という歌ですね。最初の随身にもっていかせました。返事があると思っていなかったのか、随身は身の置き所がなかったけれど、「え?!どう返事する?!」とキャッキャしているので、呆れて戻ってきた。
そして、そのまま六条御息所のところに泊まって、先ほどの女のことは思い出すこともせず、朝寝をして帰りました。

しばらくして、惟光がやってきました。母の看病があって、なかなか源氏につきあってもいられなかったのですね。そして「となりんちを調査したよ!!」
調べたところ、5月ころから住んでいる人がいるらしい。女房たちは美しく、裳を引いていたので、主人もきちんといるらしい。その主人は夕日が差し込んだ隙に覗いたところ、文を書く人が見えました。顔は美しかった。物思いにふけっていて、周りの女房たちが泣いていたので、何かあったのであろう。
…覗きすぎじゃね?惟光。
調査を続けろ!このままじゃいけんよね、と源氏。
惟光はこの年若い貴人が風情も何もなく堅物だったら、ただのつまらん人物だろう。女遊びくらいさせてやれ、と思うのでした。
頭中将が言ったような人がどっかにいるかもしんないし、と源氏はあらためて思って決意をあらたに?するのでした!

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