中国サッカーの野心(2020/9/25 EiF Magazine)
(この記事は3分で読めます。約1,800文字)
※トップ画は、EiF Magazineの当該記事より転用
2020/9/25(金)にEiF Magazineにて取り上げられていた、アジアのサッカー専門家 John Duerdenが、2018年9月にリリースした中国のサッカーへの投資に対する近況の記事から、中国サッカーについて考えてみました。
(参考記事)
https://eifmagazine.substack.com/p/enter-the-dragon-chinas-superpower
2014年以前の中国のサッカー
政策
国としては、2008年までは、北京夏季五輪でのメダル獲得のために多くの予算が割かれている状態でした。
産業としてのサッカー
中国のサッカーについて、まず代表は2002年の日韓W杯の1度だけ出場経験があり、プロは中国スーパーリーグといわれます。
2013年以降のアジアチャンピオンズリーグで2度優勝している広州恒大は、2009年に八百長をしていたことが発覚し、トップティアから降格し、大手不動産企業である広州恒大地産集団がクラブを買収といった状況でした。
サッカーの普及状況
2010年の12歳未満の競技登録者は約1万人で、当時の日本は30万人で大きな差がありました。
こうした背景には、街中で誰もサッカーしておらず、学校の校庭もバスケットボールコートや卓球場があっても、サッカー場はないという、環境面の不足も原因の一つにあります。
加えて、一人っ子政策の影響から、親は子どもたちを良い大学、良い仕事に就かせるための教育に注力する必要があり、プロサッカー選手としてのキャリアを歩んでもらうために、スポーツに投下させる時間もほとんどありませんでした。
2014年以降の中国のサッカー
政策
中国政府が、2014年に「体育産業の加速発展と体育消費の促進に関する諸意見(国務院46号文件)」を発表し、政策が大衆スポーツ、スポーツの産業化に転換されていきます。
サッカーにおいても、2015年3月に中国サッカー改革発展総方針、2016年4月に中国サッカー中長期発展計画(2016-2050年)が公表されています。
※出所
三井住友銀行、2017年「中国スポーツウェア業界の動向」
フットボールチャンネル、2016年「中国足球改革発展総体規制 訳文」
産業としてのサッカー
中国の経済発展に伴い、ACミランやインテル・ミラノといった世界的なビッグクラブをはじめとして、中国の投資家たちがプレミアリーグを中心としたクラブを次々と買収し、また、シティフットボールグループの株式を13%を持つなど、ヨーロッパへの影響力を着々と高めていきます。
投資のピークは、2016年で、なんと2億9,600万USDを行っているようです。
一方で、国内はスーパーリーグの各クラブは世界中の有名選手の引き入れていきます。2010年の平均観客数が14,500人だったものを、25,000年に引き上げ、中国スーパーリーグの放映権も50か国以上で取引がなされている状況だったようです。
サッカーの普及状況
競技の普及の観点では、2015年に全国青少年校園足球というサッカー専門の学校が設立され、2018年には専門の学校が13,381校設立されています。
加えて、2020年の競技人口目標は5,000万人、2030年までのサッカー場数は7万面以上を目指しているようです。
まとめ
中国サッカーは、現在は海外投資ではなく、国内への投資を推進しています。当然ながら競技の普及や育成環境が整備されれば、10年後~20年後の競技力は高いレベルになっていくと想定されます。
日本の競技普及は、学校体育や地域クラブ、プロチームのユースと競技できる「チーム」の受け皿は多数あります。しかしながら、将来にわたって国際的な活躍し続ける選手や、WCで勝ち続けられる代表を作り上げるためには、「限られた環境の中で」と言い続けるのではなく、指導者、ピッチ、トレーニング用具といったトレーニング環境に対して、より多くの投資を積極的にしていく必要があるような気がしています。
特に指導者、審判、ピッチコンディションを整える方々、事業管理を行う方々も含めて、ボランティアではなく、しっかりと収入が得られ、雇用を創出するような、社会全体としてなくてはならない産業の構築に向けた取組みが、より求められるのではないかと思いました。