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【08】予定調和

【08】オープニングの音をきっかけに、照明があがる。舞台が明るくなると、ステージから客席の様子はほとんど見えなくなって、演者が取り残された一つの世界が出来上がる。視線を独り占め。一挙一動、細かな動きを監視されている状態だ。私の身体は自分のものだけれど、どこか自分のものではない。舞台にいる私の動きを、もう一人の私が、後ろから見ている。次はこのセリフだよとか、相手の反応をみて次のセリフをどう出すか、逐一、私と協力プレイが行われている。離見の見というやつだ。私と演者の関係。演者と聴衆の関係。全部考えて、全力で判断している。虚構の世界の中でリアリティを追求する。何度も繰り返し練習の中で聞いたセリフの中から微妙なニュアンスの違いをやりとりしてワクワクしたい。その場に、集まる人から醸し出される雰囲気に対して、破綻しない程度に逸脱して、何か面白いことできないかなと、ずっと機会を伺っている。こんな感じで舞台に立つことが好きなのだが、前ばっかりみていて、予定調和すぎと、思った本番だった。
本番よかったと褒めるより、そのやり取りのプロセスに着目してほしいんだな…。

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