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くすんだうろこ②

しばらくして人魚はあることに気づきました。
大きな魚は怒鳴るばかりで近づいてこようとしません。
おかしいと思い、おそるおそる人魚から近づいてみると……

なんと、小さな魚が集まって大きな魚のふりをしていたのです。

「こんにちは。お魚さん。みんなで集まって何をしているの?」
「みんなが…みんながきれいなサンゴだからってむやみに取っていくから脅かしていたのさ!」
「まぁ…いくらキレイで、たくさんあるからって取ってしまうのはいけないことね。自分のことしか考えてなかったわ。本当にごめんなさい」


小さな魚は驚きました。素直に謝られたのは初めてだったのです。

「素敵な心を持っているね。君だったら信じるよ。近くでサンゴを見ていきなよ」



人魚は、そっと桜サンゴに近づきました。
桜サンゴからでたピンクの粉がふわふわと漂い人魚のほほをほんのりピンクに染めました。
人魚は微笑むと、小さな魚にたずねました。

「月の花さんに会いに来たの。どこにいるか知っていたら教えてくれない?」
「この時間だったら月の花は、このずっとずっと上で月の光を浴びているよ」


人魚は小さな魚にお礼を言うと、上へ上へと泳いでいきました。

海から顔を出すと、そこには月の光を浴びて輝く月の花たちが咲いていました。

「こんにちは、月の花さん」

月の花は輝きながらゆらゆら揺れています。

「月の花さん、お願いがあるの。どうしても東の海に行きたいの。闇の洞窟まで私を連れていってください!お願いします!」

人魚は、じっと月の花を見つめました。
人魚の瞳は美しく輝いています。
月の花は、人魚に見つめられて恥ずかしくなったのか、だんだんと赤く染まっていきました。そしてついに真っ赤な海の花に変わってしまったのです。
赤い海の花はゆらゆらと潜っていきます。
人魚は、海の花についていきました。

海の花についていくと小さな洞窟につきました。

「なんて小さな洞窟なの。きっと髪が邪魔になるわね」

人魚は近くにいたカニに髪を切ってもらいました。

「素敵に切ってくれてありがとう。これで通りやすくなったわ」

人魚は怪物がいるという洞窟を恐る恐る覗きました。
するとそこにはヒトツメダコがたくさんいました。
どうやら彼たちが怪物の正体のようです。

「ヒトツメダコさん、どうかこの洞窟を通らせてください」

人魚が頼むとヒトツメダコたちは洞窟の壁に一成に張り付きました。どうやら通ってもいいみたいです。

「よし!いきましょう」

海の花は、月のように輝きだしました。
そして洞窟の中へと進んでいきます。
人魚も海の花につづいて中へと進みました。
洞窟の中は不気味でしたが前へ進むしかありません。
それに人魚には海の花がいてくれます。それだけで心強かったのです。

洞窟を抜けるとそこには、キラキラとカラフルに輝く海が広がっていました。
ここが東の海です。

「海の花さん、どうもありがとう。とても助かったわ」

人魚はそっと海の花にくちびるを触れました。
人魚のくちびるは海の花と同じ赤色に染まりました。

「闇の洞窟を通って誰かがやってくるのは何年ぶりかな?」


その声の方を見ると、そこには七色のカメがいました。

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