![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46429038/rectangle_large_type_2_e668523cdf834713461ac8d8a493c421.png?width=1200)
くすんだうろこ③
「こんにちは。あなたが七色のカメさんね」
「人魚を見るのは久しぶりだな」
「七色のカメさん!あなたは何でそんなに素敵な七色のコウラなの?」
「なんでそんなことを聞くんだい?」
そんなのわかるでしょ!という顔をして人魚は答えました。
「見ての通り私のうろこはくすんでいるの。あなたのその素敵な七色のコウラがうらやましいのよ」
「君には本当に七色に見えるのかい?」
人魚は驚きました。だって目の前に七色のカメがいるのですから。
「よく見てごらん」
そこには、カラフルな東の海が映っていました。
七色のカメのコウラは、鏡のコウラだったのです。
「僕はね、1人だけでは輝けないんだ。みんなもいるから僕は輝けるんだよ。誰もいない海の底に1人でいたら僕は1つも輝けないんだ」
「そんな……」
人魚は落ち込みました。
「がっかりすることはないさ。今度は自分の姿を見てごらん」
七色のカメはコウラに人魚を映して言いました。
「これが…私?」
自分の姿を見て驚きました。
昆布でツヤツヤになった髪の毛、桜サンゴでピンクに染まったほほ、カニに切ってもらい整った髪型、ヒトツメダコに磨かれたウロコ、海の花で赤く色づいたくちびる、そこにはきれいに輝く自分の姿が映しだされていました。
人魚が1番驚いたのは、自分のウロコが七色のカメと同じように輝いているのです。
「僕のコウラと同じように、君のウロコも鏡のウロコなんだよ」
人魚は自分のウロコがくすんでいると思い込んでいたのです。
「私は他の人魚を羨んで、自分を否定するばかりで、自分で輝く努力はしなかったわ」
七色のカメは優しく微笑みました。
「でも、ここに来るまで大変なことがたくさんあったはずだよ。勇気を出して乗り越えたから君は輝けたんだ。もう君は変われたんだよ」
「ありがとう。これからは自分を大切に、そして自分だけじゃなくて周りも大切にするわ」
人魚は帰る前に七色のカメに言いました。
「この海はとてもカラフルで素敵なところだけど真っ赤な赤色ってないわよね」
七色のカメは海の花を見つめました。
「君さえよければここに住まない?」
海の花は人魚のそばへ行きました。
「もしかして私の心配をしてくれてるの?」
海の花はうなずきました。
「私なら心配ないわ。だからあなたさえよければここに住んであげて」
海の花は七色のカメに近づきました。
きっと、よろしくと言っているんでしょう。
「これでもっともっともっとカラフルで素敵な海になったわね」
「海の花さん。あなたとお別れするのはとてもさびしいけれど、必ずあなたのお友達を連れて会いに来るわ」
海の花は力強く輝きました。
人魚のために洞窟を照らしているんでしょう。
人魚は洞窟にへ入っていきました。
1人だけど海の花が照らしてくれています。もう洞窟は怖くありません。だって友達とつながっているんですから。
そして月日が流れ、今では南の海には月の花、東の海には海の花がたくさん咲いています。
「月の花さん、こんばんは。今日はあなたと一緒に夜空を見に来たの」
人魚は月の花と一緒に海の上に浮いています。そして、そのウロコには夜空が映し出されて……。
「ねぇ知ってる?東の海には海の花と七色のカメがいてね、南の海には月の花と星空のウロコの人魚がいるんだって」
END
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?