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グーグル式のデザインスプリントの幅広い使い方と意外なメリット

先週の2日間を使い、グーグル式のデザインスプリントを経験しました。経営者、エンジニア、デザイナー、マーケターなど総勢7名が集まり、缶詰めになって取り組みました。本来は5日間でやる内容を、ギュッと2日間に詰め込んだ形です。

デザインスプリント自体は何度か経験してきましたが、グーグル式のスプリント(参考:スプリント本)は初めてでした。一言でいうと、とっっても、このアプローチが気に入って、素晴らしいと思いました。

特に、グーグルスプリントの「適用範囲の広さ」と「意外なメリット」が、印象的だったので、5つに分けて共有しようと思います。

1. 大目的と流れ
2. 適用先
3. メリット1:目線が揃う
4.メリット2:解像度が上がる
5.メリット3:自分ごと化される
まとめ

1. 大目的と流れ

グーグル式のデザインスプリントの1番の目的は、大きなリソースの投下(人的・金銭的リソースの投資)に踏み切る前に、最も重要な課題に対して答え(学び)を得ることです。そのアプローチは、 ビジネス戦略、イノベーション、行動科学、デザイン思考などの様々な知見を盛り込んであります。グーグルベンチャーズというグーグルのベンチャーキャピタルでトライ&エラーを繰り返して作られたスプリント(全力疾走する短期間)です。

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参考:Google Ventures HP

新規事業を作る最速の方法と言われるリーンスタートアップ(原著)では、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる検証可能なレベルで、最小限の機能が盛り込んだプロトタイプを通じて、テスト行います。

一方、スプリントでは、そのプロトタイプをMVPといった形に捉われずに、ユーザーからの反応が得られる最小限のプロトタイプを5日間のうちに、DIYして、1番欲しかった本番に近い形でのテストとそのフィードバックを得ることができます。

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参考:Design Sprint by Google Ventures

流れは6つのステージに分けられます。

1:アンパック:スプリントのスタート地点となる情報の共有

2:課題の定義:課題のアウトプット、マップ(ジャーニーマップなど)の作成、専門家インタビューを通じて、最もリスクの高い検証すべき課題設定

3:ソリューションスケッチ:参加者各人が短期間でアイデアを作り、極力議論を避けながら、共有する

4:プロトタイプとするアイデアの決定:アイデアのなかで素晴らしいと思う点を投票して、どのアイデアを検証するのか決める

5:プロトタイプ:定義した課題に対するフィードバックが得られるレベルのプロトタイプを短時間で仕上げる

6:テスト:プロトタイプを用いて、実際にユーザーからの反応など重要な課題をテストし、フィードバック(学び)を得る

詳しくは上述のスプリント本を読んだり、グーグルデザインスプリントで検索すると多くの情報が手に入ると思います。

2.スプリントの適用先

スプリントと聞くと、何か新しいものを生み出すために使うというイメージで、特定の仕事にしか使えないと感じるかもしれません。実際に経験してみると、予想以上に色んな使い方ができると感じています。

スプリントでは、最初の制作物として、マップ(ユーザージャーニーマップなど)を作ります。

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今ざっと書いたものですが、このような形で整理をすると、定義する課題次第でスプリントは様々な使い方が可能だと思います。例えば、、、

1:顧客発見/マーケ:どんなWebページや宣伝文句を設計すると、想定するお客さんが興味を示してくれるのか?

2:サービスデザイン(全体):どんな一連の体験を提案すると、ユーザーは想定する価値を感じてくれるのか?

3:顧客の課題と提供価値:想定するお客さんは、提供するソリューションによって課題が解決されるのか?

4:モチベーションデザイン:サービスを使い始めたお客さんは、どんな施策や体験を提供すると続けてくれるのか?

5:ビジネスモデル:実際、提供する価値に対していくらぐらい払うのか?仕組みとして回りそうか?

6:オペレーション:提供しようとするサービスは、限られたリソースの中でオペレーション可能なのか?

このように、マップを作成することにより、どんな事業フェーズにあっても今取り組んでいるテーマに対して、どこが「本質的な課題」なのかを定義することによって、スプリントは様々な使い方が可能です。

このようにスプリントの大目的は、重要な課題に対する答えを先回りして得ることができることです。しかし、スプリントには、他にも重要なメリットが埋め込まれていると感じています。

3つに絞って紹介します。

3.メリット1:組織の「目線が揃う」

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Photo by Jonathan Chng on Unsplash

スプリントは、いつも忙しい経営幹部だったり、いつも一緒に仕事をすることがない様々な職種の人たちが集まります。経営層、エンジニア、ビジネス開発、デザイナー、ライターなどなど。

このような多様なメンバーが絡み合いながら事業を前に進めていくためには共通の土台(テーマの理解・課題認識・価値観の共有など)が必要です。特に、スプリントで取り扱うようなふわっとした、まだ定義できていない大きなテーマは、メンバー間での意識/理解のズレがあります。

数日間に渡り、時間と場を共有しながら走り抜けることによって、各メンバーの思考や価値観を共有できたり、テーマや課題に対する理解が徐々に擦り合わさっていきます。担当者からのプレゼンテーションだけでは絶対伝わりきらない、具体的なイメージを共有していくことができます。スプリントに意思決定者(投資判断決定者、次期リーダーなど)を巻き込むことができれば、さらにプロジェクトを加速させることも可能です。あるいは、複数の会社間でジョイントベンチャーを組んだ際、カルチャーや価値観の違いなどを乗り越えてプロジェクトを前進させるのにも有効な手法かもしれません。

4.メリット2:サービス/事業の「解像度が上がる」

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Photo by Bogdan Kupriets on Unsplash

大きな課題を解決していくためには、「ブレークスルー」と言われるようなこれまでとは異なる視点での課題定義やソリューションが必要となります。Out-of-Box(枠外の思考)と言われるような視点を取り入れるのに、スプリントは有効です。

スプリントのメンバー構成は、専門性の異なる役者を巻き込むのが重要ですが、ジブンと異なる視点が常に入ってくる状態を作るためでもあります。エンジニアであれば、設計仕様を実装するための最適化について考えるのが得意であったり、経営層であれば、経営のKPIや事業戦略について、デザイナーであれば、ユーザーの悩みやサービスの利用シーンについて考えているかもしれません。そんな全く異なる世界で働いている人達が集まり、ポストイットなどでアウトプットしていくことで、自然と凝り固まっていた思考の外(Out-of-Box)にある視点が入ります。この繰り返しにより、たった数日間で、サービスや事業の輪郭がはっきりとし、サービスマップ、課題、解決策などが、具体的になっていきます。担当者1人で考えると1ヶ月かかるような、解像度の高いコンセプトがわずか数日間で共有されていきます。

5.メリット3:プロジェクトが「自分ゴト化される」

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Photo by Zainul Yasni on Unsplash

スプリントでは全ての参加者が等しく、(時によってはアイデアは匿名で)参戦します。極力、議論の時間を避け、個人個人で考え、アウトプットし、共有していきます。そのため、特定の人だけが話を進めたり、権力を持っている人の意見のみで進められることはありません。全ての人が課題に対して意見(アイデア)を持ちます。この取り組みを通じて、全ての参加者はプロジェクトをジブンごと化して捉えることができます

事業を進める中で、チームメンバーによってはあまりエンゲージメント(責任感やコミットメント度、モチベーションなど)の高くない人もいると思います。そんな時、スプリントを通じて、ジブンで事業に対して疑問を持つ、アイデアを出す、発表するといった圧倒的に前向きな取り組み(行動)をとることで、自然とジブンごと化することができます。

まとめ

スプリント数日間で全ての課題が解決することはありませんが、重要な課題に対して先延ばしすることなく、答えを得ることができるという点で、非常に優れたアプローチであり、思想だと感じています。

実際に経験してみて何より素晴らしいと思ったのは、上記のメリットを通じて、ポストスプリントと呼ばれる、スプリントの後の活動において、「ロケットダッシュ」を決めることができるところだと思っています。

「目線が揃い」、「サービス/事業の解像度が上がり」、「ジブンごと化される」ため、スプリントで取り扱うことができなかった全ての課題、やり残したこと、テストで得られた学び、これら全てを総動員して、ポストスプリントで、事業を加速させていくことができると感じています。

スプリントのアプローチや思想を実践していくためには、何より経験が大切だと思いますので、私もこれからどんどんスプリントの機会を増やしていきたいと考えています。何よりスプリントは楽しく、多様なメンバーが絡み合いながら、カオスな問題に答えを出す、この働き方がとても好きです。

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