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海外現地での新事業アイディア創出ワークショップ実践からの学び

先週1週間かけて、ブラジルにて新規事業のアイディアを創出するワークショップを実施してきました。地球の裏側まで、丸2日間かけて飛行機で移動してからの言葉も違う、文化も違う人たちとの共創は、日本で実施するものとはまた異なる性質の難しさがあります。

実施した内容には触れませんが、海外現地の子会社や関連会社、投資先などとの新規事業創出やデザイン・イノベーション研修などの関わり方は、ポスト・コロナのこれからますます増えてくると思います。この機会に学びなどをシェアしたいと思います。

北欧でのデザイン留学以後、ビジネスデザイン、組織文化醸成、デザイン・イノベーション教育などについてよく書いてきましたが、久しぶりにこのトピックで更新します。

サンパウロの街並み(東京とほぼ同じ人口の大都市です)

海外現地でワークショップをする目的

多くの場合、出張ベースでの関わり方を考えると、時間的な制約があるため効果的な時間の使い方をしたい場合が多いように思います。

そして、様々な目的があるなかで、できるだけ全ての内容を出張中に対面でできることに集中したいのではないでしょうか。例えば、新規事業や海外連携の取り組みを行う場合の目的として、

・ビジネスの視点
⇨現地でしか得られない生の顧客の声とその課題を探索したい。
⇨今後洗練させていく事業アイディアの核を作りたい。
⇨帰国後も一緒に動いていくための一連の事業モデルを固めたい。
⇨現地法人の上層部からの理解を取り付けたい。

・組織の視点
⇨現地と日本での信頼関係を向上させたい。
⇨部署間を超えた一体感を醸成したい。
⇨顧客志向や起業家精神などの文化情勢を図りたい。

・人材の視点
⇨デザイン思考やリーンスタートアップなどの手法やマインドセットの教育
⇨異文化コミュニケーションスキルの向上
などが考えられると思います。

from unsplash

これらを全てを完全に満たすことは難しいと思いますが、設計の仕方によってはワークショップによって、複数の目的に貢献すると思います。

例えば、現地の中枢を担うメンバーをチームに分けてワークショップに参加してもらい、新規事業のアイディア創出、組織力向上の研修のためのワーク内容に設計しておく。幹部の方とのコミュニケーションとしても、最終的な成果報告や顧客インタビュー、間での雑談などを通して、お互いの意思疎通を図ったり、現地企業の状況を人を通して肌で感じることができます。

そのため、10日間の出張であれば、そのうちの3日間程度をワークショップとして企画しておくことで、より生産的な出張とするという方策もあるかと考えています。もちろん、その分の準備やファシリテーションなどが必要となってきます。

では、海外でワークショップを実践する際、どのような観点から工夫するとより目的を満たす、満足度の高いものとなるかを考察します。

1. 現地の文脈に深く入り込む

出張の大きなメリットとして、海外現地の文化やライフスタイル、あるいは会社の現地顧客やパートナー、ビジネス慣習など、その土地特有のビジネス環境について深く理解することがあると思います。

ソフトウェアや製造業など、業種によってその文脈理解の仕方は様々ですがまずは現場の観察とヒアリング、企業の顧客(長期優良顧客や新規顧客など複数タイプ)、ステイクホルダー(サプライチェーンの上流や下流のプレイヤーや関連会社等)へのインタビューなどが挙げられると思います。

現地に深く潜る

このプロセスは、新規事業企画やデザイン思考、リーンスタートアップなどの手法論のなかにも、「顧客理解・共感」などの言葉でよく活用されていると思いますので、ワークショップの一部として現地メンバーと一緒に実施するのも効果的だと考えています。

特に、これまで分かったつもりになっている自社の顧客の声などをデザインリサーチの手法などを活用しながら、一歩引いた目線、好奇心の眼差しで、探索する質問などを通じて、これまでと違った視点や本質的なニーズ理解に繋げる機会にもなるかと思います。

2. 経営課題・組織状態を肌で感じる仕掛け

海外出張時にリモートでは掴みきれない、現地企業幹部の本音や組織文化、キープレイヤーなどを肌で感じるのも出張の醍醐味ではないでしょうか。

ワークショップを設計する際に、現地企業の核となるメンバーに必ず参加してもらったり、幹部へのインタビューを顧客理解の後に入れたり、ワークショップの成果物(事業アイディア、組織変革のツールetc)を報告する時間をつくって幹部に参加してもらったり。

必ず、現地企業の従業員と幹部、出張者がピラミッド関係なくバランスよく関わり合うチーム構成やワークショップのプロセスを設計することが大切だと考えています。

サンパウロの公園にて(葉っぱがデカい!)

デザイン思考などを活用した事業企画ワークショップを例に挙げると、各者異なる部署や専門を持つメンバーでチームを構成して、顧客の課題や自社の置かれた環境、事業アイディアやビジネスモデルについて発想したり、議論する中で、その話し合いを聞いていると自然と、従業員がどんなことを感じていて、会社としての課題、これから向かうべき方向性の輪郭が見えてくると思います。

その気づきが事業アイディアそのものよりも重要な学びとなるケースが多々あるように思います。だからこそ、最終的に表出してきた成果物だけではなく、その過程の中で生まれてくる気づきや課題意識など、心に残る気づきについてはシェアしたり、振り返るなどにより意図的に表出させる工夫が大切です。

3. 組織力向上のためのチーム設定

そして、もしワークショップを活用するのであれば、顧客志向やこれまでにない視点や発想方法の獲得など、「研修・教育」の要素を持たせることも、よくあると思います。

おそらく、現地企業の経営を将来担うようなコアメンバーに参加してもらったり、これから組織変革で新しい部署ができたり、文化変革を担うような、キープレイヤーを巻き込むことで得られるものがたくさんあると思います。

例えば、以下のような狙いを設定して企画することができると思います。
・部署間のコラボレーション促進
・デザイン思考やスプリントなどの手法論を直に体験する
・顧客志向型の組織への変革のきっかけとする
・自らが考え、課題を解決するようなマインドセットの醸成

サンパウロはストリートアートが有名

これも出張前から現地のステイクホルダーと議論して、どのような目的設定をするのかを話し合いつつ、必要に応じて、ワークショップの内容やその中に散りばめる教育の要素を検討することができると思います。

もちろん、ワークショップだけで全ての目的を満たそうとするよりも、柔軟に会議や食事などを活用して、全体として機能することが大切と思います。

私が聞いた話で、「海外に出張したけど、リモートで誰も来なかった」という悲しい体験があったそうで、事前に現地のステイクホルダと時間を抑えたり、興味を湧くような内容にしたり、地道な調整も大切なようです。

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出張からの時差ぼけが抜けきらない間に書いてみました。
単にワークショップをすればいいんだ、という思考に嫌悪感を感じる人も、増えているような気がしますが、海外出張時におけるワークショップには、使い方やその目的によっては生産的な時間の使い方になりうるなと私自身、気づきがありましたのでシェアさせていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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