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Artek School #1: フィンランドのサスティナブルな家具ブランドの思想・歴史を学ぶ

Artek(アルテック)というフィンランドの家具ブランドをご存知でしょうか。1935年に建築家のアルヴァ・アールトを中心に設立され、80年以上経った今でも当時から変わらないシンプルでタイムレスなデザインが、世界中で愛されています。昨年、フィンランド国外としては初めて、東京の表参道に店舗がオープンしました。

アルテックをはじめとする北欧家具の人気が高まりつつある背景には、消費して買い換えるという価値観から、本当に良いものを大切に、サスティナブルに使い続けるようになっているのだと言われています(意識ある消費文化)。

アルテックは、まさに、変わりつつある消費者が求める「良いデザイン」を、80年以上にわたり大切にしてきたブランドです。

前置きが長くなりましたが、、、

このフィンランドのブランド=アルテックについて、詳しい歴史や哲学、深いストーリーを学ぶことができる、カルチャースクール(Artek School)が本日2/13より開講されています。

第1期生は10名限定での開講で、運良く機会をいただきましたので、雑記にはなるかと思いますが、まとめと感想をシェアしていきたいと思います。

第1回目は現Artek社長のMarianne Goeblさんが来日講演してくださいました。日本マーケットを重要な位置づけと捉えていると感じます。

Artek Schoolを開講する背景

アルテックは1935年、アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールの4人の若き創業者により「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に、ヘルシンキで設立されました(公式HP)。

アルテックは設立当初から、「家具の販売」のみならず、その家具の裏にある思想や哲学の「プロパガンダ(啓蒙・教育)」を行うことを目的として、設立された、ブランドです。そのため、より詳しくその思想や哲学、歴史を学べるプログラムを開講することは、大元の目的と合致しているようです。

アルテックの根本にあるコンセプトは、「アートとテクノロジー」のフュージョン(融合)です。Artekというブランド名は Art + Technology の造語から来ているそうです。

アートとテクノロジーの融合というのは、モダニズムという考え方(ドイツのバウハウスなども同じ潮流)で、1930年代当時、台頭してきていた大量生産型の商品ではなく、アーティスティックな側面を残しつつ、できるだけ多くの商品を生産できるようにしたいという思想です。

最も印象的な学びー設立当初のマニフェスト

非常に多くの情報があったなかでも、最も印象に残ったのは、1935年の設立当時に作っていたというマニフェスト(アルテックを通じて、どんなことを成し遂げたいのかのコンセプト)です。

(スウェーデン語で書かれたもので、意外と文字ばかりな印象です。)

そのマニフェストは3つの柱から構成されています。

1.モダンアート(アーティステックとテクノロジーの融合)

2.産業とインテリア

3.プロパガンダ(思想の教育・啓蒙活動)

これら3つの柱を大切にしながら、グローバルな活動をすることを当初から考えていたそうです。

このマニフェストのコンセプトに感動したのは、設立当初(80年以上も前)から、このような壮大なコンセプトを描いていたことです。そして、少しずつ、実現していっているような感覚を覚えます。私は、このブランドに込められたアートとテクノロジーの融合という思想(モダニズム)を浸透させるといつ想いに、アルテックという非常にシンプルなブランドが、80年以上に渡り、人々から愛されて、グローバルに浸透していっている本質があるような気がしました。

(ここからは雑記メモとなります。)

当時では珍しかった女性建築家と家具デザイナー**

・1920年代において、女性が建築を勉強できるこは珍しかった。フィンランドではそれができた(アルテックの共同設立者は女性アイノ・アアルト)。

・1920年代からアアルトとアイノは仕事をしていた。その頃、家具デザイナーという職種は存在していなかった。

不治の病「結核」を癒す病院の設計**

アアルトは結核のための病院(当時、人里離れた森で隔離されていた)のデザインをしたことがあった。アアルト自身も病気になったことがあり、その経験から、常に患者をデザインの中心において、建物をできる限り、ヒーリングできるようなものにデザインした。例えば、内装はカラフルな色を使って、暗い暗い冬を乗り切る。イスは胸を開いて大きく呼吸をできるようにした。

腎臓の形をしたプールの流行**

・アアルトの設計したプールはキドニー(腎臓)の形をしたプールがたくさんある。これがアメリカで流行し、スケーターが遊ぶようになった。スケートムーブメントに貢献。これが1つのきっかけとなり、Supremeとのコラボしたスツールをデザインした。

家具はあくまでも建築との調和を目指して**

ほとんどの家具のデザインは建物のために作っていた。家具単体でデザインしたものではなかった。

アルテックの思想の原点**

Thonet Catalog 1930/31というドイツの雑誌に影響をうけた。これは工業的なデザインを取り扱っていた。でも、どこか違和感を感じていた。それはフィンランドは2/3が森林で覆われていて、人工の材料ではなく、木という材料を使おうと思った。そこから、木を曲げる実験を開始した。Lamella Bendingという熱と圧で曲げ、しなるようにする加工法。

これを用いて作られるアルテックの石は、特定の環境や用途に制限されることのない普遍的な存在。食事、勉強、ミーティングなどあらゆる用途に使用できる。

アルテックのテクノロジー**

アルテックの登場により、少し前までは一個一個家具を作ってもらう必要があって、それは非常に高価なものであったが、ある程度、量産化できるようにした。そのテクノロジーの1つに、L-LEGという施工法がある。細いスレッドを切り、熱とプレッシャーで曲げる方法で、多くの家具(現在も50の家具のうち30程度)にはL-LEGが使用されている。

木材は外でゆっくりと乾燥させることで、湿度の変化に強くなる。湿度の低いフィンランドで創られたものが日本でも長持ちするよう創られている。

美しい経年劣化**

アルテックは経年変化を楽しめるブランドで、傷とか、美しいと思う人が多い。どんどん自分の愛着がわく。自分で加工する人も多い。Artek 2nd Circleという取り組みで、昔のアルテック商品を買い戻して、修復して売りに出すということもやっている。

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終わりにー次回に向けて

今回はイントロということで、ざっくりとアルテックの歴史や思想を振り返りました。とてもオープンで、おしゃれな空間で、ゆっくりとした時間が流れる、とても豊かな時間でした。次も楽しみです。

(今日は風邪で体調が悪く、せっかく、遥々フィンランドから社長が来日していたにもかかわらず、あまり集中することができませんでした。次回は、もっと分かりやすくまとめられるよう、頑張ります。


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