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フィンランドの保育園に娘が1年間通ってみた話

2017年から2019年の春頃まで、約2年間フィンランドに留学していました。妻と娘と私の3人で、ヘルシンキの隣町にあるアアルト大学付近に住んでいて、娘は約1年間、現地の保育園に通いました。

フィンランドの幼児教育と言えば、「自由保育」が特徴的で、世界的にも賞賛されています。また、「お母さんにやさしい国ランキング」の2013年2014年では世界トップに選ばれており、常に上位に位置しています。

世界的に有名なフィンランドの保育園ではありますが、実際に保育園に通うなかで、入手できる情報が限られていたり、日本とは文化や風習が違って、とても苦労しました。

この記事では、私たちが現地で経験して学んだ、フィンランドでの保育園の探し方や園生活などについて、ご紹介します。フィンランド移住を考えている方や、フィンランドの保育・幼児教育に興味がある人に、参考となればと思います。

1.保育園の選択肢

フィンランドでは1歳半くらいからday care(保育園)に通い、小学校に入る1年ほど前からpre-school(幼稚園)に通うのが一般的だそうです。

日本にも認可保育園、認可外保育園など、いくつか種類があるように、フィンランドにも、複数の選択肢がありました。

・最も一般的な選択肢は、地方公共団体が運営するパブリックの保育園です。フィンランド語で運営する自宅から通える保育園のなかから、気に入った保育園を選びます。
・私立の保育園としては、英語での保育や幼児教育が受けられる、インターナショナルスクールや、モンテソーリ教育といわれる自発性や感性を育む教育を提供する園など、様々な園があります。
・パブリックと私立を兼ねている保育園もあります。私立として運営していた保育園が、空きがあれば、パブリックに応募した子供も預かる形式です。
・日本にはないタイプの保育園としては、保育士さんが自宅で、子供を保育する少人数制の保育園があります。

私の娘は最初、家から近いパブリックと私立を兼ねている保育園に、数ヶ月ほど通いました。その後、日本に一時帰国して戻ってからは、ヘルシンキにあるインターナショナルに通うことになりました。

パブリックのday care(保育園)関する情報は、ヘルシンキ市やエスポー市の公式ホームページを参考にしました。

2.保育園の探し方に関するスタンス

日本では待機児童問題があるように、特に都会では、必死に保育園を探しますが、フィンランドでは「余裕」をもって、保育園を探している印象がありました。どうして、余裕を持って進めることができるのかについて、私が感じたことを書きます。

パブリックの保育園の教育思想
日本の都市の場合、保育園や幼稚園の選択肢が非常に多く、思想やスタイルも園によって大きく違います。宗教系でいえば、キリスト教系、仏教系などがあり、学校法人も園によって、しつけを重視する園や、創造性を重視する園など、様々な教育思想をもっています。この選択肢が多いことで悩むこともあるのではないでしょうか。

一方、フィンランドでは、保育園や幼稚園の教育思想が揃っている印象を、持ちました。冒頭にも書いたように、フィンランド全体として、保育から学校教育に至るまで、自由と創造性を重んじています元記事)。共通して、自由保育という思想があるため、雰囲気の違いこそあれ、パブリックの保育園は、選択の多さが悩みのタネになることは少ないと感じました。つまり、どこに通ったとしても、想定と違うミスマッチが少ない気がしました。

くわえて、首都のヘルシンキであってもスペースに比較的余裕があったり、森が近くにあることから、どの園も外遊びに制限はなく、環境としても共通して、伸び伸びして楽めるように見受けられました。

待機児童はなく、家から近いところに通う
フィンランド人の保育園を探すスタンスとして、自宅から近いところに通う人が多かったです。その背景には、友人曰く、教育のレベルが整っているため、家から近いところにいくのがベストな選択肢だと考える人が多いという考え方があるそうです。

私たちも、申し込みから数ヶ月で、家から近い保育園に通い始められました。住む地域や保育園によっても多少差があると思いますが、日本のように0歳から保育園に入れないと復職できないということは無さそうでした。

共働きでなくても、保育園に行く権利がある
日本ではパブリックの保育園は、共働きであることが前提ですが、フィンランドでは、共働きでなくても、週に20時間まで預けることができます。私たちのケースでも、私が学生で妻は帯同していたので、2人とも働いてはいなかったのですが(正確には学生も働いているのと同じとみなされる)、週に20時間、保育園に通うことができました。

もし、資格勉強があったり、アルバイトをしているなどの事情があれば、申請を出して、KELA(フィンランド社会保険庁事務所)から認められれば、フルタイムで保育園に通うことができます。私たちのような外国人は、フィンランド語を学ぶというのも立派な理由になっており、フィンランド語の学校に、(たしか無料で)通うことができたと思います。人口の少ない国だからか、労働力を増やそうという思いがあるのかもしれません。

保育園に通い始めるタイミングも自由
ヨーロッパでもフランスなどの国では0歳のうちから子供を預けると聞きますが、フィンランドの場合は、基本的に、1歳半ごろから徐々に、保育園に通い始めるようです。保育園の先生から聞いたのは、小さい頃は、親との関係性(愛情)が最も大事で、いくら保育士さんが頑張ってもそこは補うことはできないと考えているからそうです。また、父親も育休をとることが日本よりも一般的であるため、2人で育休をとるなど、すぐに保育園に預けなければならない理由が少ないというのもあると思います。

3.入園までのプロセスと月謝

私たちは、保育園を探して、通うまで、どのようなプロセスをとるのか分からず、友人をたよったり、市のホームページをチェックしていました。

入園までのプロセス
・行きたい保育園をグーグルマップ、ホームページで探す
・保育園に電話をかける(何とか英語で対応してもらう)
・見学の申し込みをする(基本的に午前の外遊び中に見学する)
・申し込み用紙をもらう(パブリックの保育園の場合は、ホームページからダウンロードして市に提出。私立の場合は、園から書類をもらう。)
・パブリックの場合は決定通知が届く
・プライベートの場合は入園金などを振り込む
・慣らし保育にはいる

保育園を決めたポイント
私は、全部で5〜7箇所ほどの保育園に見学に行きました。私たちのようなフィンランド語を話せない人にも、親身になって接してくれるかどうか、保育園の雰囲気、家からの近さ、子供達が楽しそうにしているか、などを中心に見ました。最終的に、私立とパブリックを兼ねている保育園が気に入ったため、こちらに通うことにしました。

保育料金
日本と同様に年収に応じた保育料がかかります。当時、私が学生ビザで妻はその帯同でしたので、収入はなく、私たちのケースだと無料でした。パブリックの保育園では、年収が高くても数万円程度だったと記憶しています。
一方、プラベートの保育園・幼稚園ではフルタイムで通った場合は、月々15万円〜20万円程度の保育料ほどだったと記憶しています。

子育て手当について
フィンランドでは保育園に通わずに、親が子育てをしている場合は、子育て手当がもらえます。年収や子供の年齢にもよりますが、たしか数万円ほどだったと記憶しています(私たちは対象外)。仕事をしていない人は、保育園に預けることなく、自分たちで見ている人も大勢いると思いました。

4.ローカルの保育園生活について

娘が1歳半くらいから数ヶ月ほど、家から近いパブリックとプライベートの中間っぽい保育園に通ったので、園の雰囲気や特徴的な点を、ご紹介したいと思います。

慣らし保育
日本と違って、フィンランドの保育園では最初の1週間程度は、親と子供が一緒に登園しました。親にとって、この時間は大変でした。私たちはフィンランド語を話すことができず、子供たちや先生がフィンランド語で、話しかけても、全くわかりませんでした。娘にとっても、私たちが普段話してい流言葉と違う言葉であることを感じ取るようで、不安そうでした。

自由保育
子どもは自分の好きなことをするのが1番いいという思想があり、子供たちは思い思いに、自分の好きなことをやっている印象がありました。日本の園では、みんなが決まったアクティビティをするケースが多いと思いますが、フィンランドでは、1人で好きなことをしていたり、グループになって何かをしたり、自由を大切にしていました。一見、協調性がないようにも見えますが、円を作って一緒に歌を歌うなど、グループでの時間もあります。

親は積極的に、保育運営に参加
保育園に対する、依頼事項や、改善点、イベントなどについて話し合う機会が定期的に開かれていました。会合では、楽しくおしゃべりをするだけかと思いきや、とても真剣に、子供たちがどうしたら楽しく生活できるのか、もっとこういう保育にしてほしいといったことについて、話し合いをしていました。フィンランドでは、先生に任せっきりではなく、保護者と一緒になって、保育園を創りあげていくという雰囲気がありました。この参加型の姿勢については、政治や学校教育など全ての面において同様の精神を感じ、フィンランドの特徴なのだと考えています。父の日のイベントには、出勤前のお父さんたちが大勢集まり、保育士さんたちや子供たちと歌を歌って、朝食をとるというものがありました。私もプレゼントをいただきました。

雨でも雪でも必ず外遊び
驚いたことといえば、雨だろうが、雪だろうが、マイナス10度の気温だろうが、必ず、外で遊ぶということです。午前中の1時間から2時間ほどは外で遊ぶ時間と決まっていて、園にある公園や、近くの森に遊びに行きました。フィンランドだけあって、森にみんなで遊びに行くことも多く、落ち葉を拾ってきて、紙に貼り付けたアートを作ったり、散策をしたり、楽しんでいるように思いました。

馴染むことができず号泣...そして退園
娘の場合、母子分離の初めての保育がフィンランドだったこともあり、保育園に慣れるのに時間がかかりました。1ヶ月以上にわたり、毎日延々と泣き続ける我が子。午前の2時間半の間中、泣き続け、先生方も1人の子供に、付きっきりでいるのに疲れた様子でした。ありがとうございました、、
2ヶ月ほどたち、フィンランド語での指示(トイレや外に行くなど)にも慣れて、気付けば、簡単なフィンランド語を発していました。しかし、このタイミングで、日本に一時帰国することとなり、戻ってくると、完全にまた、一からの慣らし保育が始まりました。また、延々と泣き続ける我が子を見てさすがに、子供にも先生にも申し訳なくなり、退園することにしました。

5.インターナショナルスクールの雰囲気

ローカルの保育園を退園したあとは、別の保育園を探すことになりました。

検討した保育園
私も英語であれば先生とより深いコミュニケーションが取れるということもあり、インターナショナルな保育園を探しました。モンテソーリ教育の保育園を検討したり、色々見た結果、最終的に、知り合いの日本人の子供が通うヘルシンキの保育園に行くことにしました。

インターナショナル&ダイバーシティ
保育士さんたちもフィンランドだけでなく、アジアやヨーロッパからの先生たちがいました。子供たちの国籍も様々でしたので、子どもたちは家では、別の言語、保育園では英語というバイリンガルの人たちが多かったです。

すんなり慣れることができてホッとしました
こちらの保育園も前回と同様に、泣き続けたらどうしようと考えていましたが、1週間も経たないうちに慣れることができました。私も保育士さんと英語でコミュニケーションをとることができたため、子供も安心したのかもしれません。あるいは、他の子も色んな国から来ており、英語が分からない事など、共通点が多く、仲間意識があったのかもしれません。いずれにしても、楽しく生活ができたようでホッとしました。

まとめ

フィンランドの保育園と日本の保育園については、異なる点が多々ありましたが、子供の環境への適用はとても早くあっという間に、現地の言葉を理解したり、目覚ましい成長を遂げていました。むしろ、私がもっとフィンランド語を話すことができれば、よりスムーズに対応することができたと思います。思いがけず良かった点としては、日本人以外の子どもでも、積極的に一緒に遊ぼうとするなど、国籍に対する垣根がなく、多様性を受け入れるベースができたことでした。冒頭にも書いたように、フィンランドの教育思想は自由や自発性、創造性を大切にするもので、ここに共感する親にとっては、フィンランドでの保育はとてもおススメです。

Photo by Anna Samoylova on Unsplash

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