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アメリカ化すると日本の精神疾患患者は増えるのか?

(画像はChatGPTちゃんが作ってくれた)

はじめに

精神科医YouTuberで有名なM氏がこんなようなことを言っていた。

アメリカでは5人に一人がうつ病になっている。日本も今後どんどんアメリカ化していくことは確実。そうなると精神疾患は増えるだろう。

(どの動画で言っていたか忘れたので正確な表現は違うかもです。要はアメリカ化するから精神疾患は増えるよねということ。)

私も精神疾患は減るよりむしろ増えるだろうとは思うのだけど、本当にそうなのか?データで簡単に確認してみた。

アメリカ化するとは?

おそらく資本主義が加速していくことを指しているだと思う。

  • もっと競争社会になる

  • 格差社会になる

  • 個人主義になる

  • IT化がさらに進む

みたいなことかと。

資本主義が加速すると精神疾患は増える?

実際にアメリカでは精神疾患の有病率が増えているとのこと。

約23%が精神疾患にかかったことがあり、08年から5pt増加。

過去1年間に精神疾患にかかったことがある成人(18歳以上)は増加傾向にある。

Percent of adults who had mental illness in the past year, 2008-2021
出典: Substance Abuse and Mental Health Services Administration

特に若い世代での増加が顕著である。

18-25歳においては15ptも増加している。

Percent of adults who had mental illness in the past year, 2008-2021
出典: Substance Abuse and Mental Health Services Administration

アメリカの所得の格差は広がっている。

アメリカ化(資本主義の加速)を表す指標は色々とあると思うが、今回はジニ係数を確認してみた。

ジニ係数の値は0から1の間をとり、係数が0に近づくほど所得格差が小さく、1に近づくほど所得格差が拡大していることを示す。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/si/A02571.html

ジニ係数を見ると、アメリカの所得の格差は拡大しているといえる。

Gini Ratios for Households, by Race and Hispanic Origin of Householder
https://www.census.gov/data/tables/time-series/demo/income-poverty/historical-income-inequality.html

所得格差と精神疾患有病率には正の相関がある。

所得格差が拡大すると、精神疾患の有病率も上昇する傾向にあるよう。

相関係数 ≒ 0.807
p値 ≒ 0.00049

X軸:ジニ係数、Y軸:精神疾患有病率

まとめ

以上から、アメリカ化すると精神疾患が増えるというのはたぶん正しい。

「たぶん」と言っているのは、ご存知の通り相関関係というのは因果関係ではないので、所得格差の拡大が精神疾患増加の原因になっているということは言い切れないからである。

まぁとはいえ、脳に負担がかかることが精神疾患の大きな原因であることを考えると、先進国になればなるほど頭脳労働が増えるし、貧富の差も広がるので、精神疾患が増えるのだろうというのは何となく理解ができる。

ただ、以下の点についてはより深く考えていく必要があるとは思う。

日本は完全にアメリカのようになるのか?

これについては文化的背景も違うし、アメリカのように所得の格差が広がるというよりは、全体的に所得が下がっていく可能性もあるので、全く同じ状態になるとは言えない。

資本主義が加速するとどの国でも精神疾患が増えるのか?

今回はアメリカを例に挙げたが、ヨーロッパ諸国など、その他の先進国ではどうなっているかわからないので、資本主義の加速や先進国化そのものが悪であるとは言い切れない。
福祉制度の内容によって結果は変わるかもしれない。

そもそも精神疾患が増えるのはダメなのか?

アメリカのような先進国で精神疾患が増加するのは、病気の症状を持つ人自体が増えているのもあるかもしれないが、発展途上国に比べて精神疾患の知識を啓蒙できているから、というのもあるだろう。
(若い世代の方が有病率が増加しているのもそれが理由かも?)
そこまで重い症状でなくても、早期に病院を受診して治療に繋がっているという可能性もあるので、精神疾患の有病率の増加が必ずしも悲観すべきものではないかもしれない。

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