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手作りお菓子と音楽に癒される隠れ家カフェ|きっさ 音

あなたは「岩手」と聞いて、何を思い浮かべるだろう。

わたしは岩手出身で、岩手の自然や人の温かさが好きだ。おいしい物もたくさんあるし、静かで澄んだ空気も好き。

ちょっと地味で華やかさはないけれど、居心地がいい。2年前、岩手・盛岡にそんな岩手のイメージにぴったりの喫茶店をみつけた。

お店の名前は、“きっさ 音”。姉妹で経営されている、小さなカフェ。

きっさ 音が大好きで、居心地のよさはどこから生まれているのか知りたくて、個人的に取材をした。お店への思いや続けるための心構えを聞く中で、“心地よく”過ごすために大事なことは何かを考えさせてくれた。

手作りお菓子と音楽がある、心地いいカフェとの出会い

2年前の夏に偶然見つけたお店が、岩手・盛岡にあるカフェ、きっさ 音。

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こじんまりとした隠れ家的お店で、知らない人はなかなか通らないような場所にある。

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店に入ると、ほとんどが一人で来ているお客さんのようだった。たくさんの本が並んでいるのが目に入り、カウンターに座る。

頼んだのは、夏季限定の海のクリームソーダと日替わりスイーツ。スイーツは数種類の中から選ぶことができる。

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海のクリームソーダは美しい青色。しゅわしゅわ弾ける炭酸と溶けていくバニラが混ざり合う。

カウンターの前の本棚には漫画やエッセイなど、手に取りやすい本が並ぶ。

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クリームソーダを飲みながら漫画に夢中になっていると、夏の暑さや騒がしさを忘れるほど、涼しくて静かで心地よかった。

店内に流れる軽やかな音楽と、お客さんそれぞれが一人の時間を楽しんでいる空気。カウンターの奥から聞こえる、カチャカチャとお皿を準備する音すら、BGMのような。

つい長居してしまった。お店を出ると、まるで心がリセットされたように気持ちはすっきり。忙しい日々の中で溜まった余計な力が、ほどけていくようだった。それから、きっさ音は帰省のたびに訪れる大好きなお店に。

この居心地の良さはどうやって生まれているのか気になり、今回店主にお話を伺ってきた。

姉妹でカフェを開業

きっさ 音は姉妹で経営している“手作りお菓子と音楽”がコンセプトのお店。店主は姉の菊地美咲さん。

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学生時代に手作りお菓子を提供する喫茶店でアルバイトをしていた時から、自分でもいつかお店を出してみたいと思ったそうだ。そして29歳で開業し、2017年の春にきっさ 音を始めた。

——お店を開いたのは2017年ですよね。

「はい、お店を開くのはもう少し先の予定だったんですけど。40、50歳くらいかなあと。」

——早まったのはなぜだったんですか?

「友達にも岩手でお店を開いた人がいて、『やりたいと思った時にやったほうがいいよ』と言われて、この先何があるか分からないし、いつ病気や災害があるかも分からないので、やってみようと。居抜き店舗なら開業資金もそんなにかからないと知って、踏み切ることができました。」

やると決めてからは、一気にことが進んだそうだ。

「もともと盛岡が好きで、特に中津川がすごく好きで。お店を開く前も川を見に来ていました。できればこの川沿いがいいなと思って、毎日ネットで調べていた時にここが空いて。オープンまでは2か月くらいで、一気に決まった感じでしたね。内装もほとんど変えずにこのまま。築50年くらいなんですけど、この木の感じも気に入っています。」

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自分の好きなものを集める

——お店を始める時、空間づくりで何かこだわったことはありますか。

「居心地のいい空間にしたいというのはすごくありました。自分自身、喫茶店はおしゃべりしに行く場所というより、一人の空間を大事にする場所というイメージがあったので、そこを意識して。学生時代からカフェ巡りが好きで、暇さえあればいろんな店へ行って本を読んだりしてましたね。この店にある本もほとんど家から持ってきたものです。」

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——なるほど。初めて来た時、本を選ぶ時間も楽しかったです。この中で気に入っている本ってありますか。

「おすすめは片桐はいりとか、益田ミリですね。活字も好きなんですけど、活字を追うのも疲れる時があるので、読みやすいエッセイとか漫画が多いかも。お客さんも結構手に取って読んでくれています。」

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気を張らず、楽しく

——流れている音楽もとても心地良かったです。

「流している音楽は、耳馴染みの良い、自分の好きな音楽を流してます。ジャズとかクラシックとか、ボサノバとか。雨の日は気分も上がらないと思うので、クラシックにしてみたり、晴れの日は元気のいい曲をかけたり。」

——へえ。天気によって曲が変わるの、面白いですね。お菓子作りはどうやって学んだんですか?

「喫茶店でバイトしていた時に、お菓子作りの基礎は教わりました。毎週来ても飽きないように日替わりでお菓子を作ったり、旬のフルーツを使ったりするようにしています。あとはパティシエではないので、そこまで気を張って作っていないというか。気楽に、おいしく作れればいいなと思ってます。作るものもその日の気分で決めてますね。」

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これだ、と思った。このゆるやかな感じ。

肩肘張っていなくて、人との距離感をちょうど良く保っている、その感じがそのままお店のやさしい空気につながっている。

だから、お客さんも力を抜いてゆったりとくつろげるのだろう。

人とのつながりを大事に

お客さんの声に耳を傾けながら、空間づくりをすることもあるという。

「カウンター席はお店の人の目線が気になって、自分があまり好きではないので、カウンターと厨房の間に本棚を置いていたんです。でもお客さんから『本棚が一段だと目線が気になる』って声があって、今は二段にして、より目線が気にならないようにしてますね。

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——そういう心づかい、ありがたいです。アクセサリーの販売やイベントもされてますよね。

「アクセサリーや小物はハンドメイドの物を置いています。小物は特別支援学校の生徒さんが作ったもの。店を始める前に特別支援学校で働いていたので、支援学校の方とはつながりを持ちたいという思いがありました。半年に一回は障がい児の子にコンサートもしてもらっています。」

——人とのつながりを大事にしつつ、ほどよい距離感を保っているからこそ、この心地よさが生まれているんですね。

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——最後に、これからどういうお店にしていきたいですか。

「手作りお菓子のレパートリーを増やして、もう少し音楽を身近に感じてもらえるようなお店にしたいです。常連さんからも『手作りお菓子は定着してきたけど、音楽がもったいない』と言われたので、今後は音楽を頑張りたいですね。夕方になるとピアノの演奏してます、みたいな感じで定着できたらな、と。これからもお客さんにくつろいでもらえる空間を作っていきたいです。」

心地よく過ごすために

きっさ 音の心地よさは、自分の好きなものに囲まれながらも、人とのつながりを大事にすることで生まれていた。

ちょうど良い距離を保ちながら、軽やかに人とコミュニケーションをとる。余計な力を抜いて、楽しむ。忙しい日々の中で忘れがちなことを、取材を通して思い出させてもらった。

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帰ってきた時にはいつも、岩手の自然を感じながら歩いて、また きっさ音に来たくなる。そんな場所があることが心の支えになっている。ここに来ればきっと、入りすぎた力をふっとゆるめてくれるから。

▼きっさ 音
・岩手県盛岡市本町通1-7-36
・平日:11:00~19:00/土日祝:11:00~17:00
・日曜他休/軽食・スイーツ共になくなり次第閉店

インスタグラムも素敵なのでぜひ!

きっさ音インスタグラム
https://www.instagram.com/kissaoto



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