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食べて生きる。

「たーくさんなってるよ」

祖母の声はいつも明るい。

ちょっとした冒険気分で畑へ向かう。キュウリの蔓でできたアーチをくぐり抜けると、一面に広がる緑。ナス、ピーマン、人参など、収穫時期を迎えた野菜がたっぷり実っていた。

もうすぐ80歳になる祖母は、今でも朝早くから夕方まで畑仕事をしている。

私の好きなトマトも、立派な実をつけていた。わぁ、と声をあげて近づくと、祖母が私の手に真っ赤に熟れたトマトをのせてくれた。

「こっちはフルーツトマト、甘いよう」

祖母は日焼けした顔をやわらかく緩ませながら、次々とトマトを手渡す。

手のひらの中のトマトは、今にも弾けそうなほど瑞々しく光っている。まるで命が宿っているようだ。

「おばあちゃん、野菜育てるの大変じゃないの?」

「大変じゃないよ、自分で食べるものだもの」

そう誇らしげに話す祖母は、育てたトマトのようにたくましく、瑞々しい笑顔をしていた。

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