昼下がりのチャーハン
休日のお昼にチャーハンを作った。一人暮らしを始めてから、作ったことなんてあっただろうか。それくらい、久々に作った気がする。前にテレビで観た、パラパラのチャーハンができるレシピを試してみよう!と思ったのだ。
レシピはうろ覚えだったが、とりあえず作ってみる。まずベーコンがカリッとするまで焼いて、ご飯と卵を投入。ポイントは、フライパンに入れる前に、ご飯と生の卵を混ぜておくこと。ご飯と卵が絡んでべちゃっと、いや、しっとりとするので、本当にパラパラになるのか少し心配になった。マヨネーズを隠し味に、中華だし、醤油と塩胡椒で味付けをして、炒めたら完成である。
なんて簡単。そして、ほんとうにパラパラだ。香ばしい匂いが漂って、鼻の奥を刺激する。
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私が小さい頃、休日のお昼にはチャーハンや、焼きそばがよく出てきた。午前中に洗濯やら掃除やらをおえた母が、ほぼ休む暇もなく昼食づくりに取り掛かる。台所に立ち、冷蔵庫の中を見てさっと作れるものを決める。私はその様子を横目に、テレビを見たり自分のことをしたりしながら、特に手伝いもしなかった。
今ならその頃の自分に「ちょっと手伝いなよー」と言うと思う。誰かがご飯を作ってくれるありがたみを知ったから。それに、誰かと一緒に料理をするのは楽しいと知ったからだ。でもその頃は、誰かにご飯を作ってもらうありがたみも、一緒に料理をする楽しさも知らなかった。
テーブルの上に置かれた、できたてのチャーハンを当たり前のように食べる。もちろんおいしい。当時はあまり意識しなかったけれど、休日の昼ごはんが好きだった。
チャーハンも、焼きそばも、夏のそうめんや冷やし中華、寒くなってきた時期のうどんも。休日の昼下がりはまったりとした空気が流れていて、やさしい光に包まれているようだった。ちゃんと記憶の中にある。おいしくて幸せな記憶。
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今では実家に帰るのは年に数回。友達との予定で家でご飯を食べないこともあるし、家族と出かけたついでに外食になることもある。家で食べる時は、母が張り切ってごちそうを作ってくれるし、今ではよくいっしょに夕食を作るようになった。「手際が悪い」とか、「そんなことも知らないの」などと言われながら。これはこれで楽しいんだけれど、出来上がったテーブルいっぱいのごちそうの中に、チャーハンはない。
当時はなんとも思わずに食べていたが、今になって、母が毎日作ってくれた料理には、きちんと愛情がこもっていたのだと気づく。そうして十数年前の愛情を、今になって感じている。
そんなことを思いながら、一人で作り一人で食べるチャーハンを口に運ぶ。もしも私に子どもができたら、休日のお昼に作ってみよう。その子が大人になった時に思い出せるように、たくさん。
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