絶対音感とはなんぞや。②

■復習・私の「絶対音感」はこんな感じ

 前回の復習、と思ったのですが、たまたま見つけたこの動画が一番わかりやすかったのでまずはこちらから。

私の日常も、おおよそこんな感じです。こうは聴こえるけど、生活してて辛いこともそんなにない(というか慣れてしまっている)、ゆるーい絶対音感。

■ドレミファインバータの音が好き。

 最近では見かけなくなったようですが、京浜急行の一部車両には発車するときに音階が鳴る「ドレミファインバータ」がついているものがありました。私が上京して初めて品川駅に降り立った時、駅でクラリネットかソプラノサックスを吹いている人でもいるのか、さすが東京ファンキーやな!と勘違い(笑)完全なるおのぼりさんでした。

ちなみに、この音は、ファーソラシ♭ドレミファソォーーーーー⤴ε≡🚃🚃🚃🚃と聴こえるので、私の中では「ファソラシ♭インバータ」です。

名付けた人はきっと「移動ド型」の音感をお持ちなのでしょうね!(笑)

ただ、実を言うと、これは「絶対音感」のたった一部にすぎません。

■「音感」にもさまざまな精度がある

 以前、テレビ番組「嵐にしやがれ」で「SEKAI NO OWARI」のSaoriさんが「絶対音感」の特技があるということで、いくつか環境音を鳴らし即興で弾けるかどうかを試していました。ところが、Twitter上では「私だってできる」「相対音感では?」といった否定的な発言も多く見られ、改めて「絶対音感」の定義の曖昧さと一般的なイメージの違いを感じました。

 映像と辞書的意味を照らし合わせた限りでは、最初の1音目を基準音なしに当てることができているので、絶対音感に当てはまるのではと思います。ただ、絶対音感を持つ人の中には後に相対音感を獲得している人もいます。番組のように何問も連続して問題に臨むと、前の音で基準音をつかんで相対音感で答えている場合もあります。

 そもそも、番組も「絶対音感」というよりも聴いた音をすぐ鍵盤で表現できるということを言いたかったんだろうなと思いますし、番組とご本人との認識にずれがあったのかなと思うので、やはり、ご本人の音感がどうとか言うのはちょっと違うかなぁ…と私は思うんですけどね。ごにょごにょ。

 ただ、Saoriさんが「黒鍵が苦手」「絶対音感にも精度がある」と仰っていたのは、私はよく分かります。絶対音感でも生活に支障ない程度であれば、得手不得手があると思います。いずれにせよ、「絶対音感=超人的」という世間一般のイメージと現実は意外とズレているのかなーと思います。なんたって伝わりづらいですものね…。

■高性能な相対音感と、ゆるーい絶対音感の違い

 また別の方のケースを紹介します。偶然にも、同じ番組の別の回なのですが、バイオリニストの葉加瀬太郎さんも自身の音感について触れていました。葉加瀬さんは「厳密には高性能な相対音感」とご自分の音感を分析されているそうです。4歳からヴァイオリンを習い、毎日実音ラ(A)の音でチューニングしていたため、その音が基準音として脳に記憶されていると。彼自身は、聴こえた音と自分の中にある基準音を瞬時に比べ音の幅を高速に計算しているという感覚なのだそうです。

 基準音のみは絶対音感、それ以外はとても正確な相対音感。裏を返せば、葉加瀬さんの認識では、絶対音感ならば全ての音を記憶している、ということになりますね。葉加瀬さんの説明を聞いて私も一瞬「自分もそうなのかな…?」と思いましたが、私のゆるーい絶対音感でも決定的に違うなと感じたのは「音そのものの認識の仕方」です。

 私の頭の中にはドから順番に12個、音が上がれば上がるほど入り口が狭くなっていく箱があり、聴こえた音がどの箱に入るかで音名を判断しているという説明が一番しっくり来ます。Saoriさんの「黒鍵が苦手」というのは、この箱の数の違いなのかもしれないと仮定すると、自ずと精度の差がありうることも説明が付きます。あくまで、私の中では。

■音感の分類

 さて、今回音感のことを調べるにあたり、たくきよしみつさんという方の分類に出会いました。今までで一番しっくりくる内容だったので、ご紹介したいと思います。

 音感は経験や訓練によるものが大きい割に、表現方法にはそれほど反映されないため、思った以上に千差万別です。それにも関わらず「相対音感」と「絶対音感」の区別だけで語るにはちょっとざっくりしすぎているのが正直な気持ちです。それぞれにもっと細かい分類があるということは、特番一本分に値するくらい、調査し甲斐があるのでは?と思います。まだよく分かっていないことも多いですからね。

 以下は、たくきさんの分類に少し私の認識を少し織り交ぜた、音感の分類図です。

参考)たくきよしみつ『あなたの音感は何型か?-絶対音感の誤解-』(amazon kindle版、1998年)

それぞれの詳しい説明については、こちらのURLでご覧いただきたいと思います。http://takuki.com/onkangata.html

◎人間音叉型=聞いてすぐどの音か分かる。ドとド#の間などドレミで表現できない半端な音が気持ち悪い、違和感を感じる。
◎四捨五入型=半端な音を気持ち悪いと思わないどころか、頭の中で四捨五入してドレミで言ったりする。
◎基準音確認型=基準音で正確な音を確認すれば、音程が分かる。
◎非メロディー型=そもそもドレミとして感じない、または変換できない。
◎固定ド型=ドレミの表現が実音と同じ。
◎移動ド型=調が変わっても、全てドレミで表現する。

これだけでもたくさんのパターンがあることが分かりますね。みなさんはどれに当てはまるでしょうか?

■私は、残念な絶対音感。

 このカテゴリでいくと、私は「絶対音感ー人間音叉型ー実音固定ド型」です。ただ「準絶対音感―四捨五入型―実音固定ド型」でもあります。

 今でも自分で残念だなと思うのが、家のアップライトピアノの音を記憶してしまったことなんです。両親には絶対音感はないし、恥ずかしながら横着して何年も調律に出していない状態で練習を続けていたので、私の中の基準音そのものが半半音~半半半音くらいずれているのです。ですので、箱も完璧ではなく、多少修正が入っているのか、そもそも許容範囲があるのか、私の音感がこの分類のどれかに完全に合致するわけではないのです。また、幼い頃は楽器ばかり演奏しており、歌は大分後から練習することになったからなのか、歌うときには少し背伸びをするような感覚で、私の中にある音よりわずかに高めに出すようにしています。これは完全に相対音感を使っています。このワザをいったいいつ身に付けたのかすら、自分ではもうわかりませんが…。

 ややこしくなってきました。客観的には、Hzで言えば「絶対」ではなく、多少の許容範囲があることになるので、四捨五入型と言うべきところもあるのかもしれません。このように、特殊な、へんてこりんなケースが他にもたくさんあるのでは?と思います。

■終わりに。

 もう一度言いますが、絶対音感、相対音感の違いや分類を並べたからと言って、誰がすごいわけでもありません。むしろ、一般型の方は特に、演奏者の感情とか、その場の空気とか、歌詞の内容とかまで、実に総合的に感じ取ってらっしゃて、私はできない楽しみ方なので、大変羨ましく思います。

 同じ音でも人によって全然違う聞こえ方をするということを知ると、きっと、音楽を作る事の難しさにも繋がってくると思います。逆に言えば、作り手がこの違いをマーケティングのように分析して、特定の層に響くような新たなセンスを生み出す人がいてもおかしくないな、とも思います。現に、今のJ-POPが昔の曲がなぜ心地よいのかを研究し、取り入れ始めていますから。

 というわけで。音の感覚は本当に千差万別で、未知の領域だ!ということをお伝えして、終わりたいと思います。

P.S.
もし、私の音感はこんな感じ!というのがありましたら興味があるのでぜひ教えてください^^

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