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なんのために


昨日、何ヶ月かぶりに18時台に会社を出た。

ここ何ヶ月も21時や22時に会社を出て、帰ってからも夜中まで仕事をする毎日で、不思議なことにやってもやっても仕事はちっとも片付かない。


だから、金曜日くらい全部投げ出して早く帰ろうと思ってネイルの予約を19時に入れた。18時半に強制退勤だ。


ばたばたと土日にやる仕事の資料をバッグに押し込んで、ちょっとルンルンしながら帰り支度をして席を立った。



「お先に失礼します」そう言って斜め前のデスクの先輩に目を向けた瞬間、私は一瞬フリーズしてしまった。



泣いていた。


キーボードを打ちながら必死に堪えようとしていたけれど、涙が流れてしまっていた。


見て見ぬふりなんてできなくて、すぐに駆け寄って大丈夫ですかと聞いた。大丈夫なわけないなんて百も承知だったけれど、それしか出てこなかった。


先輩は無理やり笑顔を作って、大丈夫、本当に大丈夫だから、と言って私を遠ざけた。誰が見ても大丈夫じゃないのに、私はそれ以上何も言えず先輩のその言葉を飲み込んだ。


そのまま会社を出て、ネイルをして、家に帰ってごはんを食べて、いつもよりも何時間も早く眠りについた。




今朝目が覚めてすぐに昨日の先輩のことが頭に浮かんで、ボロボロ泣いてしまった。やけに身に覚えのある姿だったから。


数ヶ月前の私だった。


やってもやっても終わらない仕事、どれだけ頑張っても増えない数字、仕事ができない自分、上司に正論をぶつけられる時間、会社という空間、何もかもが辛かった。

疲弊しきっているとき、パソコンに向かいながら突然涙が出てしまうことがよくあった。

その瞬間は本当にふいにやって来て、ああ、来る、そう思った時にはもう涙はこぼれ落ちそうになっている。誰にも見られないように必死に堪えて、でもたまに堪えきれなくて。


最近はいろんなことを諦めるようになって、そうしたらあの現象は起こらなくなった。でも次またいつ来るかは分からないし、きっとすぐそこにあると思う。



昨日の先輩はまさにそれだった。他人のその瞬間を私は見てしまった。


先輩とはいつも、仕事辛いよね、早く辞めたいよね、という話をする。私が極限まですり減って突然泣き出すときは、何も言わずに抱きしめてくれる。

なのに私は、先輩を抱きしめてあげられなかった。




先輩、私たちはなんのために、こんなに必死に耐えているんですかね。辛すぎますよね。ちっとも幸せじゃないですよね。


辞めていく人たちに小さなメッセージカードを何枚も書きながら、なんで私たちは、辞めますって言えないんですかね。


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