クラシック音楽がHIPHOPと出会う時代

「人種差別がないに越したことはないけど、ある意味感謝してるよ。差別があるおかげで、そいつの正体が何なのか暴いてやろうっていう目標ができるし。自分がステージでニコニコしているのは、ヴァイオリンはこういうものとか、音楽はこういうものっていう見方だけじゃなく、黒人はこういうことしかできないだろうって皆が考えてることを完全にブッ壊してやってるからなんだ。」
参照:http://performermag.com/new-music-and-video/interviews-and-features/black-violin-the-performer-cover-story/

フロリダ出身のヴァイオリン × ヴィオラユニット‟Black Violin”は、クラシック畑出身の黒人2人組。クラシックとヒップホップを組み合わせた独自の世界観で、自分たちの存在の可能性を追求し続けています。

先日はクラシックとポップスをミックスする愉快なオッサングループ、Piano Guysを紹介しましたので、ジャンル横断型ミュージシャン第2弾ということでご紹介。

動画の最初に弾いているのは、音楽の父・J.S.バッハの「ブランデンブルク協奏曲第3番」のアレンジですね。もともとは明るい舞曲ですが、同じコード進行の暗い曲調にホットなビートを刻むだけで、こんなにもクールになるんだぜ。
原曲:https://www.youtube.com/watch?v=QLj_gMBqHX8



‟バッハはその時代のHIPHOPプロデューサーだと思う。”
参照:https://www.pbs.org/newshour/show/black-violin-wants-to-break-your-classical-music-stereotypes

ヴィオラのウィル・Bが言うように、バッハの時代の作曲家たちは、教会のミサや貴族の舞踏会のために曲を書いて生計を立てながら、ちょくちょく市民向けの音楽会を開き、一般ピーポーがノリやすい曲も書いています(バッハの創作意欲を多いに刺激したといわれるのが、ブクステフーデというめちゃくちゃカリスマちっくなオルガニストの主宰する、アーベントムジーク《夕べの音楽》という市民向けの催しでしたーつまりフェス)。

この音楽会には作曲家たちのパリピ仲間も召喚され、教会の中じゃできないブッとんだ音楽が試されたり、いわゆるジプシーの音楽隊も出入りして、ほとんど即興で音楽が演奏されることもありました。そうして楽譜に残されている作品の一部が「舞曲」や「協奏曲」と呼ばれる類で、そんな風に訳されるとなんだか一気にエレガントな気分ですが、つまりパリピ(貴族や商人や農民)がクラブ(教会の庭)でアガれる(↑↑)音楽ということです。

そんなこんなで(?)、どんな音楽も根っこのところでは同じバイブスを持っているわけで、ジャンルを越えてのコラボはだからこそ可能なのであります。

最新アルバム『偏見』では、白人警察による黒人少年銃殺事件を象徴する「フード」のイメージが登場するMVで、「黒人がクラシック音楽をやること」の歴史的意味を問いかけ始めた彼ら。演奏もデビュー当時のぎこちなさが取れ(上手くなった?)、より訴えかけるグルーヴィな感じに。ますます目が離せないんだぜ。
MV:https://www.youtube.com/watch?v=WYerKidQGcc

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