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蟹座の蟹座による蟹座のための石岡瑛子展

石岡瑛子展。

想像をはるかにとびこえてくる素晴らしさでした。

入場してからずっと寒気がするから体調崩したか…?と思ったら、
感動と興奮で鳥肌が立ち続けていただけみたいでした。

昔の広告ポスターってなんでいつもあんなに力強さを感じるんだろう。

ポスターの力強さもすごいのですが、その指示書がもうとにかくすごい。

ここの陰影をもっととか、平たく言うと細かい、なんだけど、そこまでこだわるのか…!と。

実は私の東京での師匠のような方が、石岡さんのアシスタントをやっていたことがあって。お手紙とかも細かく指示されたというお話を伺ったのを思い出した。

私も何かを作る時のこだわりにはいつもこの石岡さんの話を持ち出している。

適当にやるのもいいけど、そういう確固たるこだわりを持つ人と仕事する時、それでいいの?って、人や、自分に問いかける。

そのポスターからの導入、また会場にずっと響き渡る石岡さんの肉声によって、この人は「血や、涙や、汗をデザインする」ことに命をかけていたんだなということがひしひしと伝わってくる。


最近、デザインは言語能力だなとよく考えている。

デザイナーという職業の人でも文脈を理解できない人もたくさんいたし、やはり文章能力が高いデザイナーさんはシンプルで素敵なデザインを持ってきてくれる。(感覚でいうと、いい美容師にも近い。こちらのオーダーを伝えるとそれをデザインしてくれる)

石岡さんのポスター広告には、デザインとしての美しさと、時空を超えたメッセージが共存している。

三陽商会のポスターで、女性のボディビルダーを使って、男性らしさと女性らしさの垣根をぶっ飛ばしてくるのとか、いやー、すごい。すごくないですか。

その日本での広告の時代から、アメリカで映画や舞台美術の仕事が増えてくる。広告の2次元のポスターのデザインへの執着は、3次元の衣装や美術になっても変わらない。どころか、より立体にすることで大変になっていくはずなんだけど、一切の妥協なし!!

映像で見ているときも素晴らしかったけど、生で衣装を見た時のクオリティの高さ。

衣装と、実際に人が着てる服って結構クオリティに差があると思うんです。衣装は目立つことや、普段着ないという前提で、遠くから見たり、映像で見るというものだから、わりと生で近くで見ると雑な作りなのもあるし、着物とかドレスはそれで生活するから、ディテールが全然違う。目的が違うから当たり前なんだけど。

でも石岡さんの衣装はそれが両立してる。素材感とかもすごい繊細だし、でも衣装としての華もしっかりある。一番近いのでいうと、皇室とか王室のドレスを見た時の感覚に近いような。

いや、衣装さんからしたら、
そこまでこだわるのおおおおおうつんないよおおおおおお
ってとこだと思う。

そういうところまで見応えがあるので、ぜひ行ってみてください。


終わらないよ。

MISHIMAについては、もう見てみたくてたまらないのだけど、作品についてでなく、それをとりまく日本社会への失望によって、日本を完全に離れる決意の一端になったんだって。


この辺で、ふとね、

この人、蟹座っぽくね?

って思い始めた。

なんかこの手放し方、すごく親しみがあるし、既視感がある。

地下の展示に降りたところにある年表に、7月12日生まれと書いてあった。

ぎゃああきたあああ。

自分のテリトリー(甲羅)の中は徹底管理。中は柔らかく、外は硬い。大事なものは命をかけて守るしめちゃめちゃ厳しいけど、それ以外はスルー。

血と汗と涙をデザインしようとするっていうその考えがなんとも蟹座だなあと思ってしまったのです。

あ、占いとか嫌いな方もいるかもしれないので、補足すると、蟹座だから石岡さんがすごいわけではないのです。ただ、私が直感的に感じ取った、そのデザインにおける姿勢や、手離し方がすごく、占星術でよく言われる蟹座の特徴に当てはまっていて、本当に蟹座だったので、嬉しくなってしまったのでした。

てゆーか私も蟹座なんですよそして7月11日生まれなんですよ。単純になんか嬉しいじゃないですか!!

自分の細かいとことか、人に対して、なんでこんなことまで指示してるんだろう、もっとゆるくやればいいじゃんとか、思うのです。よく。常に。いつも。

でもそうでもしても守りたいものがあって、そしてたぶんそれは不要不急で。もしかしたら不要不急の世界の中でもさらにうるさいって思われてしまうかもしれない。

でもそのために生きていいんだって思えたことが本当によかった。


もうひとつ。

石岡さんはやはり、「素材」「物質」の人なんだと感じた。ポスターの指示もすごく素材感にこだわっていたように見えたし、衣装の繊細さを見れば、それはすぐにわかる。

また占星術の話であれなんだけど、産業革命から長らく続いた「土の時代」が2020年で終わる。土の時代は資本主義の時代で、物質の時代。

これから始まる「風の時代」は、思想や精神の時代。

石岡さんが亡くなったのは2012年。震災があってSNSでのつながりが本格的に爆発的に広がっていった頃。


展示最後の方のビョークのMVを見た時に、正直、物質以外でなんでもできてしまう現代で、この方は何を作るんだろうと思った。

紙のポスターも衣装も美術もすべて、自分の考えたことを物質にするための戦い。

もちろん、CGでも素晴らしいものを見せてくれたんだと思うけど、やはり、物質の人だったんだろうなと。

世の中に多大な影響を与えるアーティストは、時代とともにあるんだなと思う。

同時に、そんな人が風の時代に生きていたら、何を作ったのかもすごく知りたい。

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そんなことを考えながら、帰りに清澄白河のO2で上海蟹をいただいたのでした。


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