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【創作童話】「白魔女とポチ」ー1ー

 ある平凡な日本の街に、非凡な高校1年生の女の子がすんでいました。彼女が悲しむと何日でも雨が降り、心が寂しいと夏でも雪が降りました。困ったのは近所の住人。雨が何日でも降って洗濯物が乾かなかったり、夏に突然雪が降るので、風邪を引く人が続出。彼女の家の周囲半径10メートル(雪が降ったところ)の家々に、お詫びに家族は自宅のお店のお菓子「どら焼き5つ詰めセット」を配って回りました。
 雨が降ったり、雪が降ったりする原因ーーーー亜美ちゃんは、小学校3年の時から修行を積んでいる、半人前の白魔女だったのです。

 小学校3年生のころの亜美ちゃんは、普通のおさげのちょっと可愛い女の子でした。でも、何故かいつもクラスの悪ガキにいじめられる。
 あまり毎日いじめられるので、亜美ちゃんは、
「もう、たえられない!学校行きたくない!」
と、近所の大学生のお姉さんの所へかけ込んで、ストライキを起こしました。
 お姉さんの小部屋にとじこもって、鍵をかけてしまったのです。
 あわてたのは、周りの人たち。しかし、お姉さんには良い案がありました。

 こっそり小部屋のベランダに入り込んで、亜美ちゃんにある本を窓から差し出し、
「この本はね、魔女になるための方法がびっしり書いてあるの。魔女になって誰からもいじめられないようにしない?」

 お姉さんには、この作戦が成功するかしないかは自信がなかったのですが・・・・。

 けど、亜美ちゃんは 瞳を朝露のようにきらきらさせて、
「ほんとう!?」
と、もの凄いいきおいで本を取り上げると、ぱらぱらとページをめくり、すごく気に入った様子で、
「お姉さん、この本くれるの!?」
と、顔をリンゴのように赤くして言うのでした。
 お姉さんは、
「いいわよ」
と、にっこりほほえんで言いました。

 その日から亜美ちゃんの白魔女修行がはじまりました。
「毎日、朝日にあたる」
「人の悪口をいわない」
「ロウソクの炎を念力で動かす訓練をする」
などがありました。
 他にも色々ありましたが、これは魔女の秘密です。もし、読んでる皆さんまで魔法が使えるようになって、悲しかったら大雨が降る、怒りに燃えたら炎天下になる、寂しかったら大雪になってしまったら大変でしょ?

 普通に生きてられない。


 亜美ちゃんは、さっそくいじめっ子よけの白魔術の修行をはじめ、1年後には魔法を使えるようになりました。
 そして、それは中途半端な魔力のままだったのです・・・・


 町内会長で、宴会好きの亜美ちゃんのお祖父さんの蔵之介のお人柄で、こんなやっかいなチカラを持った亜美ちゃんは、近所の人にも受け入れられているのでした。亜美ちゃんに残された道はただひとつ、魔力を完全にコントロールできるようになることでした。


 半人前の白魔女の亜美ちゃんの家に、ある日ちいさなゴールデンリトリバーの子犬がやってきました。
 亜美ちゃんのたっての頼みで、有名な高校の「かしわ学園」に合格したからで、子犬はまだその時1歳でした。
 くりくりした瞳が愛らしいオスで、

 「ポチ」


と、名づけられました。
 ポチは、かいがいしく世話をしてくれる亜美ちゃんがだいすきでした。

 ポチには、やがてライバルがあらわれました。

 亜美ちゃんの1学年うえのイケメンで、勉強もスポーツもできる、学園のアイドル、小島進を亜美ちゃんが好きになってしまったのです。
(大変だワン!ご主人さまがとられちゃうワン!)
 ポチは、気が気でない。


 ポチには、将来の夢があった。
(ご主人さまの魔法で人間にしてもらって、いつか結婚するんだワン!)
 亜美ちゃんは、そんなことにはまったく気がつかなかったのです。

          つづく


画像は  なつさんの
     「いぬの気持ち」です🍀
         有難うございます♥

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