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【散文ポエム】なつの風景ーきらっきらの少年達サカナ釣り

夏の昼の 少し前くらいの時間を

あしの葉繁る 土のかおる河原の道を

少年たちの団体が

ずんずん ずんずんと行くのです。

なかには、乳歯の取れた少年が

にこにこと前歯もなく微笑みます。

いがぐり頭 白のランニング 白いスニーカー 紺の短パン 灼けた肌

手には竹竿の釣り竿をさわさわと持ちたずさえ、

腰には魚籠(びく)と、ラムネの瓶ををぶらさげて、

少年 数人の 団体は、

てくてく てくてく行進していきます。

行く手にあるのは 少年たちの、

隠れた漁場 オガワノホトリ。

夏のかげろう蜻蛉がすぅっと飛んで

河のほとりをふわふわふわふわ 少年たちと参ります。

夏のあおぞら 真っ青な紺碧の

空にはもくもくと 白き入道雲が光ります。

熱を帯びた 微かな風が

少年たちを追い越して

彼らのなかでは

意気揚々と 今日の獲物に思いを馳せます。

ザリガニ 川魚 どじょうに フナ

野心がむくむくする者は

清流の鮎なぞ捕れまいかと

あらぬような野望を抱く者さえあるのです。

すべては家のオンナドモに 見せびらかせてやるのだと、

かつての時代の心意気!!

竹竿をさわさわ さわさわ揺らしては、

少年たちの行進は 行く手を阻むものも無く。

アシやススキ、笹の葉、木の葉、桑の葉、松の葉、クヌギの葉を通り抜け、

小山のオガワを目指しての

行進は ずんずん ずんずん続きます。

腰には、これまた 母さんの 作ってくださるおにぎりの 笹の葉にくるんだ梅干しおにぎり。鮭にぎり。そしておまけにおかかのにぎり。

乳歯の抜けた少年が一人、

浅黒く焼けた肌で 年上少年軍団に追い付きます。

きらきらひかる河のほとりの土手道には、

時々、カワウソや狸、野兎や、
ちいさなワンコや、鳥では野鴨や白鷺などが 顔を出すのです。

カゲロウ蜻蛉が飛んでゆく。

青い空には入道雲……

少年たちは、学校で習った歌など謳って行進です。

腰のラムネを時々口に含み、

唱歌が野山にこだまする。

この山は少年たちの漁場の道。

青い空 白い入道雲 白いランニング 灼けた肌 白い歯たち

光る汗……

魚籠にいっぱいコブナを詰めて

少年たちは赤い夕日の頃には

この道を同じく引き返すでしょう。

家で待つかあさんや

妹たちのためにたくさんの

たくさんの収穫を持って帰るんだ。

今日の料理はフナの天ぷら、塩焼き

笹にくるんでの味噌󠄀蒸し焼き。

そう話す少年たちの口のなかには

少しよだれが溢れます。

希望とよだれ、そして汗にまみれ、

蜻蛉オニヤンマを目で追いかけ、

青風緑風薫る河辺の道を 今のうちは、

清流上流を目指して歩きます。

唱歌斉唱合唱しながら、

肌の浅黒い少年たちは行進を続けます。

目指すは清流上流山のホトリ

鮎やコブナの或るトコロ。

魚籠にたくさん 獲物を詰めるぞと、

ラムネを含み イメージして。





©2024.5.26.山田えみこ



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