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子どもの頃読んだ小説の中の自己犠牲が悲しすぎて眠れなかった話から‥‥

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11月も下旬。赤く色づいていた樹々の葉っぱもハラリハラリと落ちていく。

かろうじて枝にぶら下がっている葉っぱを見ると、教科書に載っていたオー・ヘンリーの短編小説「最後の一葉」を思い出す。

子どもの頃、友人と今にも落ちそうな葉っぱを見つけると「ああ、あの葉っぱが落ちたら私の命は尽きるのよ」なんてしんみりとした口調で呟き、最後の一葉ごっこをしたりした。

今思えば、昔の子ども向け小説は切ないものが多かった。オスカー・ワイルドの『幸福な王子』も、読んだ後、悲しくて悲しくて仕方がなかった。読んだ夜、悲しすぎて眠れなかったことを覚えている。
なぜ、こんな悲しい物語が子ども向けなんだろうと思ったものだ。
海外の小説は宗教から来る『自己犠牲』ものが多い。

『最後の一葉』にしても、
「壁を這うあの蔦の葉が全て落ちたら私の命は尽きる」と病床のある女性が言ったのを伝え聞いた飲んだくれで絵筆を握らなくなった、それでも「私はいつか大傑作を描ける人間だ」と豪語してやまない老画家が聞き、笑い飛ばす。そんな中、激しい雨風が吹く日が訪れる。
翌日、たった一枚だけ落ちずに頑張っている葉が有った。
何度かの嵐を生き延びる一枚の葉。病床の女性は、落ちない葉に励まされ生きる気力を取り戻した。

実はその葉は、女性のことを笑い飛ばした老画家が、雨風の中描き上げたものだった。しかし彼は、書き上げた2日後に肺炎になって死んでしまう。

病床の女性の思い込みを笑い飛ばした老画家が、彼女の為に葉を描き上げ、本当は心優しい一面を持っていた。その優しさと自己犠牲が彼女を救った物語。授業で担任からそんな解説を聞いたことを覚えている。
しかし、当時の私は納得しなかった。

もちろん、画家に女性を生き延びさせたいという優しさもあっただろう。それは否定はしないし、私もそう思う。
でも、人はやはり自分のため、というものがなければ自己犠牲に到達しないのではないだろうか。
「最高傑作を描きあげてみせる。本物の葉だと信じて生き延びてくれれば、自分の作品はそれだけ素晴らしいということだ」
そして女性は、葉は全て散っているが、彼の絵を本物の葉だと思い、生き延びた。
女性は画家に筆を握らせるきっかけを与え、画家は自分の描いた葉が最高傑作だと感じながら死んだのではないだろうか。
雨風の中、描いて2日後に亡くなっているのだから、女性が、本当は全て葉が落ちてしまっているが、自分の描いた葉が本物の葉だと信じたことを聞いたかもしれない。そのへんの記載が小説にあったのかどうか覚えていないが。

『幸福の王子』もそうだ。
こちらはnoteがあまりにも長くなりすぎるので、あらすじはなるべく省くが、渡り鳥のツバメは渡ることをやめて、王子(銅像)が望むとおりに彼のまとっている金箔や宝石を貧しい人に運び続け、また宝石でできた目をツバメに運ばせたゆえ目が見えなくなった王子に街の様子を伝え続け、ある凍える冬に最後の力を振り絞って王子にキスをして死んでしまう。また王子は金箔や宝石を貧しい人たちに与え続けた結果、見た目みすぼらしくなり、そのみずぼらしさのあまりに、人々によってツバメの亡骸と共にゴミ捨て場に無造作に捨てられてしまう。
子ども心に、泣けて仕方がなかったし、ツバメと王子を捨てた街の人々に腹を立てたものだ。
しかし、タイトルは『幸せの王子』(The Happy Prince and Other Tales)だ。
このタイトルは、“金箔に飾られた美しい幸せの王子”がどうなったかという意味でつけられているのではなく、話全体に対してつけられているのではないかと。王子もツバメも彼らなりに幸せだったんだと。

自分たちの行いが、貧しい人を助けたであろうと思う王子自身の幸せ。
自分が王子を喜ばせ王子のためになっただろうと思うツバメ自身の幸せ。

自己犠牲の中には、自分の“喜び”がちゃんと存在する。だからこそ成し遂げられるのではないだろうか。

子育てでは、子どもの成長が喜びである。また、育て上げる自分を褒める、でもいいのかもしれない。なんにせよ、そこに喜びを見出せるから、自己犠牲に近い子育てを続けられる。

自己犠牲の根っこに、本当の意味で自分の喜び(それは物質的なものではない)がある。

どうしても仕事柄モラハラの話にたどり着くが、長々と書いてきたのは、これを尋ねてみたかったからなのだが。

『モラハラの関係におけるその自己犠牲に、あなた自身の喜びはちゃんと存在していますか?』



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カウンセラー・作家。カウンセリングルーム「おーぷんざはーと」(大阪)1991年設立(https://othpage.com/)。著書「モラハラ環境を生きた人たち」(而立書房)「カウンセラーが語るモラルハラスメント」(晶文社刊 現在9刷)他 共著あり。執筆依頼、お待ちしています。
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