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壁の乗り越え方

今月のふみサロ課題本です。
 さとうりゅうとう著者 未来パブリッシング

 困ったことはたくさんあったが「壁」にぶつかったという認識は
なかった。
 もとより志はなく、ただもがいていただけで、
あとは開き直りだったと思う。

 経済的に厳しかったのでたくさん転職をした。
これといった特技もないし、体力もない、営業、テレアポイント、
日本語教師、など。少しでも給料の高いところ、少しでも楽しい仕事と転々と変えた。
 心理学はただ好きで学んでいた。
カウンセラーという仕事は日本にはないと思っていたので、学ぶことで自分を癒していたのかもしれない。そして楽しかった。

 テレアポイントの仕事をしていた時、まだ勤めてひと月もたってない
ある朝、仕事に行くのが億劫になった。
リストを渡され一日何百件も電話をかけ
会議室を使ってほしいと営業するのだ。
行きたくない、でも仕事だ。
仕事は行かなければならないものだと自分に鞭うって家を出た。

 駅まで少し坂道を下り、上って15分くらいかかる。
足取りも重く悶々とした憂うつ感を抱えながら歩いていた。
 道半ば坂道を下って歩いていたとき、
体が自然にくるっと回って家に向かっていた。
自覚もなく自然にUターンしていた。
 同時に重くのしかかっていた憂うつ感は消え、体は軽くなり
嬉しくなった。
体の向きが自然に動いたのにもびっくり、ストーンと気が抜けたことに
驚いた。不思議な体験だった。
 根っから、自分に合わないことはしたくないのだと、そのとき自覚した。
入社早々、退職する少しのバツの悪さはあったものの、
開き直ったすがすがしさは新しい自分を発見したようで嬉しかった。
 
 動きながら考えるというが、あの時は憂鬱さに覆われ考える余裕などない。思考が停止していた。

 早い話開き直りだ。

 窮地にたたされたとき、「開き直り対処法」だと思うと
情けない気もするが、認めざるをえない。

 それはきっと今も変わらない、壁というほどではないが、
何かにとりかかるとき段取りができない、動くのが先なのでつじつまが合わなくなったとき、エイっと荒業をして知らん顔している。
 進化した「開き直り」の極地だ。

行動力があると。自分で言い訳している。
 
 

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