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コントラスト

30代も後半になると、様々な体の変化を実感する。

例えば、痩せにくい、肩腰膝が痛い、疲れが取れない、などなど同じ年頃の方なら何か思い浮かぶだろう。

そんな私はというと、ある日、生理でもないのに不正出血があったのだ。女性特有のものである。あらやだ。いよいよそういう意味での曲がり角かしらと思い、婦人科を受診することした。

2022年3月8日、ネットで見つけたこの婦人科は、よく買い物に出かけるエリアで、評判も良さそうだった。行ってみると、そこはまるでお洒落な本屋さんのような空間で、本を手に取りながらお洒落上級者のような気分になって浸っていた。

「下腹部の張る感じと不正出血があったので、あとそれと子宮筋腫もあるので大きくなっていないか診て欲しいです」という感じで伝えた。まずは子宮筋腫をエコーで診てもらい、「2.7 センチくらいのがありますね、場所的にも問題はないでしょう」と伝えられ、胸を撫で下ろす。「あとは念の為、子宮頸がん検診も受けておきましょうか」と促され、私もお願いするつもりだったので二つ返事でお願いした。
それともう一つ、先生のデスク横に置かれたメニュー表を見て、私は考えていた。

私は子供をまだ授かっておらず、実は2年程前に一度流産を経験していた。その後もできる事なら自然妊娠が良かった為、特に検査などはすることなく、妊活をしていたが、授かることはなく、いつしかその気も失せていた。

でも、今回の不正出血もあり、自分の体に自信を失いかけていた私は、今の状態だけは知っておこうと思い立ち「私、ブライダルチェックを何も受けていなくて…そういった妊活の検査もできるんですか?」と尋ね、メニューの説明をしてもらった。

すぐに受けてみたいという気持ちだったので、手頃に受けられる(といっても8,000円くらいした)卵巣年齢チェックの検査をお願いした。血液検査で分かるらしく、つくづく人体の不思議と医療技術の進化に感心していた。

そんなわけで、子宮頸がん検診は2週間後、卵巣年齢は4週間後、ドキドキしながら結果を待つことになった。
子宮頸がん検査は何度も受けているし、あまり気にしなかったが、卵巣年齢は自信こそなかったものの、初めて受けたという満足感と、友達にこんなの受けたんだーと報告して盛り上がったり、好奇心でワクワクもしていた。年齢も年齢なので、どんな結果であろうと今後の指針になるかなぐらいに捉えていたからだ。

2022年4月4日、結局、予約を間違えたりして約1ヶ月が経ち、検査結果を聞きに行く日が来た。相変わらずお洒落な空間に心が躍る。番号が呼ばれ椅子に座ると、その結果と思われる紙がヒラっと私の前に置かれた。「今まで、子宮頸がんで引っかかったことありましたか?」「…ないです」といって私は目の前に置かれた紙に釘付けになった。何やら色々書いてある。
すると、もう一枚の別の紙がさしだされた。恐らくその結果の重度を示すものらしい。「あなたはここです」と指刺されたのは、〝HSIL〟濃い紫色で示された、がんの一歩手前のところだった。
要するに、がんではないものの治療が必要というところにいた。

昔からそうなのだが、私はこういう時ほど冷静だ。あぁ、そうなんですね、といった感じで淡々と受け答えしていたと思う。先生からどう見えていたかは分からない。私への説明が終わると、「紹介状書きますね、近隣の病院でよろしいですか」と尋ねられ、「はい」と返事をすると、看護師さんがバタバタと紹介状の準備とし始めた。
その後に卵巣年齢チェックの結果と説明をされ、それもあまり良い結果ではなかったが、正直、それこそ、あぁ、そうですかという感じで心ここに在らずだったと思う。ちなみに、卵巣年齢が若すぎて(卵子がたくさん残っている状態)、おそらく排卵されていないということらしい。
説明と見解が伝えられると、先生もそれ以上の事は何も言わなかった。もしかすると、何か言われたかもしれないが私の心に届いていなかっただけかもしれない。
これも本来ならとても大事な事のはずなのに。

母の「女の子は体を冷やしちゃいけない」という言葉を思い出す。私はその言葉を守れてただろうか。私の女性としての機能はどうなるのだろうか。子供はやはり産まないのだろうか。どうしてもっと早く体の声を聞いてあげなかったのだろうか。
様々な思いが、頭を、心を駆け巡る…

紹介状を看護師さんから手渡されると、私はにこにこと気丈な態度で、そのお洒落な病院を後にした。

さあ、帰って夫に伝えなければ…

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