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コントが始まるの原点知ってますか?「初仕事納め」 金子茂樹 脚本分析

コントが始まる熱がまだ冷めない。そんな中、金子茂樹さん脚本の原点とも言える「初仕事納め」が月刊ドラマ2021年7月号に掲載されていたので、ざっくりとだがその脚本の魅力を分析していきたいと思う。

【初仕事納め】

※以下、時間がない人は考察から読んで下さい。

主な登場人物

主人公:中畑 準(23) クロス商事の新入社員

副主人公:田島 正(33) クロス商事元営業マン

構成

↓番号はページ数

1 準が寝坊する。
2 会社入社日に遅刻した準は土下座する。
3 準が頭を上げると、会社の人が土下座をしている。実は明日で会社が倒産することを告げられる。
4〜7 社員の言い訳が始まる。
8、9 準が営業で取り扱うはずだった商品「ペンタゴン」の営業をしていた田島さんという人物のせいで倒産すること知る。
10、11 準は田島さんの元へ辞表を届けるという初仕事を命じられる。
12~17 準は田島のマンションへ出向く。そこで筋肉ムキムキの田島に出会う。田島はその筋肉で営業を獲得してきたと話す。
18、19 準がいない社内の様子。思い出に思いを馳せる社員達。

20、21 一年前の田島の回想。石油王と繋がり、相撲で勝ったら「ペンタゴン」の大型契約をすると言われた。
22、23 回想。相撲で勝ち、契約に成功。

24 会社の社員達が現実逃避をして寿司屋に行くが、どうにか借金が返せれば倒産しなくて済むかもと考える。

25、26 回想。社内で検討した結果、その大型契約に乗ることにした。
27、28 回想。「ペンタゴン」の輸送中に台風が来て船ごと沈没した。

29 夕方、会社の社員達が会社に戻り、会社のことを愛してることを認識する。
30、31 準が辞表を出した田島に「逃げるな」と優しく諭す。
32、33 小料理屋で社内の仲間達が全員集まる。
34、35 小料理屋も工場がなくなった影響で人出が減り、今日で店じまいすることを知る。
36 「ペンタゴン」が湘南海岸に打ち上げられ、それがニュースで取り扱われた。準は寝ている。
37~44 そのニュースを見た視聴者からは注文が殺到して、融資も全額下りることが決定した。そして、小料理店も弁当配達が決まった。
45、46 準が起きて倒産しないことを知る。
47 会社が忙しくなり、嬉しい悲鳴。

※ページ数は月刊ドラマの一列で計算しています。

考察

この物語の始まり方には、二段階ある。準が寝坊をして入社日に遅刻をして土下座をする。これだけでもワクワクするだろう。これが一段階目だ。そして、二段階は、準が頭を上げると社員全員が土下座をしていることだ。この二段階によって一気に物語に引き込まれる。そして、驚くことにこれは最初のたった3ページで行われている。1時間ドラマという制約の中でいかに出だしが肝心かがわかるだろう。

また、回想シーンと現在の様子をカットバックすることによって俯瞰的に過去を見ることができている。これはあの「コントが始まる」でも多々使用されている。このような回想シーンは相当技術が高く、誤った使い方をすると相当つまらない作品になってしまう。今回は、現在は物理的なスピード感であったり、展開の速さで補い、回想シーンでは謎が解けて新しい情報をドンドン出していくこと、展開の速さで二つの物語がカットバックで上手く繋がっている。

また、海の様子のシーンが伏線になっており、繋がった時に爽快感を与えるなど細部にわたって徹底している。

それだけではなく、物語の流動性にも独特の感性が反映されている。世界に目を向け、石油王をきっかけに大型契約が成立するという大きな物語だけでなく、工場がなくなるから、小料理屋の出入りがなくなり小料理屋が閉店することになるという小さな物語までフォーカスを合わせる縦横無尽さ。

それに加えて、登場人物の魅力。一人一人に正義はあって、正論VS正論だからなかなか会話が終わらない。あの「俺の話は長い」「コントが始まる」も然り、金子茂樹さんは、頑固で諦めない人が好きなのかもしれない。そのどちらも引かないという面白さがこの脚本の魅力なのだ。

そして、最大の魅力は、セリフの面白さにある。是非、一度脚本を読んでみてほしい。

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