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【大人の読書感想文】砂漠

 伊坂幸太郎さんの著作です。大学生5人の青春?小説ですね。大学生活の描写があぁあるなーってなる感じが好きです。なんか懐かしい感じに浸れるんですよね。そして読んでて何よりもぐっとくるのが西嶋くんです。近くにいたら絶対にうっとうしいんですよ。でも彼の言葉や行動はぐっときちゃうんです。東堂さんが「西嶋の考えに、わたし、期待している」って言うんですけど、まさにその通りなんです。彼にはなんか期待しちゃうんです。

 最初に西嶋くんに惹かれるのは、ボウリングの場面ですね。ボウリングがうまくできなかった自分に悔しくて後日練習するなんて、なんてかっこいいんだ!!できなかった自分に悔しい!!!かっこよすぎるんですよ!別に誰に言うわけでも無く、ボウリングの本を買って練習しに来るなんてその愚直さがまぶしい!東堂さんも言ってましたが、「結局さ、いざという時にはやる、なんて豪語している人は、いざという時が来てもやらない。」はい、まさにその通りです。ぼくもです。
 西嶋くんはむちゃくちゃなんですけど、どこかかっこいいんです。その行動は浅はかで短絡的なんですけど、どこかはっとする部分もあるんです。時折やってることが矛盾するんですが、本人は「矛盾しちゃいけないって法律があるんですか?」って言っちゃうくらいなんとも思っていないんです。でもこの考えって大事なときもあると思うんです。世の中は矛盾してはいけないなんて法律は無いんですよね。生きていく上で矛盾することなんてあると思うんですけど、別に法を犯す訳でもないから、ばんばん矛盾しちゃえばいいんですよね。そしてそんな西嶋くんですから、客観的に見ると変なことをしているときもある訳です。でも本人は「残念ながら、俺を動かしているのは、俺の主観ですよ」とかけろっと言っちゃえる訳です。たしかにぼくもぼくを動かしているのはぼくの主観です。誰しもきっとそうです。今の世の中ってインターネットの発達やSNSの拡大で矛盾しないことや客観的にみてどうかっていうことが大事だと思っちゃってたんですけど、まあ矛盾したからって法を犯す訳でもないし、自分自身を動かすのは自分の主観だし、って思えるとすごくいきやすくなるっていうか息がしやすくなる感じがします。

 好きな場面や台詞を挙げたらきりが無いんですが、1番好きな場面は、西嶋くんが買ったスーツを自慢するところですね。そしてひねくれていた西嶋くんが素直になる「笑ってる東堂の隣りにいるのは、俺じゃないと嫌だって思ったんですよ」ってとこと西嶋くんが大人になる「ただ、残念なことに、日本に、この仙台に、大統領はいないんですよ」って発言はすごくぐっときました。最近、ぼくは絶賛停滞中なんですが、きっとぼくもその気になればね、砂漠に雪を降らすことだって余裕でできるんですよ

 あと学校系の物語だけあって卒業式の場面も良いです。校長の「学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。」っていうのは全社会人に知って欲しいです。それと莞爾くんの「本当はお前たちみたいなのと、仲間でいたかったんだよな」っていうのは言われる方も素敵だし、それを言える方も素敵です。

 大学生活を懐かしみたいときとか自分に元気が無いときに読みたくなる本です。




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