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アロイス君に再会

2019年9月にリンツでブルックナーフェスティバルがあることを知り、夏休みを取って行ってきました。ザンクトフローリアン修道院はリンツ駅からバスで30分くらいのところにあります。修道院のウェブサイトを見てみるとゲストハウスがあるらしい。メールで問い合わせをしたところ、宿泊可能とのことだったので、週末に1泊してみました。

修道院では5月から10月初めのブルックナーの誕生日までは、一般向けに修道院のツアーやオルガンコンサートが行われます。日曜日にチェックアウトし、朝の礼拝に出た後、ツアーで図書館やブルックナーのお墓を見学し、オルガンコンサートを楽しみました。

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オルガンコンサートが終わったのは3時。バスでリンツに戻ろうとバス停に行くと、3時ちょうどにバスが行ってしまったところで、次のバスは6時でした。日曜日なので1日5本しかないのです。修道院に戻ったものの、修道院内のレストランは日曜は3時でクローズで、大きなスーツケースを持ってうろうろするわけにもいかない。外のベンチに座って待っていましたが、だんだん寒くなってきました。

夕方5時ごろ、あと1時間あるけどバス停に行ってみようと修道院を出たところ、たくさんバスが止まっていることに気が付きました。バスから子供たちがたくさん降りてきました。

と、私の目の前を見たことがある人が通ったのです。「アロイス君だ!」前の年にシューベルトの最後の家でレコーディングをしていた、カウンターテナーのAlois Mühlbacherさんだったのです。そして、アロイス君が私のほうに向かって歩いて来るのです。「なんだなんだ?」と思っていたら、私の隣にいた男性と話し始めたのです。「Franz Farnberger先生だ!」隣にいたのはレコーディングのときにピアノを弾いていた、ザンクトフローリアン少年合唱団の音楽監督だったのです。

ものすごく緊張しましたが、頃合いを見計らって話しかけてみました。ザンクトフローリアン少年合唱団は南アフリカツアーに行っていて、今帰ってきたとのこと。Farnberger先生はお留守番で、合唱団が帰ってきたので出迎えに来たそうです。

せっかくなので、お二人の写真を撮らせてもらいました。アロイス君はFarnberger先生より背が高いのですが、写真を撮るときには少しひざを落として先生と同じ高さになるようにしていて、すごく優しい人なんだなあと思いました。

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アロイス君は迎えに来ていたご家族と一緒に帰り、合唱団の子たちもみな帰り、また私だけになってしまいました。たった15分の出来事でした。もし5時に行こうとしなかったら、もし2泊してチェックアウトが月曜日だったら、きっとアロイス君には会えなかっただろう。あまりの偶然に呆然としていました。神様はきっといるんだと、心から思いました。

さて、やっと6時のバスが来ましたが、ハイエースくらいの小さいバスで満員!次のバスに乗ってくれと言われましたが、次のバスは8時で最終。あと2時間も待てないし、もし乗れなかったらどうするの?「7時半のウィーン行きのレイルジェットを予約してるんです」とウソを言って、無理やり乗せてもらいました。乗客もバスの運転手も英語は得意ではない様子。前回のウィーン旅行以来、ドイツ語をかなり勉強していたのですが、こういうところで役に立った!と思いました。大きなスーツケースを持って床に座らせてもらいましたが、周りの視線が痛かったです(笑)。