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本・読書について

本が好きである。電子書籍ではなく紙の本が。どうしようもなく好きである。本を読むのはもちろん、所有していることが好きだし、本棚に並んでいたり机の上にほどよく積んでいると幸せな気分になれる。植草甚一さんのような名人にはとても及ばないけれど、とにかく本が好きである。

最初に読んだ活字の本は、たしか「イソップ童話集」だった。小学一年生のときに母親が買ってくれた本だ。ところどころ挿し絵があったけれど、人生で初めて読破した活字が主体となった本はそれだ。母親がどういう意図でその本を僕に与えたのかは分からない。「きつねとぶどう」や「ありとはと」のようなためになる話がたくさん載っているから読ませようとしたのかも知れない。たしかに読んだ後に幼いながら「うん、うん」と何事かを得た様な気分になったのは憶えている。間違いないのは、その「イソップ童話集」をきっかけに僕の本好きが始まった。

小学生時代は、主に推理小説やファンタジーを読んでいた記憶がある。小学生向けに編集されたものではあったが、シャーロック・ホームズとルパンの主な作品はこの頃すでに読み終えていた。下手なホラー小説よりドイルやルブランのミステリーの方がよっぽど怖かった。今から思えば、同時期にすでにラヴクラフトの作品にも触れていたのだが、それでもホームズやルパンの方が後に残る怖さを持っていた。
ファンタジーは佐藤さとるの作品をよく読んでいた。村上勉のイラストと共に、現実と虚構がないまぜになった世界の物語をたくさん読んだ。なぜか夏休みに読むことが多かったので自然と非現実的な印象が濃く感じられた。学校での授業が無い日々の中で読んでいたからかも知れない。

小学校高学年から中学、高校ととんでもないジャンルの本にハマることになる。SFである。小学校高学年の頃に読み始めた最初のSFは、眉村卓や筒井康隆、光瀬龍など。物語の内容が独特の空想もので、その特異な雰囲気が面白くて読んでいたのは事実だ。でも、SFを読み始めた動機はもっと別なところにあった。要するにカッコ良かったからだ。まだ昔話やファンタジーを読んでいる級友たちを横目に見ながら、自分はちょっと大人な小説を読んでいる。そんな優越感が味わえるからSFを読んでいた。アホである。ただ、最初の動機はどうあれ、物理を中心とする科学を土台として考えられたSFに、年齢と共にどんどんハマって行くことになる。とんでもない道楽に出逢ってしまったと思うが後悔はしていない。それは読書とて同じこと。

そのほか、大学生、社会人と年齢はどんどん重ねて行っても本を読むことは止めなかった。どんなに忙しくてたとえ一年に一冊しか読めなかったとしても止めなかった。
本を読むことは楽しい。その気持ちは最初の「イソップ童話集」の頃から変わらない。読書は、活字を追いながら自分のペースで物語を上演して行ける。セリフの間もBGMも効果音も自分好みに物語を演出できる。登場人物たちの声も好きな声優さんに演じさせることが出来る。脳内小劇場。僕にとっての読書はそんな感じである。

人々の活字離れ、読書離れが進んでいると言われて久しいが、もっとたくさんの人に本を読んでほしいと思う。読書は楽しく、手軽に楽しめる道楽だ。人生が豊かになる。それだけは、たしかだ。

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