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5歳 男の子、女の子と関わる私の話

年長クラスに上がった私は、
またしてもSちゃんとクラスがわかれてしまったため
毎日のようにSちゃんクラスに遊びに行っていた。

Sちゃんは誰とでも仲良く出来る子だったので
Sちゃんと遊びたい子は多く、毎日色んな子と遊んでいた。

私は、周囲の子の気持ちを考えられない子だった。


まだ幼いながらもこの頃にはもう既に
「男の子」「女の子」という区別がハッキリしてきていて、
男の子たちは毎日女の子の制服のスカートの中を覗こうと必死だった。

いつ頃からどうしてそうなったのかは覚えていないけれど。

朝、登園して連絡帳にシールを貰うために並ぶときには
既にシールを貰った男の子が床に這いつくばって
並んでる女の子たちのスカートの中を狙い、

自由時間には、
遊んでいる女の子のスカートをめくって逃げていくのが流行っていた。

気が強かった私はそんな男の子たちを見つける度に怒って追いかけて、
「廊下は走っちゃだめだよ!」
と先生に注意されて教室に戻る、といったことは日常茶飯事だった。


ある日、Sちゃんのクラスに行きSちゃんと積み木で遊んでいたら
いつものように男の子がからかいに来たことがあった。

その男の子はSちゃんや私のスカートをめくり、
積み木のブロックを奪って逃げようとした、が、

「やめてよ!かえして!」

男の子をつかまえるために
私は咄嗟に男の子の髪の毛を掴んで引っ張った。
その男の子は髪の毛が長めだったので、引っ張りやすかったのだ。


正義感が強くあり、自分が全て正しいと思い込んでいた私は
「男の子が悪い」から「私は正しいことをしている」という考えだった。

それまで、男の子たちは私がどんなに怒っても嬉しそうにするだけで
追いかけたり服を引っ張ったりしても楽しそうにしていたから、余計に。

案の定、髪の毛を引っ張られた男の子はその場で泣き出してしまった。

私はというと、

「え?ちょっと引っ張っただけなのにどうして泣くの…?」
という疑問と、

「泣くくらいなら最初からやらなければ良いのに。」
という男の子を責める気持ちがわいてしまい、
先生に注意されて謝りながらも、自分が悪いとは思えなかった。

だけどその後、
自分のクラス以外のクラスに遊びに行くことが禁止されるようになった。

あの事件が原因だったのか私には詳しくはわからなかったけど、
記憶のなかではSちゃんのクラスで遊んだのは、そのときが最後。

私はSちゃんと幼稚園で遊べる時間がどんどん少なくなっていった。


ある日の休日、Sちゃんと同じクラスのKちゃんの家に
Sちゃんと一緒に遊びに行くことになった。
私はKちゃんとはそれまで関わりがなく別に仲良くもなかったけど、
SちゃんはKちゃんともとても仲が良かった。

シール帳を持って行って、お互いにシールを交換して遊ぶ約束だった。

Kちゃんはシールをたくさん持っていて、
中でもぷくぷくした立体的なシールは私もSちゃんも持っていなくて、
私たちは2人ともそのシールを欲しがった。

「Sちゃんにはあげるけどemiちゃんにはあげなーい」

Kちゃんはそう言ってSちゃんにだけぷくぷくしたシールをあげて、
私には平面の、誰でも持っているありふれたシールをくれた。

「え?どうして…?」

って思ったけど、私はKちゃんに言い返すことが出来なかった。

今思い返すと、このとき私は初めて友達から仲間外れにされた。
Kちゃんからしたら私は「友達」ではなかったのかもしれないけれど。

きっと何か私がKちゃんを怒らせるようなことをしたのだろうけど、
今となっては「シールをくれなかったKちゃん」の思い出しかないので、
私の記憶力は、都合の良いものだなと思う。

男の子の髪の毛を引っ張って泣かせたときも、
Kちゃんにシールを貰えなかったときも、
私は何一つ悪いことはしていないという確信を持っていた。

そんな性格だからか、Sちゃんとは仲が良かったけど、
Sちゃん以外に私と仲良くしてくれる子はあまりいなかったように思う。
幼稚園での記憶は、ほとんどSちゃんとの思い出ばかりだ。

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