かざはな [ 第一話…あの日 ]
私もふわりと、飛んで行けたらいいのに。
あの、風花(かざはな)のように…
あの日から、私の日常は壊れ始めた。
いや、もっと前から、壊れかけていたのかもしれない。
そもそも、壊れる壊れない以前に、【私の日常】は、おかしなものだったのかもしれない。
その【おかしな日常】が、そもそもの【私の日常】だったということに気付くのは、あの日から、もう10年も先のことだ。
2024年、1月。
精神障害者保健福祉手帳1級
シングルマザー
実家暮らし
無職
つまり収入ゼロ
これが現在の私。
11年前…いや、それ以前のもっともっと若かりし頃の私は、将来の自分がこんな状況にあることなんて、きっと想像もしていなかった。
ただ漠然と、未来に不安と希望を抱き、“ いま ”を生きるだけで精一杯だった。
あの日…
あの日を境に、一気に変わった、私の日常。
いつ、誰にでも起こりうることを、出来るだけたくさんの人に知って欲しい。
…
2011年3月11日。
忘れもしない、東日本大震災。
私は、一ヶ月後に結婚式を挙げる予定の婚約者と一緒に、同棲しているアパートにいた。
…
「…揺れた?」
体に感じた少しの揺れで、昼寝から目を覚ます。
状況を確認したくて、テレビをつける。
「結構大きかったんだね〜」
それからすぐに、テレビは全てのチャンネルで地震速報に変わった。
そこで目にした光景を、私はまだ、忘れることができない。
だんだんと、気持ちがザワザワし始める。
自分のいる場所は、大丈夫…
大丈夫のはずなのに、落ち着かない。
テレビでは、何時間もずっと、地震特番のままだった。
その日の夜は、眠れなかった。
ひっきりなしに鳴る、スマホの緊急地震速報。
枕元に靴と懐中電灯を置いて、何度も眠ろうと試みた。
それでも、少し揺れるたびに、スマホが騒ぐ度に、私は落ち着けなくなって…
息苦しい。
気持ち悪い。
トイレに駆け込んで嘔吐いても、何も出すことはできない。
胃の中のものも、不安な気持ちも、恐怖も。
過呼吸が治まらない。
嘔吐きも治まらない。
心臓の鼓動が、バカみたいにうるさい。
このまま死ぬんじゃないか…
一生この状態から抜け出せないんじゃないか…
思えば思うほど、発作は治まるどころかひどくなり、結局一晩中、トイレで寝ずに過ごした。
それから、1週間。
私は、普通の生活ができなくなってしまった。
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