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【米国市況】7月FOMC前に知っておきたいこと

7月26~27日に米国FOMC(連邦公開市場委員会)が会合されるが、その前に最大の課題のインフレについて知っておきたいことを話します。

1.大幅な政策金利の利上げは景気後退を招く

Federal Reserve System(連邦準備制度)の加盟銀行は預金残高の一定割合を連邦準備銀行に預け入れることが義務付けられ、預け入れるべき資金が不足している場合に、加盟銀行が互いに短期資金をやりとりする市場で成立する金利がFederal Funds Rate - FFR(フェデラル・ファンド金利)である。

6月のFOMCでFFRが1.5%~1.75%に定めた。2022年の始まりではFFR上限が0.25%に対して現在のFFR上限は1.75%まで上昇。

参考資料(FFR 2022年):https://www.newyorkfed.org/markets/reference-rates/effr

実際の数値だけみるとあまり高くないと感じるかもしれませんが、始まりがゼロに近い0.25%だったので、1.75%まで上がると既に7倍もFFRが上がっています

さらに7月のFOMCでは追加の0.75%利上げが濃厚なので、FFR上限が2.5%まで上がります。そうすると0.25%から10倍増加。

急激なFFR上昇の深刻さを理解していただくように、2023年半ばまでの利上げ着地予想を考えましょう。

参考資料(FFR着地予想)

1979年~1987年までのFederal Reserveのポール・ボルカー元議長時代はFFRを10.25%から20.0%に上げた。1979年4月のインフレ率は10.5%だったのでボルカー元議長は積極的に利上げしていた。1980年3月までにFOMC毎に平均的に約1.2%の利上げを実行。最終的に20.0%利上げまで到達したが、振り返れば10.25%から1.9倍しか上がらなかった

40年ほど進み、2022年1月のFFRが0.25%まで落ちた。2020年上期に流行した新型コロナウイルスの経済的ダメージでジェローム・パウエル議長が率いるFederal Reserveは経済復興のためFFRを1.25%から0.25%に下げた。

しかし、過去最低FFRを2年間も続け、インフレ率は爆上がりして2021年には7%超え。2022年3月に0.5%に上げ、6月にはFFRが1.75%まで上がった。2022年1月の0.25%と比較すると7倍も上がった。

実際のFFRがそれぞれの時代の経済にインパクトを与えたのは間違いないが、軽視してはいけないのがこの倍数です。FFRを20.0%までに上げた1980年の翌年に米国経済は強制的な景気後退に陥った。

参考資料(FFR 1981年景気後退):https://fred.stlouisfed.org/series/FEDFUNDS

1980年の利上げ倍数は1.9倍に対して、既に2022年6月時点で利上げ倍数は7倍になっているのが大問題だと思います

さらに怖いのがこれからのFFR着地予想です。7倍の利上げでインフレ率がFederal Reserveの目標である2%まで下がれば問題ないのだが、6月CPI(消費者物価指数)の前年同月比でCPIが9.1%上昇。大幅利上げはまだまだ続きます。

2022年末のFFR着地予想が2.5%であれば、0.25%から10倍。3.5%まで利上げするのであれば14倍。なんと金融・経済誌のBloombergは2023年半ばまでにFFRが4%に利上げされると報道した。これは驚異的な16倍の利上げになる。

参考資料(Bloomberg FFR4%報道):https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-13/traders-brace-for-4-fed-terminal-rate-as-yields-keep-soaring

1.75%の7倍でさえ、ボルカー元議長時代よりも遥かに超えているにも関わらず、10倍以上になれば経済へのダメージは簡単に取り返しがつかなくなる。

1982年6月ごろには1981年から始まった景気後退のS&P底入れがみられ、不況前の最後の上昇であった1980年11月から約28%も落ちた。その後、1983年4月にはS&Pが47%上昇し、景気後退を抜け出したが、約2年半という長い道のりだった。

参考資料(S&P 500):https://www.macrotrends.net/2324/sp-500-historical-chart-data

迫って来る今度の景気後退だが、2021年12月のピークから2022年6月まで既に約22%も落ちている。直近1ヶ月で少し上昇気味でインフレピークは過ぎたように感じるが、今後の政策金利の利上げ次第でS&P含め株式市場がまた落ちる可能性はある

インフレ問題はまだなくなった訳でもないですし、消費者も日常生活の中で不景気を多少感じる場面に直面している。

7月29日に7月の消費者信頼感指数の確報値が発表されるが、速報値は51.1だった。しかし、これは歴代最低レベルの消費者信頼感指数であり、繰り返しになるが、Federal Reserveの利上げはまだまだ継続される。

参考資料(米国 消費者信頼感指数):http://www.sca.isr.umich.edu/files/chicsh.pdf

上のグラフをみてもう1つ思うのが、2008年に起きたリーマン・ショックよりも今の消費者信頼感指数が低いのは考え深い。ここはFederal Reserveにどうインフレ解消するのかを明確にしないと消費者はさらに悲観的にになるかもしれません。

7月28日には4-6月期四半期実質GDPの速報値も発表される。2四半期連続マイナスGDP成長で景気後退になるが、もしGDP数値を元に景気後退が確定すれば増々消費者信頼感指数へのダメージを食らうでしょう


2.Federal Reserveは今後どうすればいい?

個人の意見になるが、あまりの積極的な利上げは避けるべきだと思います

もちろんインフレは一番の問題ですし、確実にアメリカで生活されている方にそれなりの支障を引き起こしているとみています。ただ、2年間もFFRを0.25%で維持し続けたFederal Reserveが短期的にインフレ解消するのは無茶なこと。利上げによって景気後退に陥ったら、経済的なダメージは1980年よりも2008年よりも大きいでしょう。

大幅な利上げが定められ、大規模な景気後退になればインフレは2%まで下げることは難しい。なぜならFederal Reserveがコントロールできる範囲は限られている。ロシアのウクライナ侵略、増え続けているコロナ感染者数、または農業産出に影響を及ぼす直近の記録的な熱波と猛暑

参考資料(米国 コロナ感染状況):https://www.nytimes.com/interactive/2021/us/covid-cases.html

また、労働雇用市場も落ち着くことなく、依然として失業率も歴史的に低い。ただ、働く側としては1度経験した在宅勤務は今後就職や転職する際の絶対条件となっている。もちろん在宅勤務の権利を与えている企業も多いが、企業側としては少しずつオフィス勤務に戻したいと考えているでしょう。

そうなると雇用統計的な労働者不足問題は継続され、平均賃金もなかなか低下させることが難しい。

このようなポイントも含め、Federal Reserveは今の状況をしっかりと把握していただいて、無理な利上げを避けて、次第にインフレ低下されるべきと思います。政治的な問題も絡むが、米国経済を守るために何をすべきか何をすべきではないかが明瞭に整理されることを願っています






参考資料:
https://tribunecontentagency.com/premium-content/editorial-cartoons/independent-cartoons/phil-hands/
https://www.thebalance.com/fed-funds-rate-history-highs-lows-3306135


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