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モノ作りと才能のバトル、ネクストインファッションが最高だった

タイトルの通りですが、めちゃくちゃ面白くてあっという間に1シーズン見てしまいました。

私は普段、テレビ的に個人を消費している気がしてしまうので、リアリティショーのような番組はあまり好きではありません。でも、本番組に出てくるデザイナーたちは、既に多くが自分のブランドを持っているような、最初から才能のある人ばかりで、その人たちが本業の仕事をするだけでもあるので、本番組は安心して見れました。
落とされても結果に納得していない風だったり、プライドの高さも垣間見せてくれます。笑

この番組のメインも、素人の成長や努力ではなく、プロとしての仕事の成果、そして才能です。
才能の問題だからこそ、その成果物を評価するのはとても残酷でもあり(毎回最下位の人間が告げられ、去っていきます)、面白かったです。

クリエイティブなものに触れたい、モノ作りが好き、そんな人に特におすすめの番組ですので、オススメポイントとそうな〜と思ったところなどを書いてみます。
一部結果に触れているのでネタバレです。あとハイファッションのことは全然知らない素人視点です!

エンターテイメントとしての、モノづくりの過程

番組は最終回以外、テーマの提示、各参加者の1日目の作業、2日目に入って半日作業、すぐに発表(ランウェイ)の流れで進みます。めちゃめちゃ短い時間の中でテーマを咀嚼し、パターンを描いたり布を切ったり縫ったりして実際にものとして完成させていく、その過程自体がスリリングで面白いのです。

ハイファッションの洋服自体が華やかですし、そもそも完成品の出来不出来を一瞬で伝えられるものなので、毎回ランウェイがハイライトになります。例えば小説やマンガ、映画ではここまで一瞬で伝わらないので同じことができません。

アイデアを形にする技術も必要

服作りは大きく分けると「アイデア」と「製作」に分かれます。
素敵なアイデアがいくらあっても仕方がなく、それを実際に形にする必要があります。じっさいに手を動かす、泥臭い作業です。でも、この縫製が明らかに初心者の視聴者から見ても上手い人は上手く、全体のクオリティに寄与していると感じました。

「アイデア」と「製作」は小説でいう「プロット」と「執筆」に似ています。どれほど優れた案を思いついても、時間をかけてひとつひとつ形にしないと意味がないのです。

ルーツを強みとして持つこと

登場するデザイナーは、性別・国籍も様々です。(恐らくはかなり意図的に選ばれています)
そんな中、その回での1番を取った、それぞれの各出身地をパターンにしたエンジェルとミンジュのドレスが象徴的ですが、しばしばデザイナー自身の出自にまつわる表現が採用されます。
そしてそれは表現として強く、必然性を持ったものになります。

もちろん単に伝統というだけでなく、取り入れた自分なりのアレンジになるわけですが、伝統は伝統になるだけのしっかりした素地があるので強く、「自分らしさ」としてどう工夫したかもわかりやすいです。

新しいことに挑戦しないと勝てない世界

多くのデザイナーたちが、できるかどうかわからなくても、やったことがなくても、思いついたことを形にしようとします。
幸い、もともと技術の高い人たちなので結果として大惨事、というようなことはないですが、現実には失敗も十分ありうると思います。

一方、時間配分を重視し、無難にまとめたペアは素人目にも「落とされるな」とすぐにわかりました。
ハイファッション自体が新しいものを常に求める貪欲な業界だからでしょうか。「挑戦していない」ことは落とす理由としてわかりやすく、明確です。

新しいことへの挑戦は、精神的に「そうした方がいい」というものではなく、身もふたもなく言ってしまえば「そうしないと生き残れない」のです。

これじゃない、と気づいたら変えることも大事

アイデアと制作というプロセスの話をしましたが、実際に形にしてみると、思っていたのと違う…ということが起こりうるのは容易に想像がつくところです。
例えば、第9回でダニエルが手術着の青から黒に変更をした点は評価されませんでしたが、アシュトンが第9回で袖をカットしたこと、第10回でダニエルがドレスを黒から銀への変更したこと、は効果的に働きました。
「これじゃない」という自分の直感を信じることが重要なのだと思います。(それで失敗することもあるにしても)

上手い人は最初から上手い、ビジョンは最初からある

決勝戦にまで進出したのはイギリスのダニエルと韓国のミンジュですが、ダニエルは最初から上手く、ミンジュには最初から明確な個性があります。
良くも悪くも、小手先でどうにかなる世界ではなく、既に持っている才能での勝負なのだと感じました。
もちろん、そこまでにはかなりの努力があったでしょうが、そこは細かく描かれません。これは「何者かになる物語」ではなく既に「デザイナー」でしかない人たちの戦いなのです。

全体の感想として、時間のない中での作業なので見ている側も焦らされ、自分ももっときびきび作業しなければな、と思わされました。笑

門外漢な業界だからこそ、とても楽しく見られて、純度100%にクリエイティブな番組でした。ミンジュの服、普通に欲しい!


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