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中国の大学生さんに百合について聞いてみました(各国百合事情②)

前回、韓国の百合事情について、1人出版社を運営されているムンビメディアさんにインタビューさせてもらいました。

非常に細かく語って頂けて勉強になったのですが、次はもっと他の国のことも聞いてみたい。だってたぶん他の国には他の国の百合があるはず…!

というわけで今回は、ムンビメディアさんと同じく私の百合小説を翻訳してくれている、中国のマスクさんにインタビューを行いました。

韓国版の私の小説の配信方法は電子書籍ストアでの販売ですが、中国では色々と有料配信が難しいことからweiboでの無料公開としています。(「夏の少女は還る」のみです)

そのため、翻訳作業には全くお金が入らないのですが、マスクさんは完全にボランティアでやって下さっています。私の小説以外にも、許可を取って日本の作家さんの百合マンガなどを翻訳してweiboに載せたりもされています。

「白雪姫の牙」という義母娘関係を扱った私の百合小説がweiboで話題になったときにも、マスクさんは一瞬で中国語版の裏表紙を作成されていてとてもびっくりしました。(許可などのやり取りをする前に、「作りました」と送られてくるのです…!)

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そもそも「白雪姫の牙」という本自体、日本のtwitterで告知した翌日にはweiboのマンガアニメ等の紹介アカウントで掲載されていたり、中国自体のスピード感がすごいということがあるのかなと思います。(一昔前だったら無断転載が多かったように思いますが、下記も私のtwitterにリンクがあるなど、出典に対する配慮もある程度されてきているようです)

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そんなわけでこのインタビューの回答も1時間もかからず爆速で送られてきました。スピード感が本当にすごい、そんなマスクさんのインタビューです。

簡単にマスクさんのプロフィールを教えて下さい。

住んでいる地域は中国の四川成都、21歳です。大学生で、勉強している専門分野は映画監督についてです。

お若いのに日本語も使いこなされていて凄いですね…!
マスクさんが日本の百合作品に触れたきっかけや、特に好きな作品があれば教えてください。

触れたきっかけは中学三年生の時、友だちに百合マンガをオススメされたからです。それから百合作品を好きになりました。一番好きな作品は「マリヤ様がみてる」です。

韓国のムンビメディアさんへのインタビューでもマリみての名前が挙がっていました。日本でもエポックメイキング的な作品ですが、やはり大人気なんですね。

日本語から中国語への翻訳で、難しいなと感じるところはありますか?

難しいところ、というのはあまりないです。

さすが! 韓国語からの翻訳の難しさを色々と挙げて頂いた朴さんとは好対照です。笑 中国国内では百合は人気があるのでしょうか?

中国国内では、百合作品は結構人気があります。コミックマーケットのような、百合作品交流会が毎年開催されています。

人気な中には日本の百合作品も多いですか?

日本の百合作品もとても人気がありますよ。「FLOWERS」とか、「やがて君になる」とか、「マリヤ様がみてる」とか、中国でも大人気です。

中国オリジナルの百合作品も多いのでしょうか?

中国のオリジナル百合作品も多いです、私一番おすすめの作品は「探虚陵」という百合小説です。

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http://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=1473506

「探虚陵」は日本でいう「小説家になろう」のような、晋江文学城というサイトで連載されている、古代編、現代編などに及ぶかなり長大な小説のようです。

中国ではもともとウェブ小説が人気で、収益化が進んでいると聞きます。

それに比べれば日本ではまだ紙書籍や電子書籍といったパッケージが強い印象です。中国では映画もあまり円盤化されないとも聞きます。

一方、中国では同性愛描写などに対して国による規制が強い、と聞き及んでいます。百合作品においても影響はあるのでしょうか。

影響はあります。中国の百合作品では、これは二人の女の子間の愛情関係だと直接に言うことは難しいです。ほとんどは友情などの感情を代用しています。

直接的に百合として表現している作品もありますが、そうしたものはあまり広くは読まれていません。

直接的に「女の子同士の愛情」として表現しないことで規制を回避しているんですね。一方では百合が人気ながら、一方では百合であることを隠す、難しいバランスがあるようです。

でもさっきの「探虚陵」はがっつりキスをしている表紙だったし、明らかに同性愛描写なのでは…?

「探虚陵」は友情ではなく、直接的に女性同士の愛情を描いているパターンのものです。

しかし、この小説は同好の士の間で有名なだけで、他のところで宣伝などはしていません。

「探虚陵」の作者さんのweiboのフォロワーは12万人いて人気だと思ったのですが、それでも「広く読まれてはいない」の方に入るんですね。

やはり中国でも百合マンガよりも百合小説は読まれにくく、weibo、晋江文学城、百合会などが主な舞台となっているそうです。日本の百合小説ももっと読んでほしい、という気持ちで翻訳を行われているとのことでした。

ご回答どうもありがとうございました!

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以上が簡単でしたがマスクさんへのインタビューです。2020年にはSFでも中国の『三体』が日本で大人気でしたが、おそらくこれから中国語の小説ももっと日本での紹介が進むのではないかと思います。

ただそれは必ずしも、今までのような出版社を介してのパッケージ化とは限らないのではないかな、と一人のウェブ小説読者として思うところです。

タイBLがyoutubeで誰でも無料で見られることから流行ったのに、日本の会社が権利を購入した途端に自由に見れなくなり、盛り上がりに水を差されてしまったことも思い起こされます。

とりあえず私は「探虚陵」をとっても読んでみたくなりました。もっと世界の百合作品に色々触れられるようになりますように!!


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