誰かの期待に応えたい、でも自分の気持ちに正直でいたい【南伊豆ローカル×ローカル】
場所を告げドアを開くとどこでも行ける、ドラえもんの秘密道具、
”どこでもドア”。
「もし、”どこでもドア”を自由に使えるなら、行きたい場所は?」という質問に、あなたはどう答えるだろうか。
憧れの海外に行ってみたい、自宅から1秒で職場に行きたい、過去にタイムスリップしてみたい…。
答えには、その人らしさが現れるような気がする。
今の私なら、「デンマークッ!」と勢いよく答えるだろう。けれど、昔の私は、自分の想いを素直に伝えることが難しかった。
期待に応えたい、けど
中学2年生の春。所属した吹奏楽部で、学生指揮者をすることになった。
真面目さを買われ、みんなから推薦。選ばれた時は、素直に嬉しかった。
けれど、全部員の前で話すたびに、緊張でおしつぶされそうだった。
"自分には向いてない"と思ったが、続けることを選んだ。
みんなの期待を、むげにはできない。
そんな思いから、"つらい"と誰かに伝えることはできなかった。
当時は、勉強が息抜きだった。
”自分の知らないことがたくさんある”って、楽しい。
そんな思いから、
”何ごとも楽しめる環境に行きたい”と
心に秘めていた。
期待を裏切るくらいなら
自発能動の精神を掲げる高校に惹かれ、入学。
モットー通り”自由人”が集まる環境は、とても新鮮だった。
「暑い」といって上裸で授業を受ける人。
授業と関係のない質問をして、50分授業をおじゃんにした人。
少々若気の至りな面も見えるかもしれないが、自由な言動をする同級生の姿は、私の価値観をグイッと押しあげてくれた。
中学時、ひそかに望んでいた環境に行けたものの、周りから持たれる印象に、今度は悩むようになった。
がんこでマイペースな性格なはずなのに、初対面だと”優しくてしっかりしている人”と言われやすい。
冷たい人ではないから、その印象はとてもありがたいけれど。
印象をくずさまいと意気込むばかり、マイペースな部分を隠し、しっかり者を演じるようになった。
期待を裏切るくらいなら、自分の本音をわざわざ言う必要はない、という考えからだった。
変わりたい、けど怖い
大学入学後も、その状況は変わらなかった。
”このままでいいんだろうか?”
漠然とした焦りが、心にじわじわとひろがっていた1年の春。
私は2か月間アメリカに留学した。
”アメリカでは自己主張が大切”と聞いていたから、本当の自分を出す修行になると思って。
もちろん、長年抱いた悩みが、ほんの数日で晴れるとは思っていなかった。
実際には、周りが発言をするなか、自分はまったくできないという状況もあった。
”どうしたら?”
悩んでいた自分に、先生がかけてくれた言葉がある。
励ましをくれた先生に申し訳ないが、
”失敗してみればいいなんて、とっくにわかってるよっ!”
と思わず口から出そうになった。
けれど、誰かに合わせる自分を変えたいと思うのも、本心だった。
ずっと続けたい
”本音を言える環境に行きたい”と願った私は、いろんな場に飛びこんだ。
なかでも印象に残っているのは、カタリバというNPO団体でインターンをしたことだ。
『カタリバオンライン for Teens(以下:カタリバオンライン)』は、高校生のやりたいを応援するオンラインコミュニティサービス。
高校生を対象としたプログラムに、場づくりを担う大学生キャストとして参加することになった。
インターンをはじめたのは、カタリバオンラインの理念に惹かれたから。
高校生の”やりたい”を応援しているうちに、自分の本音を話せる場ができたら。そう思ったが、初めは空回りばかりしていた。
素直に指摘をすることをためらい、お茶を濁すコメントをしてしまったり、”優しい人”と思われたくて、他の大学生キャストの仕事も請け負ったり…。
周りの様子をうかがっていた私に、職員の方がくれた言葉を、今も覚えている。
私の気持ちを優先してもいいんだ。
言葉がすーっと入ってきて、なんだか肩の荷が下りた気がした。
3か月の予定だったインターン。結局、1年間続けた。
それは、ともに学んだ高校生、ともに活動した仲間の言動に勇気をもらい、”続けさせてほしい”と伝えられたからだった。
ここに来れてよかった
そんなこんなで今、ゲストハウス”ローカル×ローカル”(以下、L2)の学生インターンとして、静岡県南伊豆町で1か月暮らしている。
学生インターンに申し込んだわけは、下記のリンクから。
留職生(社会人インターン)に業務を教えてもらいつつ、オーナーのイッテツさんが企画する『編集ワークショップ』、南伊豆町民の日常を体験する『暮らし図鑑』など、”南伊豆でしかできないこと”を堪能中だ。
L2は、日々新しい人が訪れ、旅立つ場所。昔の自分ならきっと避けていただろう。
当たり前だが、新しい環境は、初対面の方だらけだ。
真面目、優しい、しっかり。
そんな印象を持たれるのは、初対面の時が多かったから、”また同じ状況にならないか?”と心配する自分もいる。
けれど。
本音を言うのがこわくて、消極的だった自分が、南伊豆では新たな交流に心を躍らせている。
それは、南伊豆で会う方々が、みな自分に正直に生きているから。
そんな姿に、とても憧れがあるから。
だからこそ、自分も取り繕わずに関わりたい。
そうしないと、もったいない。
留職生やインターン生にも、本音を隠さず関われている。もちろん、相手が最大限の配慮をしてくれるから、そう行動できていると思う。
当然だけれど、全てが上手くいったわけではない。周りの反応が気になって、合わせることもあるし、ちょっとした無茶をする場面もある。
周りの期待にこたえることが、100%悪いわけではない。その期待に応えたいと思う場面も、たくさんある。
けれど、自分の気持ちを押し殺しつづけるのも、なかなかに苦しい。外に出せなかった感情は、矢のように心に刺さってくる。
本音を言う。
それは、怖さや不安をともなうものだとは思う。
けれど、言ってみると、何かに繋がることもある。
会いたい人に話を聞けたり、やりたいことをできたり…。
それはいずれ、自分の糧になる予感がしている。
だから、南伊豆を去った後も、私は正直でありたい。
怖さや不安もしょい込みながら、本音を言いつづけていたい。
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