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「三月は深き紅の淵を」第三章の感想文

恩田陸さんの作品、第三章は「虹と雲と鳥と」です。高台にある城址公園の崖下で、二人の女子高生が遺体で発見されました。公立高校三年の篠田美佐緒と私立高校二年の林祥子です。

展望台の手すりが壊れていたため、事故として処理されたのですが、美佐緒の元恋人の廣田啓輔と、元家庭教師の野上奈央子は疑問を持ちます。

二人で彼女たちのことを調べるうちに、隠されていた事実を知り、やはり事故ではなかったという結論にたどり着くのでした。

以上があらすじです。この女子高生二人は異母姉妹で、どちらもとてもきれいで頭もいいです。でも性格と雰囲気は違っていました。

美佐緒は群れを作らないタイプだけれども、友達ともちゃんと付き合える。自分の意見も言えるし、うじうじしない。神秘的な感じがする。

祥子は明るくて、天真爛漫という言葉がピッタリのお人形のような女の子。でもいつも友達がそばにいないと嫌なのでしょうね。私はこういう人は苦手です。

最初に美佐緒が祥子に会いに行き、姉妹仲良くしていたのですが、ある秘密を祥子が知ったら、祥子はものすごく美佐緒を憎み始めました。どうして美佐緒はそれを伝えたのか。すべてを話す必要はないのに、このことについて一人で抱えるには重すぎたのでしょうか。

見た目とは違って、祥子はかなり陰湿です。怒りを抑えることもできない。実は啓輔は美佐緒の前に祥子とも少し付き合っていたので、その執拗さを知っていたのですね。

でも祥子には、私はずっと努力してきたのよ、という気持ちがあるから、そうなってしまうのかもしれないです。何年も人一倍頑張ってきて、一生懸命積み上げてきたものを一瞬にして壊されたら、誰だってその相手を憎いと思います。嫌がらせまでする人は少ないでしょうが。

この章は姉妹の話なので、どこで「三月は深き紅の淵を」とつながるのかなと考えたら、元家庭教師の奈央子でした。

美佐緒が奈央子に言ったことがあったのです。「一冊だけ小説を書きたい」と。美佐緒はもう書けないので、いつか奈央子が代わりに書くのでしょう。それもまた「三月は深き紅の淵を」になるのかはわかりませんが。一冊だけではなく、色々な「三月は深き紅の淵を」があるのかもしれないですね。






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