女性経営者が増えない理由 - 出産・育児に関する社会保険制度の不平等(前半)

 こんにちは、エレン・チーです。小さい会社を経営しており、今年2月に出産し、産休・育休に入りました。保育園の目処も経たないので、とりあえず会社は休業です。その際に、年金・健康保険・出産/育児に関する手当の手続きを社労士でもない私がゼロの知識で行ったわけですが、仕組みが分かるにつれ、「これじゃ女性経営者は要らないと日本に言われているようなもの」と感じました。役員報酬は建前上、年間の金額ですが、産休・育休中も報酬を出してくれる会社など少ないでしょう。しかし、雇用者と同じ保険料を払ってきたにも関わらず、保険料の免除期間がだいぶ少なく、収入がなくなったのに毎月毎月保険料がじゃんじゃん引き落とされます。そこで、社会復帰するまで、会社で加入している第2号被保険者/厚生年金をやめて、夫の扶養に入るという面倒な手続きが発生します。その間、扶養基準である年収130万を超える仕事はできません。また、役員報酬を無報酬とする日、会社で加入している厚生年金/健康保険の資格喪失する日を無計画に決めてしまうと、数十万単位で手当をもらえなくなります。繰り返しますが、ちゃんと保険料を払ってきたのに、です。(ちなみにフリーランスはもっともらえません)

 「社労士さんに聞けばいいや」「年金事務所に聞けばいいや」「健康保険組合に聞けばいいや」「役所に聞けばいいや」と思っているそこのあなた!うらやましいほど甘いですねっ。お砂糖まぶしのおはぎさんかっ。そもそも経営者が出産するという例が少ないためか、年金事務所・健康保険組合・役所もよく分かっていないことがあり、問合せ先をたらい回しにされます。そして、社労士さんは、企業側からの情報のインプットに対して「それではこうします」と対応するのが普通ですから、「こうしないと手当もらえないヨ」などという提案は大抵、してくれません。私は「不正に手当をもらいましょう、保険料を免除してもらいましょう」と言っているのではなく、ただでさえ、同じ保険料を払っている雇用者より不利益を被るのですから、もらえるものはきちんともらいましょうとお伝えしたいのです。

 今日は私がゼロから学んだ知識を名無し猫ではなく、私本人がおふざけなしで前半・後半に分けて語りたいと思います!(名無し猫語りコラムはこちらからどうぞ)

 前半では、まず、出産・育児に関する全国健康保険協会、日本年金機構、国民健康保険、ハローワークが出している手当や制度を箇条書きし、その内容、経営者に適用されるか、注意点があるかの概要を記載します。(令和3年7月9日時点の情報です。各制度の詳細は各運営組織のHPを参照ください。また、不足・更新点がないかは個々にお確かめください)

①出産育児一時金(全国健康保険協会)

おおまかに言えば、出産すると1児につき42万円支給される手当です。

女性経営者が資格喪失し、扶養に入る場合は、タイミングに注意が必要です。支給要件の一部は以下の通りとなっています。

・資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)があること。
・資格喪失後(退職日の翌日)から6ヵ月以内の出産であること。

つわりがひどくて早めに産休に入って夫の扶養に入ろうとしており、なおかつ夫がフリーランスの方は、1円ももらえなくなるので要注意です。

ちなみに、夫が全国健康保険協会に加入していても妻とダブルではもらえません。

②出産手当金(全国健康保険協会)

出産で会社を休んだ場合に、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として、給与の3分の2が支給されます。

給与の2/3とは結構な額ですから、大変、ありがたい制度です。ただし、女性経営者が産休により無報酬となり、資格喪失した日を産休開始日として申請すると、1円ももらえない事態となります。普通、産休に入ったタイミングから無報酬になるわけですから、普通に申請すると0円になるわけです。協会から聞いた話を後半で記載します

③産前産後休業取得者申出書(日本年金機構)

大まかに言うと、出産の日以前42日から出産の日後56日目までの間で(多胎児等は別)、保険料が免除され、なおかつ厚生年金は積み立てされ、健康保険証も使えるという制度です。

女性経営者にも適用されます。

④育児休業等取得者申出書(日本年金機構)

満3歳未満の子を養育するための育児休業中、保険料が免除され、厚生年金は積み立てされ、健康保険証も使える制度で、産前産後休業期間の後を保障する制度です。

なんと、女性経営者には適用されません。HPには、「原則、事業主は対象外」と書いてあるので、私は「"原則"以外もあるということね!私のように小さい会社とか!」と解釈し、申請してみましたが、却下されました。「雇用者と同じ保険料を払っているのになぜか」をピュアな心で年金事務所に問い合わせたところ、タジタジの回答がかえってきたので、後半で記載します

⑤育児休業給付(ハローワーク)

育休中に1歳未満の子供がいる場合に、休業開始時賃金の67%、6ヶ月経過後は50%が支給されるありがたい制度ですが、経営者は対象外です。雇用保険料を払っていないので仕方ないですね。雇用保険料の額を考えると、かなり手厚い制度なのでうらやましい限りです。

⑥児童手当(政府)

子供の年齢や所得に応じて国から支給されます。
無論、女性経営者にも適用されます。

⑦産前産後期間の免除制度(日本年金機構/国民年金)

資格喪失してからすぐに夫の扶養に入る場合には関係ないですが、間が空いてしまったり、フリーランスの方のご参考までに、国民年金加入者でも産前産後の保険料免除制度があります。ただし、国民健康保険には免除制度はありません。健康保険料の方が厳しいんですけどね!日本の未来を担う子供よりも、お年寄りにお金を使いたいのですかね?

いかがだったでしょうか?

そもそも手当を受け取るまでに各運営サイドで審査をするため数ヶ月、かかることもあります。さらに社会保障制度に詳しくない方が手続きする場合、1度書類の手戻りがあると、精算時期がさらに1ヶ月単位で延びていきますので、だらだらやってるとあっという間に半年くらい経ってしまいます。特に小さい会社の場合は、その間、社会保険料が引き落とされてもよいだけのキャッシュを貯蓄しておきましょう。

女性経営者を応援したいと思っている方は是非、この記事の拡散をお願い致します。後半では、ではどういうふうに女性経営者の産休育休を計画すると手当をきちんともらえるのかを記載します。

話の長い主はさておき、吾輩とつれづれ語りたい諸君にサポートをお願い申し上げるのだ。