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黒のキングを選ぶルルーシュのかっこよさ

久しぶりに本来のコンセプトにあった厨ニ記事を書きたい。

というのも、昨晩『コードギアス反逆のルルーシュ』を見ていて、厨ニ心が刺激されたからだ。

自分はこれまで様々な場面でチェスについて語っているのだが、今回は「なぜルルーシュは黒のキングなのか」という観点で語りたい。


チェスをやったことがある人ならご存知の通り、チェスはかなりの先制有利ゲーであり、白が自動的に先攻となる。

そのため基本、あまり黒は選びたくないという心理に陥りがちであまり良いイメージがない。白だとラッキー、先攻を選びたいというのが通常の心理だ。

将棋と違って引き分けが多いので、黒サイドの場合基本引き分け狙いが定石だ。特にトッププロの試合の場合何十試合もするので、実力差が似ていると黒で引き分けを選ぶことが多い。持ち駒制もだがこの引き分けの多さが将棋とよく比べられる。


正直に言えば黒の後攻はその時点から萎えるし、自分も昔はそう思っていた。

ただ久しぶりにコードギアスを見ていて、黒のキングはルルーシュのキャラや境遇にとてもあっていて、まさに厨ニっぽいと感じたのだ。黒のキングに重ねたキャラを主人公にする設定とかよく思いついたなと思うし、終始このテーマは作中の演出で多用される。今考えればそういう意味だったのかと。

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ルルーシュはとにかく逆境からのスタートだ。

ブリタニアという支配的な正義が白に例えられて、ダークヒーローとしてのルルーシュや黒の騎士団が黒のイメージだ。


当時チェスを始めたてで、チェスに向上心があった10代の時代に戻れるならばもっとルルーシュに共感して積極的に黒を選んでおくべきだったと後悔している。

自分はルルーシュに感情移入していたにも関わらずチェスでは先攻の白が好きだった。単に黒は不利だとしか思っていなかった。ルルーシュごっこをして反逆的な厨ニ精神で立ち向かうなら、「あえて不利な黒で勝ってやろう」というぐらいのメンタルを持っていたほうがもっと強くなれたのかなぁと昨晩ギアスを見ながら一人考えていた。

そもそも過去にも書いたようにチェス自体、コードギアスの影響で始めたのだからもっとルルーシュになりきるべきだった笑

ゲーム全般に言えることだがあえて不利な条件で戦う方が強くなれるし、現実にも必要な我慢や忍耐力、逆境に打ち勝つ力などが見につく。

俺TUEEEEでサクサク勝っていても成長しないのだ。


もう今は成人して脳の伸びしろも限られているし、別に頭良くなろうとか俺はクールな頭脳キャラだとも思ってないのでチェスをプレー自体していないのだが、当時の自分にそういうメンタリティがあればなぁ、なぜルルーシュが黒のキングだというかっこよさに気づかなかったんだという後悔はある。

むしろ大人になって気づいたかもしれない。

人生というチェスは黒のキングどころか駒落ちで戦わなければならないと。そういう逆境力を身につけるためには、幼少期から不利な条件で戦う習慣がないといけない。

本田圭佑がアスリートに次男や次女が多い理由として「生まれたときから強い上の兄弟との戦いに晒されるから」と語っていたけど、まさにその通りだよなぁと。一人っ子とか長男は基本、ブリタニア側で育ってしまう。まさにシュナイゼルだ笑

そういえばルルーシュも妹のナナリーはいるが何気に男としては末っ子だ。

まあだから長男の自分はシュナイゼルにも感情移入していた側面はある。(ちなみにスザクだけは一貫して嫌いだった模様)


それにしてもチェスが根付いていない日本からよくああいう作品が生まれたものだと思う。

実際問題チェスを題材にしたアニメやドラマはほとんど存在しない。

日本でのチェスの扱いは「小道具」止まりだ。

先程「囲碁はなぜ日本で人気が衰退したのか、人気が出ないのか」という話題を見たのだが、いやいやチェスはそもそも話題にすらなりませんでっせ。。。と笑

わりとマジでギアスが最後じゃないか、あの時にチェスブームにならなかったことがミスだった。しかも当時、日本チェス協会は腐敗していてスラダンブームを拒絶したバスケ協会以下の体たらくだった。ようやく最近まともになり始めているらしいが。

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個人的にここから日本でチェスを普及させようとするならば、もうアニメで流行みたいなのは時代遅れだと考えている。というかそもそもチェスを題材にした作品を作れる人がいないし、アニメ業界もそこまで体力がない。

近年の麻雀ブームは咲の流行をうまく使ってネットを駆使したり、vtuberとのコラボで人気が出ている。オンライン対戦もこの度のステイホームで盛況のようだ。


正直、大人になってからは自分も麻雀の方が良いと思っている始末だ。

今日日、完全に実力主義でなおかつ一対一の競技なんてそう簡単に流行りませんて。現代日本人が一番ゲームに求めているのはカジュアルさやコミュニケーション、居場所であって、練習が必要でもろに実力差が現れるジャンルは求められていない。

別に麻雀が運ゲーだと断言するつもりはないのだが、四人でワイワイプレーして運で勝つことも時々はあるというのはかなり気が楽だ。

チェスなんて考えれば考えるほど才能!努力!の世界だ。基本自分より頭が良いやつには勝てないし、負けたとき言い訳が効かない。ポケモンや遊戯王みたいに多少運要素があったほうが上位の相手に勝てることがある。

藤井旋風で将棋始めた人も、今更その事実に直面しているのではないだろうか。

こういう完全実力ゲーは結局自分の思考力のショボさを突きつけられるだけではある。まあ自分のレベルにあった試合をして、昨日の自分より向上しさえすればいいというマイペースさが本当は必要なのだろうけど。


あと何よりチェスって語る相手はいないし、リアルでプレーする場所もないというのがキツいというのはある。

将棋なら将棋道場があるし、麻雀は雀荘がある。自分は夜に知らない街を散歩するのが好きなのだが、暗闇の中で明るく光が灯っている雀荘はよく見かけるので、こういう居場所が自分にもあればなぁと思う時はある。

将棋はネットで度々話題になるし報道も多く仲間が多くて羨ましい。

それに比べてチェスなんて語ってる人少ないし、こうして虚しく独り言を書き連ねるしかない笑

過疎過疎チェス村ですよ本当に。

まあ海外に目を向ければ盛り上がっているわけではあるけど、基本英語前提だからハードルが高い。

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ちなみに現在No.1チェスプレイヤーはマグヌス・カールセンというノルウェー人なのだが、インスタでなんの脈絡もなくサッカー日本代表関連のシャツを着ていた。特に日本で行ったイベントでもないのになぜ笑

更にインスタを見ていると欧州人にも関わらず野球も好きらしくいろいろと謎だ。


チェスはプレーをしたり、プロの試合を理解するのは難しいけど、こういう海外選手の多彩さはサッカーに近いものがあって、いわゆる海外厨的な人にとっては共感しやすい面白さがある。

将棋は日本人同士の対決というキャラゲー化がとてもうまくいって、AI時代にも生き残っている。これからはもうAIに勝てないゲームをわざわざ人間がやる意味や付加価値が重要になってくる。

結局人間は人間対人間が好きだ。戦闘機が全部無人機になるのは浪漫がないみたいな話と似ている。


そう考えるとチェスは歴史上の選手も含めていろいろと面白く、特に自分は冷戦時代に旧ソ連が西側諸国に対する国威発揚としてガチっていた時代の雰囲気が好きだ。

こういう海外の雰囲気の魅力が伝わればチェスの面白さも広まっていくかもしれない。ただやはり語る人の少なさという問題はある。

実況解説もトッププロの試合をこなせる人は日本でかなり限られている。将棋の羽生さんぐらいにやってもらわないとまず無理だ。

一応ヒカル・ナカムラという日系人がチェス強豪の中華系を抑えてアジアトップではある。

と思って最新FIDEレーティングを見たら、勢力図が新しくなっていて今現在中国の選手が3位だった。それとインドのアーナンドおじさんまだ現役なのか笑

上位のほとんどが80年代、90年代生まれなのに一人だけ15位で1969年生まれとか化け物すぎるでしょ。最近の若手選手よくわからないけど、何気に昔3位ぐらいだったブルガリア人のトパロフおじさんもまだ現役で安心した。


まあでも、マインドスポーツのいいところは子供にもコロッと負けるけど、努力の継続次第ではトゥルタクが若者に勝てるというところだとは思う。だから人生をかけて長く極める意味があるし身体能力よりは衰えが緩やかで伸びしろがある。独ソ戦の頃10代だったコルチノイが最近まで生きていたという事実も凄い。カルポフはまだ生きてるし、こういうガチの爺さんにイケイケの若者が身体能力だけでは勝てない。

逆に言えば藤井君みたいに頭脳次第では大人相手に無双可能だ。


今の10代や年齢一桁の子供にとってはきっと藤井君がスーパーヒーローなのだろう。自分が若いときは棋士はおじさんで、少年や青年のプレイヤーはそれこそルルーシュみたいにアニメや漫画限定だった。なろうラノベでもありえないような同世代の等身大ヒーローが現実に存在する。囲碁に関してはもはやJSが女流のプロになっているらしい笑

高校クイズ選手権の同世代に憧れてた時代の自分からすると、今は10代の活躍が本当に凄い。ガチで大人相手に無双してる10代がいる今だったら何が高校生クイズだよと笑われるだろう。

そう考えると教育の進化は間違っていなかったのかもしれない。


ただ将棋って才能ゲーはもちろん家柄ゲーではある。基本、奨励会に入らなければプロにはなれない。そしてそれは関東と関西にある。そのためプロ棋士の出身地を見ると非常に出身地が偏っている。

これはまんまジャニーズと同じ構造で、ジャニーズになるためには関東ジュニアか関西Jrになるために事務所の気まぐれで通える範囲に住んでいなければならない。


それとくらべると、全国どこからでもプロになれる野球やサッカーは育成制度が整っているし、サッカーなんて日本でのプロ経験すら必要ない。そして聞いたこともないような国からスターが生まれる。田舎者の自分にとってはこういう出自の幅広さもサッカーに惹かれる所以ではある。

韓流アイドルの出身地を見ていると例えば済州島出身のメンバーがいるが、ジャニーズに沖縄出身者はいない。それどころか韓流はもはや韓国の田舎どころか日本人やタイ人、中国人がいるレベルだ。

いろいろと事情は違うし、将棋やジャニーズ形式はそれはそれでありではある。まあ、出ては欲しいけどチェスのプロなんて日本からだと将棋以上に難しい。

厨ニ時代の話をすればグランドマスターという有段者になりたいと思っていた身の程知らずの時期もあった。自分にはこうしてチェスを語ることしかできないけど、一生の内にもし日本からグランドマスター出たら泣くだろう笑

Jリーグなんて無くて日本でプロなんてありえないと思っていた時代のサッカー関係者みたいな立ち位置に今のチェスファンはいる。

現時点では夢のまた夢だ。


現実的な落としどころとしては、将棋プレイヤーからチェスに移行する層がどれだけ集められるかだろうか。実際、個人サイトを見ていると将棋とチェスを同時にやっているアマチュアプレイヤーはそれなりに見かける。

自分のように将棋は興味ないけどチェスには興味を持ったという特殊なパターンもあるので、そういうきっかけも大事にしたい。

知育玩具などでチェスセット自体はよく売っている。インスタなどで調べると海外のもっとかっこいいチェスボードが出てくるのでそういうきっかけもありだと思う。

ただほとんど教えてくれる場所がないし対戦相手もいないし、コンピューターやオンライン相手の独学になるからモチベーション維持が難しい。(とはいっても、藤井君がソフトで学んだようにそういう構図は崩れつつある)

それは英語の勉強と同時に進められるというメリットもある。基本、ある程度のレベルを超えると日本に教材や対戦環境がないので英語必須となるため必要性に駆られるのだ。チェスに関連した番組や動画、作品もだ。


その一方で、これは英才教育に関係なく大人になってから始める層にとってもメリットではある。

基本的にゲーム全般の傾向として日本人プレイヤーは平均して練度が高いことが多い。オンラインでの対人戦が怖いとか、弱いと恥ずかしいし迷惑かけたくないという人が多く敷居が高い。そのためオンラインで最下層のプレイヤーでも、わりと強いことがある。


逆に外国人はどのゲームでも驚くような初心者がわりと好き勝手突撃していることが多く結構勝てることが多い。それは無数にあるチェス対戦サイトでも同じだ。(ちなみに自分はchess.comという大手サイトを勧めている)

だから同じ条件で将棋とチェスを同レベルから始めたら、対人戦での初勝利を得られやすいのはチェスのように思う。

今からいい年した大人が将棋に興味持っても、経験者との超えられない壁に挫折するだけだ。

その反面、海外だとチェスという頭脳競技にすらいわゆるチンパンプレーをする輩がそこそこいるので、そういう相手から成功体験は得られやすいというメリットはある。逆に言えば平均はレベルが高い日本の環境と違って上層は果てしなく人外だらけだが笑

まあ何かと幅広い層と戦えるというのはチェスの魅力だ。ただし日本では大いに孤独である。ちょうどレベルの合った対戦仲間も作りにくいし、あの選手が好きだとかどの駒が好きだとかそんな話題すら滅多にない。仕方なく将棋の話題を見て隅っこから疑似体験するだけだ。

ただ、前述のようにインスタ見ているとかっこいいチェスセットが無数に出てくるし、そういうのを買い集める楽しみもある。芸術やコレクションとしても楽しめるし、自分自身のプレーは磨けずともプレイヤーの歴史を知るという楽しみもある。


チェスのド派手にドーンみたいなセットと違って日本人の美意識に合う将棋や囲碁の静かなセットの魅力もわかるのだが、チェスセットはそれはそれで面白い。お酒のグラスになっていて、駒を取られたら飲まなければならないなんて物まである笑

難しい戦術の話なんて自分だってわかってないし、こういうレベルに関係なく誰でも楽しめる文化の話というのがまだ日本のチェス文化やコミュニティには欠けている。将棋はプレーせず見てるだけのにわかでファンでも居場所があるというのは素晴らしい。おそらくボードゲームで最も上手く行っている。チェスもいつかそんな日がやって来てほしいなと思う。

面白いとおもたら銭投げてけや